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昨今、問題となっているブラック企業。法外な環境で労働者を酷使・選別し、使い捨てにする、やり方は大きな批判の的になっている一方、辞めない社員の方が多いのも事実です。

ブラック企業からなぜ社員が辞めないのでしょうか。その理由と背景はどこにあるのでしょうか。

今回は、元キャリアアドバイザーとして、転職相談時に聞いた印象深い話を例に出しながら、ブラック企業で働き続けるリスク。

そして、ブラック企業から早く辞めることのメリットについて考えていきたいと思います。

ブラック企業は社員を辞めれないようにしている

ブラック企業で働く人の心理的な問題点について、複数の社会学的な調査や論文が発表されています。それを踏まえて、私が相談を受けた事例の中から、特徴的な理由について3つ挙げます。

新入社員を過酷な研修で「洗脳」する

関西方面の不動産会社での新人研修ですが、遠隔地で研修が行われ、携帯・スマホは没収。1週間の研修中、大量のレポートや宿題などで6時間程度の睡眠しか与えられないうえ、早朝には2kmのダッシュ。

不動産営業とは何らの関係のない研修が繰り返され、研修メニューごとに全て序列・数値化されました。会社の価値観に共有しない人物の成績が悪く、深夜の自習時間に隠れて睡眠を取った者に対して、「君、1時間いなかったよね」といった糾弾がなされました。

こうした、隔離された過酷な洗脳的研修によって、自分たちが過酷な条件を素直に受け入れ、受け入れられない自分が悪い事のように感じられる心が作られていくのです。実際に、この会社の研修の最後では、参加者全員が涙を流して、講師に感謝の言葉を述べる、といった光景が見られたそうです。

そして、実際の過酷な労働環境に直面した時に言われます。「あの研修を乗り越えたのだから大丈夫」。

正常な社会行動に罪悪感を植え付けられる

ある外食系フランチャイズのFC本部を運営している会社の例ですが、この会社でも、正常な労働条件ではなく、会社に絶対的な忠誠心を植え付ける教育が行われていました。

その中で、常態化していたサービス残業について、退職時に請求しようとした社員がいたのですが、同じく退職した同期や上司にも声をかけると「君がそういうことをするのは残念だ。

私は会社の求める働き方についていけなかったが、君も私も納得して働いていたはずなのに、後になって残業代を請求するのは詐欺だ」と言われてショックを受けてしまいます。

その後もその社員の方は、再就職のためになぜか過酷な筋トレや勉強、アルバイトをこなすようになっていました。「自分がつらい」と感じることが自分のダメなところだと、罪悪感を抱くようになっていたからです。

相談先を知らない

ブラック企業から脱出したくても、情報が封鎖されて、どうすれば良いか分からない、というのも大きな理由と考えられています。

調査によれば、不当な仕打ちを受けた正社員のうち、約17%が退職を選んでいますが、そのうち、弁護士やブラック企業問題に取り組むNPOに相談した例などは数パーセントにとどまっています。

私が相談を受けた(といっても、転職エージェントは労働相談の場ではないので、ブラック企業の職歴について伺う中で聞いたということです。)中でも、こうした相談機関に相談した方は一人もいらっしゃいませんでした。

「辞める」ということまでは出来ても、本来の権利を取り戻そうとすることになると「どうせ何も変わらないから」という諦念に支配された答えが返ってくるケースがほとんどでした。

それだけ、ブラック企業の経験が強烈だったのだと思います。

ブラック企業を辞めれない状況の本当の怖さ

こうしたブラック企業で辞めないことによるリスクはどこにあるでしょうか。大きなポイントは3つあります。

人間らしさを失うリスク

過酷な研修や労働条件、会社の価値観への絶対的服従を当然とする風潮に染まっていくと、本来の人間らしい感情や価値観を取り戻すことが非常に難しくなります。

実際のブラック企業相談例でも、相談しに来た人の多くは、ブラックな環境を告白することに後ろめたさを感じ、自分が間違っているのではないか、という感覚があることが調査で分かっています。

転職しても、他の会社に馴染めなくなる

ブラック企業からの脱出が遅れた場合、転職できたとしても、今度はブラック企業ではないのに、その会社の人間関係や労働環境に素直に馴染めなくなり、コミュニケーションに支障を来して辞めてしまう、といったリスクが生じます。

ブラックな環境で働けたのだから、他のところに行けば天国のように感じられる、とは、簡単に頭が切り替わってくれないのです。

経済的な損失

ブラック企業で働き続けている間、あなたは大きな経済的な損失をこうむっています。

代表的な例が残業代ですが、その他にも仕事の失敗で支払わされた罰金や、病欠で休んだ時に差し引かれた給与、ノルマと称して交わされた勤務先の商品など、一般の企業では考えられない経済的な負担を強いられています。

はっきり言って、ブラック企業に勤めることで得られる経済的利益はほとんどないのです

職歴やスキルは他で転用可能なものはほとんどなく、心理的に大きなダメージを受けた場合は治療した医療費ものしかかります。その代償を会社は一切負担してくれません。

<結論>ブラック企業は早く辞めて新しい職場を見つけよう

ブラック企業に長くいればいるほど、あなたの人生に確実にダメージを与えていき、取り返しのつかない結果を招くことになりかねません。

まず、ブラック企業で働く人にとって、一番大事なことは、一日でも早く、その場から離れる事です。多少の無茶を冒してもかまわないでしょう。

中にはメールで退職届を出し、その後の接触を一切断った人もいました。逃げるならば、正攻法にかまってはいられません。

また、出来れば弁護士やブラック企業問題に取り組むNPO、労働組合、公的機関の助けを借りて、経済的に損失を受けた部分を取り返すことも検討した方が良いと思います。

重要なのは金額の問題ではなく、「自分は歪んだ職場で歪められていたのだ」という意識をつけることも大切です。

そして、正常な人間らしさを取り戻し、早く新しい健全な職場で、本当の働く喜びを手に入れるべきでしょう。

あなたには幸せになる権利があるのです。それを忘れないでください。