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会社から人事異動を命じられれば、サラリーマンはそれに従わなければならないのか。

社員は会社に所属しているのであって、隷属しているわけではありません。会社から人事異動を命じられたとして、それを拒否することは決して悪いことではないのです。「子供がいるから異動は困る」「異動が多すぎて嫌になる」など、異動を呑むことができない理由はたくさんあるでしょう。

人事異動に納得ができないのなら、何か行動に出るべきです。

「じゃあ何が出来るのか」と考えると、「転職」という二文字が頭を過ぎります。人事異動で転職をしてもいいのか、その前に考えるべきこと・知るべきことはあるのかなど、人事異動による転職についてご説明しましょう。

人事異動の目的とは? 転職を考えてもいいの?

人事異動をするのには目的があります。だからと言って、全てを呑んでしまうのは自身の幸福追求のために良くない影響を及ぼすでしょう。人事異動の目的を見極めた上で、自分はどうすべきかを考えることが大切です。

人事異動は小さな転職。仕事がガラリと色を変えてしまう。

人事異動というのは、ちょっとした転職のようなものです。部署が変わると仕事が変わり、配置が変わると役割が変わります。たとえ仕事内容が変わらずとも、職場環境は変わるのです。

変わってよくなることもあれば、変わって不都合を被ることもあります。それは転職と同じようですが、転職よりもリスクが大きいです。転職は自分で選ぶことができますが、人事異動は自分で選ぶことができません。

仕事がガラリと色を変えてしまうので、「人事異動に従うのは当たり前」という考えは捨てましょう。

人事異動の種類・目的を見極めよう

人事異動には、必ず目的・意図があります。簡単に言えば、良い種類の人事異動があれば悪い種類の人事異動もあるということです。どのような目的で人事異動が行われるのか、それぞれ簡単に説明しましょう。

「栄転」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

最近では皮肉として使われることもあるようですが、本来は昇進させることを目的とした人事異動のことです。事業の流れを覚えさせて、ゆくゆくは大きなポストに就かせます。

その反対で「左遷」という言葉は、よく耳にするでしょう。

これは事実上の降格です。よくあるのは、本社の社員から子会社の役職への人事異動。役職が貰えるので、ポジティブに捉えがちですが、本社に戻ることができないケースがあり、その場合は事実上の降格と捉えることができます。

また、仕事のマンネリ化を防止するといった目的であることがありますし、単に配置を変えるだけで特に思惑などが無い場合もあります。人事異動の目的は様々で、多くの場合は会社側として正当な理由をつけるものです。

しかし、気をつけなければならないことがあります。

「嫌がらせ人事」です。

気に入らない部下をどこかへ飛ばしてしまおうという、感情的な理由で行われます。閑職に飛ばされることが多いです。仕事をしっかりとこなしているにもかかわらず、閑職に飛ばされるという場合は、嫌がらせによる人事異動を疑いましょう。

納得がいかないなら、転職を考えても良い

「サラリーマンは人事異動から逃げられない、絶対だ」という考えは、この際捨てましょう。

労働者には「退職の自由」があります。人事異動に納得がいかないのであれば、それを拒否しても良いのです。こちらに正当な理由があろうと無かろうと、「人事異動は絶対に嫌だ」と感じれば、その感情に従ってみるのも良いでしょう。

人事異動は「栄転」か「左遷」か、見極めるにはどうしたら?

「栄転」と「左遷」という言葉を、一度は聞いたことがあるでしょう。人事異動が栄転か左遷かを知る前に退職してしまっては、せっかくのキャリアプランが台無しになることもあります。見極めるには、傾向を知ることが大切です。

昇進・昇格とハッキリわかるなら、出世街道。栄転。

人事異動をする際に役職が上がるなど、昇進・昇格だとハッキリわかるのであれば、栄転である可能性が高いです。役職が上がらずとも、会社内で「この部署はエリートコース」と呼ばれている部署などに異動になるのなら、出世街道と言えるでしょう。

違う役職・部署なら出世街道のことがある

違う役職や部署への異動であれば、出世街道の可能性が生じます。もちろん、ハッキリとわかるわけではないので、絶対ではありません。

この場合は、業務の流れを覚えさせゆくゆくは管理職に就かせる、といった思惑があるのではないかと考えられます。特に「何回も異動していて、毎回部署(仕事内容)が変わる」ということであれば、出世街道の可能性が高いです。

子会社出向を命じられたら左遷?

子会社出向を命じられた場合、その多くは左遷と言えます。ただし、これもまた絶対の判断基準ではありません。子会社出向を命じられた場合は、左遷か栄転かのどちらかだと考えられ、判断が難しいのです。

子会社をいくつか転々としているのであれば、栄転・出世街道の可能性が出てきます。子会社で重要なポジションに就かせ、経営力を身につけさせようという思惑があるからです。

ただし、子会社出向の場合は左遷であっても役職が上がることが多いので、判断に困ります。異動後しばらく様子を見て判断する、ということも可能です。「栄転の場合は異動を受け入れたい」ということであれば、ひとまず異動してから考えるというのもアリではないでしょうか。

その結果退職するということになるなら、出来るだけ円満退職ができるように注意することが必要です。

同じ役職・部署での異動なら、少なくとも栄転ではない

同じ部署の違う職場や、仕事内容が同じ職場への異動で、役職が変わらないなら、少なくとも栄転ではないでしょう。また、左遷とも言えません。この場合は単なる配置替えであることが多いです。

拒否して受け入れられるケースってある?

