ここ10年ほどのうちに、「ブラック企業」をめぐる話題が大きくクローズアップされるようになりました。

しかしながら、高度経済成長期の頃から会社のために昼夜問わず働いていた「企業戦士」も今で言えば「ブラック」に該当するかもしれません。

そう考えると、ブラック企業という呼ばれ方が最近になって出てきただけで、古くからその体質はあったということにもできそうです。

それだけ根強い土壌がある以上、仕事をするにあたってブラック企業を避けることはできないのでしょうか?この記事では改めてブラック企業について考えてみるとともに、就職や転職を思い立ったときに職場を選ぶポイントもご紹介します!

ブラック企業がクローズアップされてきた背景

1990年代から2000年代にかけて就職氷河期が続く中、「ブラック企業」という存在がクローズアップされるようになってきました。

今や、ちょっと仕事が大変なときには「職場がブラックでさぁ…」などと冗談を言うほど知られる言葉。これだけの注目を集めるようになった背景は、どのあたりにあるのでしょうか?

ブラック企業は昔からあった?

「ブラック企業」という言葉はかつて、暴力団などが資金集めのために経営しているいわゆる「フロント企業」のような企業を指していました。

ただ、その当時から今で言うところのブラック企業は実質的に存在していたということができるかもしれません。

終戦後に荒廃していた日本はわずかなうちに目覚ましい発展を遂げたわけですが、その影にはとにかく会社を通じて国を盛り上げていこうとする人々の思いがありました。

その目的を実現しようと、長時間にわたるハードワークが当たり前という企業は数多くあったのです。

企業の変化

戦後の復興期から経済成長期にかけても、今であれば「ブラック」と呼ばれる要素がある企業は当たり前にありました。

それでも、労働者をめぐる問題が大きくクローズアップされるような事態にはなっていませんでした。近年になってそれが問題視され始めた理由は、企業側の変化にあるのではないでしょうか?

かつての「ブラック」な環境が問題にならなかった理由

経済成長期の真っただ中にあった企業を職場としていた人たちは夜遅く、週末などにも精力的に働いていました。

確かに法律で週40時間労働が定められるよりも前の時代でしたが、それでも「働きすぎ」として大きな社会問題になるようなことはありませんでした。

その理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 終身雇用制にもとづく保障の安心感
  • 働いた分だけの収入と昇給やボーナスへの期待

つまり働くことに対してしっかり「見返り」があり、仕事が大変であっても満足感や達成感があったことによって常に前向きでいることができたのです。

ブラック企業が問題になってきた理由

成長を続けていた日本のメーカー企業は、近年になって国際的な競争力を失いつつあります。

その理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 人材の流出
  • 他国による技術面の追い上げ

シェアを伸ばす外国産の製品に対して価格で勝負しようとする中、そのしわ寄せが人件費の削減へとつながりました。結果として、働く側にとっては長時間労働でありながら収入は満足のいくものにならなくなりました。

上司によるプレッシャーがパワハラというかたちで顕在化したり、サービス残業を強いられたりするなどさまざまな問題が。

同じように働いていても報われるものがない職場に対して、働いている人たちが物を言うようになってきたということができるのではないでしょうか?

どんな企業にも「ブラック」な要素はある?

2012年以降、ブラック企業の頂点を決めるという趣旨で「ブラック企業大賞」が開催されています。

その大賞を受賞した歴代の企業を振り返ると、大企業の名前が並んでいます。

年度 受賞企業名
2012年 東京電力株式会社
2013年 ワタミフードサービス
2014年 株式会社ヤマダ電機
2015年 株式会社セブンイレブンジャパン
2016年 株式会社電通

一般に多くの社員が働いている大企業といえば、福利厚生が充実しているなど働きやすさを考えた職場づくりがなされている印象。

しかしながら、現実には労働者をめぐる問題が絶えることなくニュースをにぎわせているのです。

ブラック企業のイメージ

実は、ブラック企業という言葉は頻繁に用いられていながら明確な定義付けがなされていません。そのため、そのイメージは個人個人で抱いている印象から形成されているところがあります。

一般的な認識として共通している点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 長時間労働にまったく配慮せず日々の残業が当たり前でサービス残業が大部分
  • 最低限の給料しか支給せず昇給やボーナスがない
  • 上司が部下を尊重せず理不尽なことを言う

最近はそのイメージが一人歩きしていて、本当は「ブラック」ではない企業で社員の間からそういった声が聞かれる事態になっています。

「ブラック」な要素とは?

