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日本経済新聞や日経産業新聞を開けば、人材関係の記事には、まあパソナの記事が多い。
日経の記者さんも、人材業界の記事に困ったら、まずパソナを取材しているのではないでしょうか。
実際、PRTIMESといった、報道関係者が情報を入手するプレスリリースサイトにも、パソナは積極的に情報を発信し、情報を取りやすい企業の1つであります。
最大手、リクルートエージェントを追撃する、二番手グループの転職エージェントの1つであります。
後述するように、その事業の性質は、オールラウンダーの大手総合型の転職エージェントでもあります。
しかし、一番手に追いつくには何かが足りない、今一歩殻を破れていないな、というのが業界人だった私の印象でした。
一体、何が足りないのでしょうか。今回もビジネス構造から強みと弱みを分析し、転職者にとってのメリット・デメリットを明らかにしたうえで、パソナキャリアの賢い利用法を探っていきましょう。
パソナキャリアを「ビジネス構造」から読み解く
総合人材サービスのオールラウンダー
連結対象子会社58社。持分法適用会社4社。海外拠点53か所。
株式会社パソナグループが構成するグループ企業の規模です。
今回の記事執筆のために改めて有価証券報告書を読みなおしましたが、いつの間にこれほど大きくなったのか、と驚きました。
売上高約2,600億円の巨大な総合人材サービス、人材派遣、人材紹介だけではなく、人事コンサルティング、アウトプレースメント、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)まで踏み込み、ありとあらゆる「人材サービス」を展開しています。
その中で、人材紹介事業は、キャリアソリューションという事業の1つに位置付けられ、大きな収益サービスの1つとなっています。
総合人材サービスの中の転職エージェントには2つのタイプがあります。
1つは事業の多角化の一環としてサービスされているが、収益貢献を期待されていないものと、収益の柱の1つとして事業化されているものです。パソナキャリアは明らかに後者に分類されます。
こうした大手総合型の転職エージェントとしての性格は、最大手のリクルートエージェントに類似しています。
人材派遣という絶対的な強み
そして、パソナは、国内では大きなシェアを持つ人材派遣大手です。
この絶対的に強力な営業力と、広汎な情報収集力が、転職エージェントであるパソナキャリアのビジネスの大きなバックアップになっています。
「話題作り」のパソナ
もう1つ、パソナグループの特色は、メディア露出の多さです。
今でも、トップの南部会長はビジネス雑誌等によく取り上げられていますが、かねてから、CMに有名女優を起用するなど、一般のビジネスパーソンに分かりやすい知名度を上げる試みを数多く行ってきました。
最近では、農業や震災復興など、社会貢献性の高い企業への採用サポートなどのほか、女性をターゲットにした転職サポート企画など、メディア受けのする企画に積極的です。
こうして上げてきた知名度の高さから、多くの人材が転職活動の際にパソナキャリアを選び、その人材を当て込む、多くの企業から求人をもらう、良いマッチングがまた他の転職者を呼び込む、という好循環を生じさせる意図があるのです。
①売上高約2,600億円のグループのバックアップ、②豊富な広告宣伝費を使ったメディア露出による、高い知名度といったビジネスモデルを構築したことが背景にあります。
パソナキャリアを使うメリットは?
ここでは、上記のビジネス構造を踏まえて、パソナキャリアを転職エージェントとして利用するメリットについて説明します。
「穴のない」転職の選択肢
まずいえるのが、総合人材サービスのパソナグループのバックグラウンドで収集された広汎な求人情報が、ほぼ全業種、全職種にわたっており、穴がない、ということです。紹介企業の所在地もほぼ全国を網羅しています。
このため、大手総合型の転職エージェントとして、ほとんどの転職者のニーズに対応可能、という点が強みになります。
求人数は、リクルートエージェントに若干落ちる傾向があるようですが、一個人が転職先を決定するための選択肢、という点では十分な紹介数があるようです。
スピーディな転職サポート
次に、人材派遣を主要な事業の柱として発展してきた経緯から、人材派遣の「社風」を引き継いでおり、スピーディな転職サポートを念頭においているということが特徴的です。
実際に、登録画面も数分で完了し、必ず翌日には登録方法等についての相談やレスポンスが返ってきます。
この「レスポンスの速さ」は、登録後も一貫していることが特徴で、速攻で転職を実現させることも可能となっています。
登録方法が柔軟
前に述べたスピーディな対応にも関連しますが、登録方法が柔軟な点も特徴的です。
電話やメールで登録できる、という転職エージェントは他にもありますが、skypeなどのチャットツールによる転職登録も可能となっています。
年収アップにコミットした転職サポート
パソナが他の大手転職エージェントにない特徴的な方向性を打ち出している点は、HP上でもサービスの特徴としても年収アップにコミットしている点です。
これは、大手総合型の転職エージェントの中では思い切った例です。
大手総合型ということは、登録者の多様な転職ニーズに合わせてサービスすることが通常なため、必ずしも年収アップを優先して実現させられるわけではありません。
また、営業上も安定的な転職成功が求められるため、リスクのある年収交渉は避けたいところです。
パソナキャリアが年収アップにコミットしているということは、他社と差別化するためにリスクを取っている、つまり本気だということです。
女性専門のキャリアサポートチームの編成
パソナキャリアは、このほかに女性向けのキャリアサポートの専門チームを立ち上げるなど、女性の転職支援に力を入れている点も特徴的です。
もともと、女性のキャリアアドバイザーが多いなど、自社での女性の活用に積極的な会社でした。
こうした社風が活かされ、近年では女性の登録者を対象に、転職終了後のアフターフォローのワークショップを企画するなど、将来のキャリアプランの実現まで積極的にサポートしようという姿勢を打ち出しています。
パソナキャリアを使うデメリットは?