人事異動を拒否しても、それが受け入れられて退職しなくても良いケースがあります。どんな理由なら受け入れられやすいのか、「受け入れざるを得ない状況」はあるのか……それぞれ簡単に説明しましょう。

やむを得ない理由がある場合

結婚して子供が生まれているのであれば、育児のために異動を拒否することができるケースが多いです。子育てには、環境的要因が大きく絡み、場所によってはうまくいかないことがあります。

異動のために引越しをしなければならないなら、今住んでいる場所を離れるのは、子供の教育上喜ばしいことではありません。学校に通っているなら友達と離れ離れになりますし、育児に適した環境から適さない環境へと移るのであれば、さらに困ります。

また、親の介護をしなければならないという理由でも、異動を拒否して受け入れられることが多いです。

「やむを得ない理由」というのは、「異動で引越しを強いられるが、引っ越すと自分以外の誰かが困る場合」と言い換えることもできます。

勤務地・職種が、雇用契約書で限定的に定められている

雇用契約書などで「勤務地はここ、職種はこれ」と限定されていて、それ以外の場所・職種への異動が通知された場合は、拒否して受け入れられることが多いです。契約違反になるので、会社側は受け入れざるを得ません。

雇う側の身勝手な理由で人事異動する場合

「気に入らない」「自主退職に追い込んでやる」などという、嫌がらせ人事の場合は「権利の濫用」として、拒否することができると考えられています。嫌がらせが目的の人事異動は、正当な理由にはならないのです。

しかし、会社側もそれは承知の上で「経験を積ませるため」などという法的に問題のない理由を後付で出してくることが多く、社員が対抗することは難しいとも考えられます。「これは不当だ」と確信が持てれば、拒否して受け入れられやすいですが、不当だと気づくことすら出来ないケースが多いのです。

単に「不満がある」「異動が多いから」ということでは、拒否できない?

上記の理由以外で「不満がある」「異動が多いから」ということでは、拒否しても会社は受け入れないことが多いです。この場合、拒否することは即ち転職することを意味すると考えたほうが良いでしょう。他の理由があっても、受け入れられなければ同じことです。

ただし、契約書などに「異動を拒否することができる条件」が定められていることもあり、その条件に当てはまる場合には拒否が受け入れられます。一度雇用契約書を読み直してみるのが、良いでしょう。

転職するなら、いつ伝えたらいい?

考えた末、やはり転職をした方がよさそうだと判断した場合、今度は「いつ上司に伝えるのか」という問題が出てきます。このタイミングによっては損をすることがあるので、くれぐれも注意しなければなりません。

異動前に伝えたほうが良い

転職をするのであれば、異動する前に伝えたほうが好印象です。「退職するのに印象もなにも」と思うかもしれませんが、円満退職をすると不利益を被る可能性が低くなります。

異動を通知されたら、「少し考える時間をください」と要求し、転職をするかどうかを決めましょう。転職をするという結論が出たならば、異動する日が来るまでに退職の旨を伝えるのです。

出来るなら、前もって相談しておこう

人事異動にどうしても納得できない箇所がある、または人事異動されると困る理由がある場合は、拒否して退職の旨を伝える前に、一度相談しておくことが大切です。契約上は認められずとも、相談すれば受け入れてもらえることもあります。

結局受け入れられなかったとしても、最初から拒否するよりも印象が良くなるので、一石二鳥です。

また、完全に受け入れられなくとも、給料を高く設定するなど異動先に掛け合って、初期の条件より良い条件を提示してくれることもあります。相談しない手は、ありません。

異動後に退職するのはアリ?

異動後に退職しようと決意したとしても、手遅れではありません。労働者には退職の自由があるのですから、退職をすることができます。印象が悪くなり、さまざまな不利益を被ることも考えられますが、退職したいと思いながら仕事をするよりは良いでしょう。

異動後の退職によって、不利益を被ることがある?

たとえば、異動後すぐに退職する場合は不利益を被る可能性が非常に高いです。異動先も受け入れの準備がありますから、準備して得た人材がすぐに辞めるというのは不都合というもの。異動を拒否することも考えられたのではないかということから、とても印象が悪くなります。

会社側も感情的になってしまい、不当な対応をすることがあるのです。不当な対応とは、たとえば次のようなことが考えられます。

  • 給料の一部が支払われない
  • 離職票をすぐに発行しない
  • 退職金を不当にカットする

離職票の発行を不当に引き伸ばすということが、特によくあります。

これらの対応は法律的根拠も契約的な根拠も無く、違法です。手間とお金を惜しまなければ、改めさせることができます。そうは言ってもなかなか骨が折れるので、泣き寝入りすることがほとんどです。

出来るだけ円満退職が出来るに越したことはありませんが、それが出来ないならリスクも覚悟しておきましょう。

まとめ

会社側に人事異動をする理由があるように、労働者にも異動したくない理由があります。一度は異動することを検討するのが良いですが、どうしても納得できないのであれば、人事異動を拒否して転職を考えましょう。

その際には、円満退職が出来るよう、出来るだけうまく立ち回ることが大切です。こちらが感情的に動けば、相手も感情的になります。腹が立つことがあるとしても、大人な対応をして賢く退職し、明るい未来に向けて転職活動に励むことが大切です。