必ずしも職場が過酷な労働を強制するのではなく、中には職場に対する愛情から社員が自主的にハードな仕事へ取り組んでいるケースもあります。

そう考えると、厳密に言えば「ブラック」に当てはまる要素は多かれ少なかれどのような企業であっても見られるのかもしれません。

サービス残業

労働基準法第三十七条の規定では労働時間を延長した場合、その時間について割増賃金を支払わなければならないとされています。

つまり、本来であればいかなる場合であってもサービス残業というものが存在してはいけないのです。

現実には、ちょっとした引き継ぎをしているうちに定時を少しオーバーしてしまい「まぁいいか」とそのまま帰ることがあるでしょう。

それすらも、穿った見方をすれば違法行為のサービス残業として考えられることになってしまいます。

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パワー・ハラスメント

法務省が委託し財団法人人権教育啓発推進センターによって制作された資料によると、現状ですとパワハラに関して法令で定めているものはありません。

パワー・ハラスメントは「ハラスメント」ですから嫌がらせ、いじめの類ということになります。相手に対して仕事上で上の地位にあったりより強い権限を持っていたりすることを背景に、その人格を侵害するような言動をするもの。

ただ、業務指導であるのかパワハラになるのかという「境界線」が混同されがちになっています。実際に部下を指導するために上司が強い口調で叱ることはあり、それは業務の中で認められてきました。

受け止め方にもよるのですが、たくさん叱られて育つことが少なくなってきた近年の若年者には指導目的の叱責をパワハラであると解釈する事例が少なからず見られています。

薄給

ブラック企業といえば、長時間にわたってハードな仕事をさせられながら給料は安い会社という認識を持っている方が多いでしょう。

ですが実際のところ、誕生から間もなくこれから成長していこうとしているなどこのような環境にある企業は多々あります。

その状況だけでブラック企業であると判断されるのでは正直、大部分の企業がブラックとして認定されてしまうでしょう。

「日本だからこそ」存在するブラック企業

日本国内を席巻しているブラック企業の問題ですが、海外諸国には正しく理解されていません。それというのも問題の根本は日本的な文化、またいわゆる「日本型」の雇用システムに行き着くとされているから。

つまりブラック企業という存在は世界に共通して見られるものではなく、日本に独自のものであるのです。

理解されにくい日本人の感覚

海外の方々にとって、日本で過労死している人がいるという事実は不思議に映っているといいます。世界的にもトップクラスの先進国であるわけですから、どうして転職せずにブラック企業という過酷な環境下で働き続けるのかと疑問に思うのです。

その理由を突き詰めていくと、日本人の良いところとしてよく挙げられる「和」の精神が関係しているのではないでしょうか?

古くから一人で行動することは異端であると捉えられ、集団で行動することを良しとされてきた日本人。集団の中にあっても、大勢から外れた言動をすることは好まれない風土がずっとありました。

それは企業についても同様であり、どこか「多数が正義」的なところがあってそれに従わなければ「不穏分子」とされてしまいます。

ですから、同僚がみんなサービス残業をしているとなれば良くないとわかっていてもそうしてしまうのです。これが日本人的な感覚であり、個人の行動を大切にしている諸外国ではこのようなことはありません。

日本に独自の雇用システム

先進国の中で日本の雇用システムは独自のものになっていて、まず「総合職」という概念がヨーロッパやアメリカにはありません。

各国では職種別で採用することが通常ですから、社員一人一人が担当する仕事は明確になっています。それに対して総合職はその名のとおり業務内容が制限されていないため、定義に曖昧な部分があるのです。

総合職の存在は、いわゆる「日本型」雇用システムが形成された一因になったということができるでしょう。職種別採用のように採用者へ求めるスキルが定まっていませんから、新卒一括採用をして社内で教育するスタイルができあがったのです。

どのような仕事を担当するかがわからない総合職という職種区分がある以上、どの日本企業も薄給での長時間労働というブラック企業の特徴に該当し得るということができます。

担当業務の定義が曖昧であることは、以下のような弊害を起こすリスクにつながります。

  • 客観的に業績を評価することが難しく、仕事に対して適切な金額の給与が支払われにくい
  • 担当する業務の境界線が明確でないため、勤務時間以上の業務量になりやすい

ブラック企業が採用したい人材

社員のことを配慮せず過酷な労働条件で働かせている典型的なブラック企業では、結果的に次々と社員を使い捨てています。

そのために人の出入りがとても激しく、社員を「補充」するために採用活動は継続的かつ活発に行われています。

こういった企業による求人はさまざまな媒体で頻繁に見かけられ、しかも採用されやすいことに注意しなければなりません。

ブラック企業の求人事情

普通の思考があるならば当然、「ブラック企業でなんか働きたくない!」と考えるはずです。ブラック企業がこれだけ各所で話題になり多くの人が知る存在となった以上、企業の側でも簡単に人を集めることはできなくなってきています。

このような企業では、一見すると働きやすい会社であるような印象が伝わる求人情報を用意するなど働き手を得るためにあの手この手を繰り出しています。

就職や転職でうまくいかない人は「絶好のターゲット」

就職活動や転職活動を続けていてなかなか内定が出ないという人は、ブラック企業にとってうってつけの人材となってしまいます。

就職先が決まらないことは気持ちのゆとりを奪うことに加え、正常な判断力までも狂わせていきます。

誰でもはじめは「こんな仕事をしたい」、「こんな職場で働きたい」という希望を持っているもの。ところが職探しが長引くにつれて気持ちはぶれていき、「どんな職場でも良いからとにかく働きたい」となってしまうのです。

