転職するにあたり、社会問題にまでなっているブラック企業だけは職場選択で避けたいところ。ですが、最近は「ブラック」な企業が巧妙にその実態を隠しながら求人募集をするようになってきています。

その「罠」に嵌まることなく転職を成功させるためには、まずブラック企業についてある程度の予備知識を持っていなければなりません。

この記事ではブラック企業が多い業種をご紹介するとともに、それでも希望する業界である場合にどういう転職活動をすれば良いかなど良い職場へ就くためのヒントをお伝えします!

ブラック企業が多いとされる業種

この業界の企業がすべて「ブラック」というように、ひとくくりにして考えることはできません。

仮に、A社とB社で同じように社員が安い給料で長時間にわたる勤務をこなしているとしましょう。同じ労働条件であったとしても、社員に対する言葉ひとつで職場の印象は大きく異なるのです。

状況/対応 A社 B社
忙しくて残業が多くなっている いつも大変な思いをさせて申し訳ないが、がんばってほしい 仕事が終わらないんだから当たり前のことだ、もっと生産性を上げろ
体調を崩して休みたい 心配しなくて良いからちゃんと治して戻って来てくれ 抜けられたら仕事にならないから這ってでも出て来い
激務の割に給料が変わらない がんばってくれているのはわかっている、何とかするのでもう少し我慢してほしい カネの事を言う前にもっと仕事をしろ

A社のようにスタッフへの配慮が十二分にあれば「良い会社」となりますし、B社のように欠けていればブラック企業であるとされるのです。

ブラックであると判断される要素の多い企業が集中している業界はありますから、ブラック企業に関する基本知識として頭に入れておきましょう。

そのポイントとして、以下の点に注目してみます。

  • 労働時間の長さと残業の質・量
  • 給料の体系

飲食業

飲食業の店舗では週末や休暇期間中、祝祭日などに混雑し平日は比較的落ち着いているというように忙しさの幅があります。

正社員を採用すると常駐させなければなりませんが、暇になる時期には人員が余ってしまうためアルバイトスタッフで調整しているのです。

そのために社員の数が少なく、社員一人あたりの労働時間は長時間に及び残業もふくらむというブラックな環境になっています。

牛丼チェーン「すき家」の労働環境を改善すべく第三者委員会がまとめた調査報告書によると、1ヶ月間の残業時間数が160時間以上となっていた社員は調査期間中すべての月に存在していました。

またスタッフ1人ごとに1時間あたりの売上金額という指標があり、これを達成するためにサービス残業を行うことも常態化されていました。

給料についても利益が出ている企業は新規出店へ優先的に資金を投じているため、現場で汗を流す社員は昇給しにくくモチベーションを維持しにくくなっています。

介護業

介護関係のサービスを提供している事業所は、介護報酬という収入をもとに運営されています。介護報酬は国が決めているものですから、事業所側で自由に金額を変更することができません。

そのため、限られた人件費の中で最低限の社員を確保した状態でのサービスが提供されています。この状況で高収入を望むことは難しく、独立行政法人福祉医療機構が公表している介護職員の賃金に関する資料では産業別での月給が24万円弱。

職種別ですとホームヘルパーが20万円あまり、福祉施設介護員が21万円あまりとなっていて明らかに低水準です。

また、日本医療労働組合連合会が発表した「2015年介護施設夜勤実態調査結果」によると2交替夜勤のシフトを採用している施設が多数あります。

施設によって夜勤の1人体制が認められているため、16時間以上の勤務時間をほぼ休憩なしで過ごさなければならないといったブラックな状況があるのです。

娯楽業

厚生労働省が公表している平成27年雇用動向調査結果によると、産業別の離職率で生活関連サービス業・娯楽業は14産業中2番目の21.5%という数字になっています。

たとえば就業人数が多い職場であるパチンコ店ですと、労働組合がしっかり機能しているホールであれば労働環境が安定している傾向。

これがあまり規模の大きくないチェーン店などとなると、人件費に余裕がないため少数のスタッフで業務をこなさなければなりません。

定められているシフトを大幅に超過した拘束時間でありながら、残業代が出ない場合や有給休暇を使うこともできないようなブラックな職場は少なからずあるのです。

小売業

小売業界では近年、多様化したお客さんの生活時間帯に対応すべく24時間営業のスーパーマーケットなどが増加しました。

アルバイトのスタッフはシフトで勤務することが多い一方、社員については開店前の準備から閉店後まで半日以上の長時間勤務を強いられるケースが散見されます。

それでありながら、社員になると残業代がつかずアルバイトの収入を下回るという事例が多々。低収入で労働時間は長いことから、ブラックな職場であるとして社員になりたくないとする声がよく聞かれています。

