帳面や伝票を付けたり、会社の経営状況を把握したりするためには、簿記の知識が必須です。その簿記の知識があることを示す資格が「日商簿記2級」です。ここでは、「日商簿記2級を持っていると転職に有利なのか?」「どのような仕事や求人があるのか」など、日商簿記2級にまつわる転職事情について見ていきましょう。

日商簿記2級は転職に有利なのか?

「日商簿記2級」と聞くとどのようなイメージがあるでしょうか。少し前までは上場企業の経理レベルは日商簿記1級、中小企業の経理レベルは日商簿記2級というイメージでした。しかし、現在の日商簿記2級は昔に比べて、勉強する範囲が広くなっています。

その理由は、世の中のビジネススタイルの変化に対応するためです。平成28年~平成30年の出題範囲を見ても、外貨の取引やコピー機・車などのリース取引、電子債券、関連会社との連結などが追加されています。これらの取引は、実務をしているとよく遭遇する取引なのです。

日商簿記2級は、「転職に最低限必要な資格」から「転職に役に立つ資格」へと変化している最中です。今後、日商簿記2級を持っている人の需要は高くなっていくでしょう。

ただし、以前に日商簿記2級を取った人は当然、現在の出題範囲を勉強していません。そのため、企業の採用担当者などが日商簿記2級取得者に即戦力としての能力を求めるのは、おそらくもう少し後のことになると思われます。

現時点では残念ながらそこまで優位性のある資格とは言えませんが、これから紹介する職種に転職したい人にとっては重要な資格になってきます。

日商簿記2級を活かせる仕事・求人一覧と転職事情

日商簿記2級を活かせる仕事の基本は、経理の仕事です。経理の仕事とは具体的に次のようなものが挙げられます。

  • 請求書・領収書の発行
  • 管理や小口現金の管理
  • 帳簿付け
  • 月次や年次決算
  • 銀行との折衝
  • 売掛・買掛金管理
  • リース管理など

加えて、今はPCスキルが必要です。会計ソフトや販売管理ソフトを使っての帳簿作成や、請求書の発行・管理、社長や銀行に対する説明用資料の作成など、基本的なPCスキルは必須です。

日商簿記2級を持っていることは、「あくまで、求人に応募できるスタートラインである場合が多い」ということを認識しておきましょう。求人の中には未経験歓迎もありますが、資格にプラスして実務経験やPCスキルなどを重視するところも多くあります。

経理職として一歩踏み出したい人は…

求人検索サイトやハローワークのインターネットサービスなどで、取得資格を「日商簿記2級」として求人を検索してみてください。おそらく求人数が多いのは中小企業の経理だと思われます。もし経理の仕事を希望するなら、まずは中小企業の経理を目指してみましょう。多くの場合、中小企業が経理の求人を出す理由は、以下の2つです。

経理担当者の退職

この場合は実務経験者の方が有利ですが、引き継ぎの時間に限りがあるので、未経験者でも採用される可能性があります。

会社の規模が大きくなったため

会社の規模が大きくなり、経理の人数が足りなくなったための求人です。この場合、上場企業と同程度の給料を出すことが難しいことも多く、初心者も歓迎するところも多いです。また、すでに経理部を取り仕切る人がいるので、経理の仕事をすべて1人でする必要はありません。最初は雑務から始まり、慣れてきたら次の仕事と、少しずつキャリアアップすることも可能です。

ひと口に経理といっても業種によっていろいろ

「中小企業の経理から目指すとよい」とは言え、中小企業にはさまざまな業種があります。小売業や卸売業など、いわゆる普通の商業簿記で対応できる業種もありますが、普通の商業簿記とは異なる簿記の知識が必要な業種もあります。

上記でも述べたように、日商簿記2級の学習範囲が広くなってきているため、学んだ内容で業務に対応できる業種もあれば、日商簿記2級で学んだことをベースにさらに勉強する必要がある業種もあります。以下、該当する業種とどのような知識が必要になるかを紹介します。

