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近年、待遇面を中心に非正規社員の扱いが社会問題になる一方で、慢性的な人手不足から、正社員登用に積極的な企業が現れるなど、非正規社員・契約社員を取り巻く環境が変わり始めてもいます。

契約社員から正社員登用は、どれだけ現実的なのでしょうか?その実態はどうなっているのでしょうか?

今回は、正社員登用の制度の内容から、正社員登用への実態まで徹底分析し、正社員登用と転職によって正社員を目指すケースを比較して考えてみたいと思います。

契約社員の正社員登用の実態

正社員登用制度

正社員登用制度とは、契約社員やパート、アルバイトなどの非正規社員が、正社員へ契約を転換する制度のことです。

一般に、数年の勤務ののち、通常の勤務成績が優良な方が登用の対象として選ばれ、昇格試験などにパスすることによって、正社員となる制度です。

但し、この制度は、法律上義務付けられた制度ではありません。したがって、この制度を導入する、しない、制度の運用方法についても、企業の自由な裁量に任せられています。

制度がなくても、契約社員側から制度を作るように要求する権利もありません。企業の意向次第というところが、正社員登用制度のデメリットです。

労働契約法の5年無期化ルール

正社員登用制度に類似した制度ですが、労働契約法は、契約社員が反復更新されて、通算の契約期間が5年を超えたとき、労働者(契約社員)の申込みによって、契約期間が期間の定めのない契約(無期)に転換されるルールがあります。

申込みに対し、企業側は承諾したものとみなされる(拒否権はない)ため、契約社員の意思表示だけで自動的に無期契約に転換できる強力な権利です。

また、無期契約への転換後は、これまでのように、契約期間の満了によって、企業側は契約社員を雇止めができなくなる点で、契約社員の立場を強化することができます。

但し、このルールは、契約社員としての契約内容は同じまま無期になるだけで、正社員と同一の待遇になるわけではありません。前に述べたような、正社員との待遇の差は残る点に注意しましょう。

会社は「囲い込みたい人材」に声をかける

上記のように、正社員としてステップアップする方法、これに類似した方法はありますが、前に述べたように、その制度の運用は、企業側の人事政策の裁量になっています。

実態としては、正社員登用に積極的な企業も、実態としては、人手不足から、優秀な非正規雇用の社員を「囲い込みたい」ために利用している、というのが実態です。

また、前に述べたように、正社員という制度は、いったん採用した場合、法律上簡単に辞めさせることはできません。

正社員登用制度を積極的に運用している企業でも、実際に正社員になる人材を厳選せざるを得ない、というのが実情なのです。

うまく使っている企業、有名無実化している企業・・・

このように、企業側の自由な裁量で正社員登用制度が運用されているため、正社員登用の実態は、企業や業界によってまちまちである、というのが実情です。

一般に、IT業界、コールセンター、流通業界、アパレルなどでは、正社員登用制度を積極的に活用している企業が多いといわれています。

これは、もともとパートやアルバイト、外注など、様々の雇用形態で働く人が多く、人材の流動性が高い業界でした。

そのため、正社員登用制度という制度がなくても、個人的に声をかけることによって正社員に昇格する、ということが以前から行われていたところもあります。

また、経営側も安定して人材を確保することによって企業経営を安定させたい、というインセンティブが働く企業が多い、という点が特徴的です。

一方で、歴史の長い大企業系のメーカーや、大手金融機関などは、正社員登用制度がないか、あっても有名無実化している企業が多いといわれています。

これらの企業では、正社員、契約社員、派遣などの業務が厳格に区分けされ、相互の給与の落差も大きい企業が多いのが特徴的で、非正規社員の正社員登用へも消極的になりがちです。

また、正社員に学歴の高い人材を多く採用している場合、人事部サイドが、その学歴の格差を気にして、正社員の登用になかなか踏み切れない、という企業が多いという特徴もあります。