教育、学習支援業

少子化が進行している中、教育関連ビジネスを営む企業は生き残りをかけての競争に力を入れています。

たとえば特に激戦が繰り広げられている学習塾でいうと、社員は講師として勉強を教えていれば良いというわけにいきません。

説明会など営業色が強い仕事にかなりの時間を割かなければならず、講義以外にも長い時間を拘束されることになりかなりのブラックな環境です。

給料面では、平成27年賃金構造基本統計調査によると教育・学習支援業は55歳から59歳というかなりの高年齢でもっとも高額になっています。

これは高齢になっても家庭教師などのニーズがあるためですが、若い世代のうちは薄給であるため昇給を待たず業界を離れる人が多くなっています。

情報通信業

2008年の小学校学習指導要領を受けて「パソコンの授業」が本格的に行われるようになり、2016年に行われた産業競争力会議では小学校でプログラミング教育を必修化する方向で検討すると発表されました。

これらの流れからも、IT業界で働く労働者の年齢層はさらに若くなっていくと予想されます。しかしながら体力がある若年層だけに、終わらない仕事を何とかしようと長時間の労働に従事する例が多く見られています。

給料については定額残業代制度を導入し、基本給に残業手当分を組み込んでいる企業が多い状況。その実態としてはさらに長時間の残業が発生しサービス残業状態になっていて、「ブラック度」はかなりのものです。

不動産業

不動産業にかかわる職種のうち、特に購入物件のセールスは厳しい仕事であるとされています。見込みのあるお客さんに合わせて話をするためには、どうしても夜間や休日を大事にした営業活動をしなければなりません。

給料体系は成果給を取り入れている企業が多いため、実績につながらなければ長時間労働が報われません。

そのほか中小規模の職場を中心としてサービス残業になるケースも多く、ブラックな業界であるとされる所以になっています。

保険業

保険会社には、営業マンとして良い実績を残し続けることによって管理職へ昇進するという図式があります。

社員にとっては常に業績を上げていなければ「脱落」してしまうため、労働時間が長くなっても目標を達成するためにはやむなしということに。

給料は歩合制としている会社が主流になっていて、成果を出し続けないと薄給になっていく一方。経費を自己負担しなければならない職場で労働時間と収入が釣り合わなくなることも、ブラックな要素になっています。

宿泊業

インターネットが普及するにつれ、宿泊施設は安価な宿泊プランで「ネット予約」へ対応するようになりました。

値下げ競争が進み、そのためにコストを抑えなければならないことからそのしわ寄せは社員に。各部署に配置されているスタッフは最小限であり、忙しいときは持ち場の枠を越えてヘルプに入らなければなりません。

厚生労働省の平成27年雇用動向調査結果では、宿泊業・飲食サービス業が産業別離職率で28.6%となっていて14産業中もっとも高い数字。

それというのも勤務が長時間に及ぶ中、平成27年賃金構造基本統計調査では平均年収が12産業中もっとも低い約270万円にとどまっています。

苦労が給料面で還元されているわけではなく、ブラックな環境が改善される方向も見えていません。

葬祭業

人の不幸はいつ起こるかわからないものですから、葬祭業の企業で働く社員が一般企業のサラリーマンと同じような定時定時の勤務をすることはできません。

シフトは24時間体制で夜勤からそのまま日勤といったことが頻繁にあり、やはりご遺体を目にして触れなければならないことで精神的に厳しいところも。

高齢化によって葬儀の件数は増加している一方、簡素化が進んでいることで単価は低下しています。それによって現場のスタッフが支給される給与は以前よりも減少していて、ブラック化する企業が増加する一因になっています。

アパレル産業

アパレル業界の中では、特に総合職として働いているケースでブラックな環境へ直面することになります。

アパレルの仕事としてすぐイメージされる販売の仕事は、多々ある業務のひとつにすぎません。店舗の営業時間中はどうしても販売中心で過ごすことになりますが、広報なりウェブなりの担当を兼務するとなると残業ありきの勤務時間になります。

その残業代は固定で基本給に組み込まれている場合が多く、サービス残業に不満を持つ人はかなりの数になっています。

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「隠れブラック企業」という存在

ブラック企業への注目が高まり、2015年には若者雇用促進法が施行され労働関係法令違反があった事業所について新卒求人をハローワークで受け付けないようになりました。

ですが、これはあくまでも新卒者の募集に対する規制であってまだ万全な対策ではありません。職場としての働きやすさを前面へ押し出しながら、実は長時間の残業を常としている企業があるのです。

従来のブラック企業と異なる点

「隠れブラック企業」では、従来から問題視されてきたブラック企業のように全社的な共通認識として法令違反が横行しているわけではありません。

NHKの報道番組である「クローズアップ現代+」が2016年11月2日、「まん延する”隠れブラック企業”~密着特別対策班~」のタイトルで隠れブラック企業の問題について放送しました。