貿易関係

今は中小企業でも輸入や輸出など海外の企業と貿易をしているところが多いです。貿易関係の企業で必要なものは貿易事務。外国通貨で取引することがほとんどなので、外貨の簿記知識が必要です。現在の日商簿記2級なら対応範囲に含まれるので、勉強で身につけた知識はあるはずです。

しかし、通関の書類を管理したり、代行業者を使ったりと貿易特有の業務たくさんあり、経験が求められることも多いようです。中には英語の知識を問われることもあります。また、消費税の取り扱いも他の業種とは異なるので、消費税についての知識も必要です。

不動産業

不動産業には、土地・建物を売買する不動産売買業や、アパートなどを貸す不動産賃貸業などがあります。簿記の仕組みは商業簿記とほとんど同じですが、日商簿記2級では習わない科目など、不動産独特の簿記があります。しかし、日商簿記2級の知識があれば、すぐ慣れることはできるでしょう。貿易関係ほど実務経験は問われません。

こちらも消費税の取り扱いが他の業種と異なるので、消費税の知識を持っておいたほうがよいでしょう。

製造業

日本の成長を支えてきた製造業。中小企業の中でも多い業種の1つです。通常、日商簿記2級の知識で全く問題ありません。しかし会社の規模によっては、日商簿記では習わない原価計算などで在庫や原価を計算しているところも多いので、原価計算の知識が必要になります。入社後の勉強は必須です。

財団法人・NPO法人・公益法人

数年前に公益法人に対する法律が施行され、多くの公益法人がその他の企業のように帳面の管理や、税金の申告などを行うことになりました。そのため、経理担当者の需要は多くなっています。ただ、公益法人の経理は日商簿記では習わない科目など、公益法人独特の簿記を使っています。しかし、日商簿記2級の知識があれば、すぐ慣れることは可能です。

宗教法人

実は、宗教法人も帳面を付けたり、お金の管理をしたり、職種によって税金の申告をしたりと経理の需要がある業種です。日商簿記では習わない科目など、宗教法人独特の簿記を使います。しかし、日商簿記2級の知識があれば、すぐ慣れることは可能です。宗教法人用のソフトも出るぐらい、経理の人材は不足しています。

日商簿記2級が生かせるその他の業種には、会計ソフトメーカーでのお客様サポートや開発のアドバイス、商工会議所納税協会などがあります。

子会社との連結業務について

今は中小企業でも子会社を持つ会社が多いです。子会社のある会社では、経理の仕事に「子会社との連結」の業務も含まれます。子会社との連結業務とは、簡単に言うと親会社と子会社の資産や負債、収入や経費を1つにまとめた決算書などの資料をつくること。

子会社との連結については、以前は範囲外でしたが、現在は日商簿記2級の範囲に追加されています。求人は経験重視が多いですが、人材を育てる体力のある会社も多いので、未経験採用も多いのが特徴です。

簿記+αの資格でさらに専門性を高めるなら

日商簿記2級は、他の資格を取るための基礎的な資格とも言われます。その仕事をするには他の資格を取る必要もあるが、日商簿記2級があったほうがその資格を取りやすい、あるいは、簿記の知識がなければ難しいものがいくつかあります。代表的なものは次のとおりです。

医療関係、病院での仕事

病院などの医療関係の経理をするためには、医療事務が必須です。医療事務には医療費を計算するためのレセプト業務など、医療関係の職場でしか使わない事務が多くあります。

知識がない人は、あらたに医療事務について勉強する必要があります。

建設業

ある程度の建設工事を行うためには、国や大臣など関係省庁からの許可が必要です。また、国から受注できる工事などの金額も、一定の基準によってランク分けされています(経営審査)。その審査の加点対象となるのが、建設業経理(事務)士が社内に在籍していること。建設業の転職に有利な資格ですが、その勉強のためには基礎として日商簿記2級の知識が必要です。