正社員登用を利用して正社員になるために知っておきたいこと

このケースのメリットは、今までその企業で築いてきた信頼や実績を正社員になっても引き継げる、という点です。

自分が慣れた職場で働き続ける点では同じなので、転職と比べて結果や実績を出しやすい、周りの協力も得やすい、という点が挙げられます。

デメリットは、これまでみてきたように正社員になれるか、どうかは、企業側の裁量に任される点、また、勤続年数が長い分、結果も早めに求められがちで、責任も最初から重くなるなどの点が挙げられます。

こうした実態を踏まえて、あなたが正社員への登用を果たすために、どのような点を見極めていけば良いのか、説明いたします。

会社としての取り組みの見極め

まず、重要な点が、会社として正社員登用に積極的な企業なのか、そうでないのか、という点です。こうした情報は、公開されていなくても、契約社員や派遣社員などの間で、社内で共有されていることが多いです。人事部に正式に照会しなくても、実態を知ることができるでしょう。

年齢、ポテンシャル

次に確認するべき点は、あなたの年齢や将来性(ポテンシャル)です。

正社員登用に積極的な企業でも、安定して長く働いてもらいたいため、正社員に登用する人材を若手が中心になる傾向が多くあります。

あなた自身にとっても、正社員にただなるだけではなく、その会社で将来を築いていけるのかどうか、という見きわめが必要になるでしょう。

仕事の実績

そして、一番重要な点は、あなたを正社員として採用したい、活躍してもらうにふさわしい、と会社に認めさせることです。

そのためには、普段から、正社員と同じような目線、高い意識で会社の仕事に取り組んでいる必要がありますし、その活躍をPRすることも、時には必要になってくるでしょう。

契約上の問題

そして、正社員に登用される際に、チェックしておきたい問題は、正社員になることで給与や手当、有給休暇などがどのように取り扱われるのか、という問題です。

一般的に、基本給や職能給という月額の給与のベースは上がり、賞与も増えますが、残業手当は、基本給に残業時間○○時間分含まれるなど、反対に不利になる傾向があります。また、有給休暇などは、そのまま引き継がれるケースが多いでしょう。

転職で契約社員から正社員を目指すときに知っておきたいこと

このケースのメリットは、企業側の裁量で、いつ正社員になれるか分からないという不安定さを回避して、自分から積極的に、より着実に正社員になるチャンスを作り出せる、という点にあります。

デメリットは、正社員による転職が必ず成功するわけではないこと、成功したとしても新しい職場で一から実績を作っていかなければならない大変さがある、などの点が挙げられます。

ここでは、転職活動でチャンスを求める場合に、注意するべき点を説明します。

自分で直接探す場合

まず、自分で直接探す場合、ハローワークなどの公的機関や、一般的な転職サイトを利用する例が多いと思います。

直接応募が可能な分、チャンスは幅広くありますが、一般に、職歴が契約社員の場合、正社員より低く評価される傾向がります。

応募書類をしっかり作り込み、面接の場でも、正社員に負けない実績と自己PRを、自分の力でやっていかなくてはいけません。

転職エージェントを利用する場合

この場合、転職エージェントと十分に打ち合わせし、応募書類をすり合わせることによって、自分一人で転職活動を進めるより、強力な、正社員に負けない実績をPRすること可能になる、というメリットがあります。

一方、企業側は、「正社員の転職者」を求める傾向があり、前職が契約社員で会った方にもチャンスを与えるという企業が多くありません。

そのため、転職エージェントから紹介される求人も、正社員に比べて少なくなる傾向がある、という点は覚悟しましょう。

まとめ

契約社員から正社員へのステップアップは、多様な選択肢があるものの、その内容が流動的で不透明な点が多々あります。

ただ、成功すれば、自分のキャリアアップになるだけではなく、安定した働く環境を手に入れられるという大きなメリットがあります。

選択肢は1つではありません。いろんな選択肢を検討して、頑張って、正社員へのステップアップを果たしていただきたいと思います。