その中で、労働局の過重労働撲滅特別対策班が飲食店を営むサトレストランシステムズ株式会社に対して実施した強制捜査が紹介されています。

社長は社が掲げていた勤務制度のもとで過重労働はあり得ないと認識していたのですが、捜査によって浮かび上がった実態はまったく異なるもの。

本社が指示したものではなく、表向きは残業を増やさずに店舗を回すべく各店舗の判断によって独自に残業時間の改ざんが行われていたのです。


会社組織の規模が大きくなってくるにつれて、本社の目が行き届きにくい現場での「残業隠し」というケースがあらたな問題としてクローズアップされてきました。

社内での矛盾が起こる理由

近年になって企業の不祥事が目立ち、コンプライアンスを守ろうという気運が高まりました。

そのために行われている取り組みの一例として、次のようなものがあります。

  • 社員の行動を定める社内規則となるマニュアルの作成
  • 社員がコンプライアンスに関して相談しやすい部署の設置
  • 社員への研修の実施
  • 内部監査の実施

こうして会社側では働きやすい職場を目指すものの、組織に業務効率や人員不足などの問題があるとなかなかうまくいきません。

指針に合わせて行動していては、現場が成り立たないという「ズレ」が生じてしまうのです。そのために、表面上はコンプライアンスを遵守しているとしながら現場にはブラックな状況が隠されているということになります。

ブラック企業が多いとされる業種の特徴やこの業種で働きたい人へ

ブラック企業にしても隠れブラック企業にしても、問題がある企業の業種としては同様の傾向が見られています。

それでも、そこで働きたいと望んでいる人たちがいるからこそ業界は成り立っているわけです。仕事自体には魅力を感じているという場合、なんとかして良い環境で働いていくことはできないのでしょうか?

ブラック企業が多いとされる業種に特徴や共通点ってあるの?
ブラック企業が多いとされる業種についてはこの記事の最初で紹介しましたが、日本標準産業分類の産業としては第三次産業に含まれるものが多くなっています。

第三次産業の特徴は、商品やサービスを提供することによって利益を生み出すという点です。共通して人間の労働力が仕事の中で高い割合を占めていることから、労働集約型産業と呼ばれています。

どうしても「ブラック率が高い業界」で働きたいときは、どうやって大丈夫な企業を探せば良いの?
「ブラック率が高い」といっても、その業界ですべての企業がブラックということはありません。社員を大切にして企業として努力を重ねていることで、過酷な労働条件であっても社員から愛されている会社はあります。

求人募集の文字による情報だけでは判断しにくい部分がありますから、募集要項に加えて会社の様子を実際に目で見る機会となる面接の場を有効に活用したいところです。

オフィスでいえば整理整頓がなされていない、灰皿の灰が溜まっているといったことなどから社員にゆとりがないとわかります。

またその社員がいかにも疲れた様子でいる、挨拶をしても素っ気ない反応であるような場合は危険です。

逆に言えば、整然としたオフィスで生き生きと元気にスタッフが動いている会社であればやりがいを持って働くことができるのではないかという期待につながるでしょう。

ブラック企業へ転職しないために

働いてきた経験を踏まえ、転職するにあたってこれまでよりも良い環境で働きたいと考えることは当然です。

そのためにも、劣悪な環境となるブラック企業へ入社してしまうことは絶対に避けたいところ。転職活動をする中で判断を誤らないようにするためには、重要なポイントがいくつかあります。

気持ちをしっかり持つ

転職活動を始めるときには、「次はこういう職場で働きたい」という希望が頭の中にあるハズ。ところが応募した企業で不採用になる結果が続くと、少しずつ自分の中でハードルを下げていきがちです。

こうした妥協を続けた末、最終的にブラック企業へ行き着いてしまうリスクは大いにあります。後々になって後悔しないためにも、初心を忘れず強い気持ちでチャレンジを続けなければなりません。

人の話を聞く

強い意思とともに転職活動へ臨むことは良いのですが、「思い込んだら一筋」が必ずしも良い結果へつながらないことに注意する必要があります。

会社案内なり会社説明会で良い印象を持った会社について調べてみて、時に悪評の方が多いということは考えられます。

周囲に相談しても好意的な意見が聞かれず、逆に意固地になって「この会社しかない!」と突き進んだ結果が典型的なブラック企業だったということは往々にしてあるのです。

道を見誤らないためにも、外野の声をすべて遮断してしまうのではなく人の話へ柔軟に耳を傾けることが大切です。

転職エージェントに相談する

個人の力でブラック企業を見極めようとしても、結局は素人判断ですから簡単なことではありません。そんなときは、プロとしてたくさんの企業を見てきた転職エージェントに相談してみましょう。

エージェントの元にはさまざまな業界のブラック企業に関する情報が入ってきていて、当然そのような企業を紹介することはありません。

また、そもそも企業が転職エージェント経由で人材を採用した場合にはエージェントに対して料金を支払います。その金額が安価で人を集めたい企業にとっては高額なものであるため、ブラック企業はあまり転職エージェントを使っていないのです。

まとめ

ブラック企業をめぐる問題には国が本格的な対策を講じつつあるものの、状況が改善されるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。

転職しようとするときには、個人個人がブラック企業に関する最低限の知識を身につけ職場選びに失敗しないよう「自衛」したいところ。

ただ、それだけでは限界がありますから家族や友人のほか転職エージェントなども含めた相談相手を持つことが重要。

特にエージェントは専門的な目で、しっかりとブラック企業のことを見極め優良企業を紹介してくれます。