ここからは、パソナキャリアを転職エージェントとして利用するうえでのデメリットを説明します。
転職サポートのコンテンツに見劣り
まず挙げられるのが、情報サービス会社というルーツを持つリクルートエージェントと違い、転職サポートのコンテンツにやはり見劣りがする、という点です。
転職者へのサポートコンテンツとして、「はたラボ」というサイトが整備されていますが、そのテーマも、「サウナはビジネスに効く!?」「出張に必要な荷物をダイエット!」など、キャリア構築に関係のないものばかりです。
元転職エージェントの私からすると、このコンテンツだけで、初めての転職者が転職を準備することは難しいと感じます。
以前、登録した経験のある方から伺いましたが、登録時に転職マニュアルブックというのを渡していたそうです。内容を拝見しましたが、内容が薄く、市販の転職活動本を買い直すことをお勧めしてしまいました。
キャリアコンサルタントの質にバラつき
次に、ネットの口コミサイトでも評価が真っ二つに分かれていますが、キャリアコンサルタントの質に関してです。
特に、エンジニアなど専門職の方からの評価が悪い傾向があります。
人材派遣系の転職エージェントに特徴的なのですが、営業先としてコネクションを持っているのが、企業の人事止まりで、現場部門の決裁者、キーマンとコネクションが築けていないためです。
また、これも人材派遣系の転職エージェントに特徴的ですが、レスポンスがスピーディですが、それに対する返答(リプライ)もスピードを求めてきます。
じっくり考える暇がなく、何度もしつこく連絡が来るという不満をよく耳にしました。
登録者をえり好みされている
また、これも人材派遣系でノルマの厳しい転職エージェントで、前に述べたことにも関連するのですが、人によって紹介される求人の質にかなりのバラつきがみられます。
登録者には隠しているつもりでも、ネットの口コミサイトで、選り好みしていることがばれています。これが登録者の不満に直結しています。
大手総合型の転職エージェントなので、いろんな求人サイトで、パソナキャリアの登録DMを目にします。しかし、登録者にとっては、実際に登録してみると・・・というギャップが大きい会社です。
登録者をたくさん集め、求人企業も強力な営業でたくさん集め、売れる人材を効率的に売っていく。人材派遣で成功したやり方を転職エージェントでも踏襲してしまっています。
パソナキャリアの賢い利用法
このパートでは、これまでのメリット・デメリットを踏まえたうえで、パソナキャリアの賢い利用法、転職者として向いているタイプについて解説します。
「軸」になりうる転職エージェント
まず、パソナキャリアの賢い利用法は、リクルートエージェントの代わりとなる、転職エージェントの「軸」としての利用です。
これまで述べてきたように、リクルートエージェントより見劣りする部分はいくつかあります。
しかし、それは、組織やビジネスモデルとしての問題であって、あなた個人としての転職エージェントの当たり・外れとは別問題です。
あなたにとっては、リクルートエージェントは合わなかったとしても、パソナキャリアは合う、という可能性は十分にあります。
転職エージェントのセカンド・チョイスの1つとして、転職エージェントの「軸」になってもらう、大手総合型の転職エージェントの選択肢として考えて良いと思います。
年収アップにコミットして欲しい人向け
次に、パソナキャリアの賢い利用法は、年収アップを目指す転職者が、実現にコミットしてくれる転職エージェントとしての利用が考えられます。
年収アップを自らのノルマとして課している大手の転職エージェントは、他にはありませんから、年収アップを絶対の条件としたい転職者には、利用への有力な選択肢になりえるはずです。
速攻で転職を実現したい人向けの利用
前に述べたように、パソナキャリアはスピーディな対応力も特徴的なため、日程上の理由から、速攻で転職を実現したい方が、数多くの選択肢を効率的に集め、転職を実現させるための選択肢として、パソナキャリアを利用することも有効でしょう。
キャリアプランの実現を目指す女性向け
パソナキャリアは、自社のブランディング(話題作り)の一環として、女性のキャリアアップに向けた、キャリアサポートの企画等を数多く実施してきました。
これらのキャリアサポートは、転職中だけではなく、転職後にも参加できることが特徴的です。
そこで、将来の明確なキャリアプランを持つ女性が、自己実現のために、長期的な関係を築ける転職エージェントとして、パソナキャリアを利用するという選択肢が考えられます。
社会貢献を目指す人向けの利用
このほか、農業や震災復興のモノづくりの現場など、社会貢献の高い企業への転職を果たしたい人が、多様な選択肢を生み出すために活用する、ということも考えられます。
このような方が転職に成功すれば、「話題作り」になりますので、パソナにとってもメリットのある転職サポートなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
大手総合型の転職エージェントとして、主にリクルートエージェントと比べて検討してみましたが、同じタイプの転職エージェントでも、そのルーツや社風、ビジネス構造によって、サービスの質がこれほど違うのか、という点に驚かれた方もいらっしゃると思います。
やることが似ているからといって、サービスの結果がどこでも同じというわけではありません。
むしろ細かいこだわりの差が大きな結果になって現れる、というのが転職エージェントのビジネスなのです。