「立つ鳥跡を濁さず」ということわざもありますが、ビジネスマナーとしても、人間としても、お世話になった現職の会社は、円満に退職したいものですよね。

どのようにすれば、ビジネスパーソンとして恥ずかしくない、円満退社ができるでしょうか。円満退社を多数実現させてきた元転職エージェントが、そのポイントをFAQ形式で徹底解説します。

退職の法律上の説明

退職とは、法律上は労働契約の合意解約です。

労働契約とは、労働者であるあなたが会社に労働力を提供し、その対価として会社が給与を支払うことによって成り立っていますが、法律上は、民法、または会社の就業規則によって双方合意のうえ解約することができます。

つまり、退職とは原則として「合意」が必要なのです。ただし、法律上は、労働者側が解約の意思表示をした場合、会社側はそれを拒否することはできません。

少なくとも、就業規則に定めた期間が経過した後、労働者は自由に会社を辞めることが可能です。

退職にあたってのビジネスマナー

法律上は上記の通りですが、一般的には、わざわざ法律を持ち出すまでもなく、退職を円満に実現したいですよね。そのためのマナーについて説明します。

まず、一般的に守るべきマナーは、直属の上司に最初に打ち明けること。

もしこれを守らないと、上司の管理能力が問われかねない事態に発展してしまいます。

また、親しい同僚に内密に話す場合は別として、基本的には人事などから正式な発表があるまで、口外しないというのもマナーです。

一般社員の場合は、上記の手順を守るとともに、同僚は後任の社員への引き継ぎをきちんと済ませる。自分の業務のマニュアルを整備しておくなどのマナーがあります。

これに対し、管理職という立場になると、単に後任へ引き継ぐというだけではなく、自分が退職しても組織が回るように、後任となるべき人材をふだんから育成しておく、というのも大切なマナー(役目)です。

具体的な会社の辞め方、タイミング、手順、手続など

まず、直属の上司に退職の相談をすることがマナーであることは、前に述べた通りですが、その後の正式な手続としては、退職届を出す前に、退職の意思表示を直属の上司と人事部に通知します。

その後、上司や役員、場合によっては社長との面談を経て、正式な退職日を調整・決定し、それに合わせて退職届を人事部に提出します。

退職届を出すタイミングですが、例えば、退職予定日の1か月半前に直属の上司に退職相談をした場合、退職届は1か月前くらいに出すのがベターでしょう。

但し、就業規則に定めがある場合や、人事部から指示があった場合はそれに従います。

一般社員の方の場合は、上記の手続をきちんと守るという以外には、特別な手続上の注意点はありません。

これに対し、管理職の方の場合は、退職日を自己都合で指定して準備をはじめるというのでは無責任です。

部下も含め、組織があなたが抜けてもしっかり運用できるよう、会社へ協力することが必要になります。

退職届の書き方

退職届の書き方は、今は、一身上の都合により退職する事実のみを通知する、非常にシンプルな形式が主流のようです。

以前は、長年の厚情やお世話になった方への感謝などをそれなりに綴ることもあったようですが、退職届に書くというよりは、直接、またはメール等で個人的に伝える形式が主流です。

また、会社によっては、退職届のフォーマットが決まっている場合もありますので、人事部に確認しましょう。

ハローワークへの手続

退職後、失業保険の給付等を受けたい場合は、ハローワークへの手続は、退職後に行います。

会社から雇用保険被保険者証や離職票などを渡されると思います(離職票は、退職後10日程度かかります)ので、次に挙げる書類を持って、ハローワークに手続に行きましょう。

  • 離職票
  • 社会保険被保険者証
  • 身分証明書
  • 印鑑(3cm×2.5cm)
  • 顔写真2枚
  • 銀行・郵便局の通帳

家族への相談も忘れずに

あなたが家計を支えているご家族がおられるならば、事前の相談は大変重要です。

転職エージェントの仕事をしていた時、1年に1人くらい、家族の反対で転職を挫折・断念される方がおられました。家族は分かってくれる、などと甘く考えてはいけません。

転職先がほぼ決まったタイミングが一番妥当だと思いますが、今の会社を辞めて他社に移ること、それによって何の環境が変わるのか、転居の必要はあるのか、収入など生活面に影響はあるのかなど、しっかり話をしておきましょう。

ここからは、よくあるご質問について、FAQをまとめました。今のところ退職のやり方についてご不明な点がない方も、参考までにご確認ください。

本当の退職理由を言いたくないときはどうする?

健康上の理由やプライベートでの事情など、本当の退職理由を言いたくないときは、言わなくても問題ありません。労働者側から労働契約を解約することに、理由は必要とされていないからです。

ビジネスマナーとしても、一般的には「一身上の都合により」といった表現がほとんどで、立ち入った内容を説明することは必要とされていません。

退職を告げて、引き留めにあった時はどうする?

