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今回取り上げるテーマは「自己分析」です。

自己分析。転職活動で悩まれる方は多いでしょう。

人間はえてして、自分のことを話すことが苦手な動物です。

そのうえ、自己分析という言葉は曖昧な言葉で、新卒学生の就職活動のように、「自分の性格」などを掘り下げて考える方もいれば、たんに「自分の長所・短所」を考えるための自己分析という方もいらっしゃるでしょう。何をやって良いか分からない、霧の中に迷い込むような気分になる方もいらっしゃるでしょう。

いずれも間違いではないです。ただ、「転職活動を成功させる」という目的を中心に考えてみると、正しいやり方、間違ったやり方、というのは存在します。

今回はそのうち、目的に合わせた、正しい自己分析のやり方を考えてみたいと思います。

自己分析の「正しい目的」はこの2つだ

ではまず、自己分析の目的をはっきりさせましょう。正しいやり方を考えるには、正しい目的の設定が必要です。

自己分析をする正しい目的は2つです。

  • 自分のこれからの「キャリアの価値観」を考えるため
  • 面接の質問に自信を持って答えられるため

です。平凡な目的に聞こえるかもしれませんが、この目的を2つに、はっきり分けて、それぞれ自己分析をする、という姿勢が重要なのです。

順番に説明していきましょう。

キャリアの価値観を考える自己分析

まず、キャリアの価値観を考えるための自己分析、というと、どのような方法が思い浮かびますか?おそらく多くの方は、これからの5年後、10年後のキャリアプランを考えたうえで、大事にしたい働き方のイメージを漠然としながらもお持ちだと思います。

キャリアカウンセリングの理論では、これを体系的に8つの価値観に分析したものがあり、「キャリア・アンカー」と呼ばれます。

キャリア・アンカーとは

キャリア・アンカーのアンカーとは英語で「錨」を意味します。まさしく、あなたの人生に「重み」をつける、重視している価値観を、次の8つのうちから選んでみてください。(複数回答可)

  • 組織の中で責任ある役割を担う(管理能力)
  • 自分の専門性を高める(専門性)
  • 安定的な環境で1つの組織に属すること(保障・安定)
  • クリエイティブで新しいことを生み出すこと(企業家的創造性)
  • 組織のルールや規則に縛られず、自分のやり方で進める(自立・独立)
  • 社会をよくしたり他人に奉仕・貢献する(社会貢献)
  • 解決困難な課題に挑戦する、ライバルとの競争に勝つ(チャレンジ)
  • 個人的な欲求と家族、仕事とのバランスをとる(ワークライフバランス)

専門的なテストもありますが、簡単な判定方法としては、上の8項目を5段階評価で点数化してみると、より自分に納得感のある価値観が浮かび上がると思います。

あくまで「自分の中にしまっておく」ための自己分析

このキャリア・アンカーですが、あくまで、これからの自分がキャリアを積んでいくための価値観を発見するためのものです。あなたご自身が大事にしまっておき、これからのキャリアプランに役立てるためのもので、仕事探しや面接対策とは全く別だと考えてください。

例えば、新聞記者という職業1つをとっても、社会正義に燃える社会貢献型のタイプもいれば、人気のマスコミ業界で働きたいという価値観もいらっしゃいますよね。価値観と職業はストレートに結びつかないのです。

ちなみに、キャリア・アンカーを提唱したマサチューセッツ工科大学教授のシャイン教授によれば、キャリア・アンカーは年齢につれて変化することもあるとしています。特に女性にいえますが、独身、結婚、子育てとライフステージが変わる場合は、大事にする価値観が変わって当然といえますよね。

面接対策のための自己分析

次に、面接対策のための自己分析です。これは、前のパートで説明した、「キャリア・アンカー」とは直接関係しません。あくまでも現実的な話として、面接を突破するための戦術論としての自己分析です。

自己分析は「それなりのもの」でいい

自己分析が問われる質問としては、よく「あなたを○分で自己紹介してください」とか、「あなたの長所・短所(強み・弱み)を説明してください」といったものが考えられます。

要は、これらに直接回答できる、よどみのない自己分析ができていればいいのですが、注意点をいくつか挙げましょう。

注意点
  • 自己分析の内容は、ビジネスマンとしての社会性を疑われるようなものでなければ、何でもいい
  • 短所や弱みは、いかにも「人間臭い」ものでも構わない(誰にでもそのくらいの欠点や弱みはあるよね、程度)
  • 自己分析を補強するようなビジネス上のエピソードを思い出しておく

といったところです。

重要な点ですが、誰にでも長所・短所、強みと弱みがある以上、自己分析には、100点はありませんし、面接官も求めていません。

そもそも、自己分析は合否の決定打ですらありません。転職で合否の決定打になるのは、経験やスキルが自社が求めるものとマッチングしているかどうかで、自己分析にかかわる質問は、「一緒にやっていけるだけのビジネスマンの社会性」をみているにすぎないのです。「合否を分ける質問」ではなく、「他者と差をつけられて落ちないための質問」と割り切りましょう。

上手くいかなかったら、都合よく変えていい

したがって、他のキャリアアドバイザーが言いそうもない、驚くべきことを申し上げますが、もし、自分で考えた自己分析が言いづらいならば、都合よく変えてください。

要は答えやすければ何でも良いのです。多少盛った話ですらOKです。面接官にそこまで見抜く力も、調べる調査力もヒマもありません。面接で「悪くない印象」を残せさえすればOKです。

あくまで目標は「面接突破」だ

この自己分析では、あくまで面接突破が目標の主眼です。ぶっちゃけ、勝てば官軍です。身もふたもなくいえば、勝てるならば自己分析などしなくても良い。

嘘をつけとは言いませんが、どれだけ真実の自分とかけ離れていようと、職場で演じられれば、問題にすらならないとさえいえます。

まあ、ほとんどのケースでは、面接から入社まで日が経っていますから、面接で言った自己分析なんて、面接官は忘れていますけれどね。

最後に

自己分析というと、転職活動の面接対策や志望動機を作る際に、真っ先に取り掛かる方が多いと思いますが、今まで説明してきたように、はっきりした目的と使い分けを意識された方は多くはないと思います。

こうした使い分けを強調したかったのには理由があります。それは、「自己分析のせいで、転職活動と心中しない」ということです。

特に若い方にみられがちですが、自分が転職活動がうまくいかないのは、自己分析が甘いから、「我究」が足りないからだ、と勘違いしていまい、転職活動自体に行き詰ってしまう、思い詰めて前に進めなくなることです。

転職活動は人生の転機であり、人生を左右するものではあります。が、それはあなたの人生全体の一部にすぎません。百歩譲って、転職活動が上手くいかなかったとしても、それは自己分析のせいではありません。転職活動の成否とは別に、あなたはあなたで価値のある存在なのです。

自分のことを知ったふうに分析してみせる面接官やキャリアアドバイザーに出くわすと、気持ちが揺らぐこともあるでしょう。しかし、所詮は商売でやっていることなので、あなたの本当の価値を知っているわけではないのです。

何よりもあなた自身が揺るがないために、本当の意味での自己を確立してください。