会計事務所

会計事務所は顧問先の経理を代行するため、簿記の知識は必須です。また税務の知識も必要であるため、日商簿記2級の知識を基礎として、税理士試験などを受験しステップアップも可能となります。

好きな人には憧れの業界!レアな求人

ここでは、一般の転職サイトなどにはあまり出ない、レアな業界の求人の募集について紹介します。

簿記の専門学校の講師

転職サイトに掲載されることもありますが、専門学校の講師が通っている生徒に声をかけることも多いです。それは、専門学校でその生徒の人柄や簿記の知識を把握しているからです。

プロ野球などのプロスポーツ球団の経理

プロスポーツ球団の経理は基本、必要なときに不定期でその球団のホームページに「新着情報」としてさりげなく記載されていることが多いです。

美術館・博物館の経理

こちらもプロスポーツ球団と同じように美術館・博物館のホームページに必要なときだけ記載されています。プロスポーツ球団や美術館・博物館で経理の仕事をしたい人は、こまめにホームページを確認するとよいでしょう。

日商簿記2級と転職についてのQ&A

日商簿記2級や経理への転職について、みなさんが疑問や不安に感じることをQ&A形式にまとめてみました。

経理の仕事が未経験でも、日商簿記2級があれば転職できますか?
経理の求人は、その会社の経理担当者の退職や、経理部門の強化などによるものが多いです。経理担当者の退職が理由である場合は経験が重視されることも多いですが、経理部門の強化の場合は未経験者でも受け入れているようです。。ただ、金額面では月給20万円前後が多いでしょう。
何歳ぐらいまで転職が可能でしょうか?
経理の求人で1番多いのは20代から30代です。しかし、経理部の幹部候補や実務経験者が欲しい企業は、逆に40代以上を望む場合もあります。
男性と女性で転職のしやすさは変わりますか?
小さい会社の場合は、女性のほうが転職しやすいです。これは経理の仕事だけでなく、来客時のお茶出しなど、総務の仕事も一緒に任されることが多いからです。しかしある程度の会社になると、性別により採用が左右されるということは少ないでしょう。
月給と年齢にはおおよその目安は以下のような傾向が見られます。

  • 月給20万円前後…女性が多い、20代以上。給料がそれでいいなら30代以上もOK。最初は雑務から少しずつキャリアアップ
  • 月給25万円程度…男性、女性とも。資格+実務経験があれば尚良し。20代~30代メイン
  • 月給30万円程度…男性、女性 30代~40代メイン 経理部の幹部候補 実務経験必須。簿記2級も必要。できればその上の資格も。
残業はあるの?
残業はないところが多いです。ただし、決算月は1日2~3時間の残業は覚悟が必要です。
経理以外の仕事はできるの?
中小企業の場合、経理+人事(総務)の場合も多くあり、給料計算等も行います。ある程度の規模の企業の場合は経理のみのことも多いですが、その分他部署との折衝が必要のため、コミュニケーション能力は必須です。
仕事についてから、日商簿記2級は実際に使えるの?
使えますが、日商簿記2級はスタートと思ってください。会社に入ってからも日々の勉強は必要です。

まとめ

今回は、日商簿記2級を活かせる仕事・求人一覧と転職事情についてご紹介しました。
現在、日商簿記2級は世の中のビジネススタイルの変化に対応するため、その試験範囲を広げ、「転職に最低限必要な資格」から「就職に役に立つ資格」へ変化しようとしています。しかし、それが転職事情に反映するまでには、もう少し時間がかかるでしょう。

日商簿記2級を活かせる仕事は経理です。転職では中小企業の求人が最も多いです。経験があったほうが良いですが、未経験者歓迎の求人も多くあります。また転職後も
資格取得で学んだ知識を使って、ステップアップすることが可能です。

世の中の変化でビジネススタイルや会計、税金の仕組みも少しずつ変化しますので、日商簿記2級の資格は、ますます重宝されるでしょう。