人を選ばず採用する企業の姿が魅力的にさえ見えることようになることは恐ろしいものであり、そのような考え方はブラック企業にとって思うつぼ。

就職してしまうと良いように使われてしまうことは明白であり、そこから抜け出そうと決意すること自体が難しくなってしまいます。

もし再び転職するとしても同じようにうまくいかないのではないかという恐怖から、行動を起こすことができないのです。

職場探しでブラック企業を避ける方法

日本ならではの雇用システムが現存している以上、どの企業についても「ブラック化」する可能性が完全にゼロということはありません。

その背景には企業の経営状態も関係していますから、さまざまな情報を収集しながらできるだけリスクの低い職場を見つけたいところです。

業界の選び方

絶対にブラック企業は嫌だ、職場探しに失敗したくないということであればリスクの高い業界を避けることがひとつの手です。

労働環境に関する問題がクローズアップされている企業の多い業界は、ある程度の目安になるでしょう。

不動産業

取り扱う商品が非常に高額であるため、特に営業職は実績を上げることが簡単ではありません。

それでありながらノルマの管理は厳しく、給料は歩合制である企業が多いため成約がなければどんどん追い込まれていきます。

IT関連業

社会の大部分がIT技術によって支えられているといっても過言ではない昨今、関連企業には過酷な環境のもとで働いている社員が数多くいます。

24時間体制で稼働しているコンピュータシステムにトラブルがあれば日付、時間を問わず対応しなければならず仕事の「終わり」が見えにくいところも。

アパレル業

女性を中心として人気はずっと高い業界ですが、社会の高齢化や経済の冷え込みにともなってファッションへの支出は減少傾向が続いています。

中でも販売職は薄給である中、売上目標を達成するために自己負担で商品を購入せざるを得ないといった話がよく聞かれます。

飲食業

飲食店の店舗担当社員が過酷な環境で働いていることは、ニュースなどでよく報じられています。

ひとつの店舗で一人の社員しかいないことは当たり前になっていて、ノルマに追われサービス残業を含む長時間勤務を強いられている例は数知れずあります。

ブラック企業を判断するポイント

100%ではなくても、ブラック企業に共通して見られる傾向を把握しておくことで職場選びの失敗を防ぐ手立てになります。

当然ながら自ら「ブラック」であることを前面に出している企業はありませんから、隠されている本質を見抜きたいところです。

求人のタイミングからわかること

ブラック企業に対する呼称として用いられるようになった「ホワイト企業」では、社員の定着率が高いためにそれほど人を入れ替える必要がありません。

新卒者を採用し育成することでマンパワーが充足していて、中途採用者を募らなくても支障はないのです。

一方のブラック企業では常に人が辞めていっているため、常時の増員を図らなければなりません。そのため、就職サイトや求人情報誌でいつも募集を見かけるような企業は要注意ということになります。

求人広告からわかること

とにかく人手を集めたいブラック企業は、求人広告の内容を魅力的な文言ばかりで飾っています。本当の優良企業である場合は確かにあるのですが、同じ求人募集を見慣れるほどよく目にするのであれば離職率が高いということになるでしょう。

文言 意図
未経験者歓迎/学歴・年齢・経験不問 応募者は誰でも採用して良いように働かせたいため、応募しやすい応募条件を掲げている
実力主義 高収入を期待させ、その実は理不尽なノルマを課して低賃金で働かせる
アットホームな職場 いかにも抽象的な表現を前面に押し出し、乏しいアピールポイントから好印象を植え付ける

面接からわかること

面接ひとつをとっても、優良企業であるかのように装っているブラック企業はその片鱗が垣間見えがち。

選考段階であればまだ手遅れではありませんから、疑わしいところがあれば見極める大きなチャンスです。

こんなことがあった 考えられること
応募した後でいきなり面接の日時を指定され、当日や次の日に行かなければならない 採用活動が場当たり的である
担当者が20代前半などかなりの若さである 上層部までの年齢層が低く組織として体制が整っていない
社員の態度に横柄さが感じられる 社員教育が行き届いていない
その場で内定が出された 熟考することなく人手を欲しがっている

まとめ

ブラック企業は、日本人の特質や日本という国に独自の雇用システムから生み出されることとなりました。

採用に関する間口が広いだけに、就職活動や転職活動が難航している人にとっては職場を選択する上での悩みどころとなります。

ですが、単純に働き口が欲しいからという理由だけでブラック企業を選んでは労働量に見合わない給料で酷使されることになりかねません。

本来望んでいたものがある職場を見つけることができるよう、強い意思を持ってあきらめず職場探しに取り組みましょう!