退職の原因にもよりますが、退職の原因となった事情が解消されるなど、現職に残留することにメリットがあるならば、引き留めを受け入れても良いと思います。

最低限、いずれの選択にせよ、引き留めがあった場合、話だけでもきちんと聞くのは礼儀です。

冒頭に説明したように、引き留められたからといって、会社はあなたの退職を拒否する権利はありません。自由な退職は可能ですので、安心してください。

退職届を出して、人事部に呼び出されたら?

ケースバイケースですが、人事部が退職する事情を聞いて、その原因を打開したいと考えていることが考えられます。まずは呼び出しの意図を確認して、話を聞いてみるべきでしょう。

また、会社によっては、労働環境を向上させるため、退職者の退職理由を全社的に継続的に調査・分析しているケースもあります。

この場合は、人事部で本音を言っても上司に知られることもなく、退職後の人間関係に影響することもありません。調査に全面的に協力して問題ないでしょう。

転職先は退職先にばれる?

よほど狭い業界でない限り、退職関係の書類を全て自分が受け取る形式にすれば、絶対にばれません。

ただし、すでに転職先が決まっているケースで、雇用保険被保険者証などを転職先に直接送付する手続を取った場合などは、ばれてしまいますので注意しましょう。

退職がきっかけでブラックリストに載るようなことはある?

ありません。退職する会社におけるあなたの個人情報は、個人情報保護法で保護されており、ブラックリストにして渡す等、個人情報で許される利用範囲を超えた情報の意図的な漏えいは法律違反です。

例外的に、転職先があなたに対し、退職した会社から在籍証明書を交付してもらってくるよう、要請されるケースがあります。

このケースでも、労働者であるあなたが「請求しない事項」を退職する会社が記入することは法律違反になりますので、この心配も必要ないでしょう。

退職日までに残った有給休暇は消化できる?

これは、ケースバイケースになります。退職予定日まで日数があり、有給取得が可能で、引き継ぎの予定もなければ、認める会社が多いと思います。

また、有給を消化しきれなかった分、退職日を後にずらして有給消化を認め、その分の給与を日割りで支払う、という対応の良い会社もありますが、一般的には消化しきれなかった分は、そのまま損した状態で退職するというケースが多いでしょう。

ボーナスをもらってから辞めたい!

転職エージェントの世界では、ボーナスが出る月に転職相談が急増します。そのくらい、皆さん当たり前に行っている退職法です。

このケースでは、退職を切り出す前に、就業規則と賃金・賞与規程をきちんと確認しておきましょう。いずれかの社内規程に賞与の支払いルールが書かれています。

基本的には、①査定対象期間に在籍していること、②賞与支払対象月に在籍していること、の2つの条件を満たさなければボーナスをもらって辞めることはできません。ルールをきちんと押さえて、もらえるものはしっかりもらいましょう。

退職する時に返還しなければならない通勤手当があるってホント?

通勤手当の支払いルールによっては、返還するケースがあります。

例えば、通勤手当が「定期の○か月分」など、前もってまとめて先払いされている場合には、未使用の月数分、返還する義務が生じます。

基本的には、会社にお金を払うのではなく、最終月の給与計算で控除(清算)されるケースが多いと思います。

3か月分の交通費を先払いするケースが多いと思いますが、中には6か月分というケースもあるようです。この場合は控除される額が大きくなりますので、注意しましょう。

退職するタイミングで引かれる社会保険の額が変わるってホント?

変わるケースがあります。ただし、会社の給与計算ルールによります。

社会保険の控除には、その月の社会保険料を当月に控除する、翌月に控除するという、2種類のルールがあります。

ほとんどが翌月に控除する(こちらが法律上は正確なためです)ため、最終月分の給与から控除される社会保険料がいきなり多くなってびっくりする、というケースが多いです。

基本的には、最終月は多く社会保険料が引かれると覚えておきましょう。

退職を妨害されそうだったら、どこに相談すれば良い?

万が一の、退職に必要な書類を発行しない、退職する際に生じた損害の賠償を要求されるなど、悪質な妨害が行われた場合は、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。

「総合労働相談コーナー」という窓口を設けて対応しています。

また、各地の社会保険労務士会でも、労働トラブルの相談に乗ってくれます。

いきなり弁護士に頼むのは敷居が高いと思いますが、労働法務の専門家である社会保険労務士ならば、気軽に相談でき、費用も低額です。また、いざという時の調停や労働審判の代理人も務めてもらえます。

最後に

円満退社のポイントやマナーについて、長々と説明してきましたが、最後に、あなたにとって、円満退社の最大のメリットを説明します。

それは、メンタル的にすっきりとした形で、次のステージに向かっていけるということです。

もし、円満退社ではなくトラブルを抱えたまま退職した場合、メンタル的に引きずるというだけではなく、転職後も、前職とのトラブル調整のために転職早々に会社を休まなければならなくなる、という事態も考えられます。

このとき、転職先での重要なポイントである、「第一印象」を損ねてしまう、というリスクがあります。

円満退社は、単にマナーというだけではなく、あなたの転職を首尾よく運ぶためにも重要な通過ポイントである、ということを覚えておいてください。