近年、「みなし残業」という言葉をよく耳にします。

求人の給料欄に「みなし残業40時間分」などと書かれていることもあり、「これは何だろう」と疑問に思う方は大勢おられることでしょう。新たに、職場でみなし残業を取り入れたというところもまた、多いことと存じます。

そうなれば、みなし残業について、知らないままではいられない……。

もしかしたら、不当に労働力を搾取されているかもしれません。多くの方が、しっかりと残業代を受け取ることができるよう、みなし残業について簡単に解説します。

みなし残業とは?

みなし残業とは、その名前のとおり、「残業時間を○○時間とみなす」制度のことです。実際どれだけ残業したかでなく、みなし時間分の残業代が支払われることになります。

事業所外労働とは?

みなし残業は、「事業所外労働」や「裁量労働」という呼び方をすることがあります。

事業所外労働というのは、営業職などの事業所の外で行う業務のことです。事業所の外で行われる仕事は、労働時間の管理が困難です。そこで、事業所外労働に関して「○○時間労働しているとみなす」と、みなし労働制を採用することがあります。

裁量労働とは?

専門職などは、業務の都合上、仕事の時間配分を労働者の「裁量」に委ねることがあります。

労働者が自分たちの裁量で仕事をするため、会社側は労働時間の管理が困難です。そこで「これだけ労働しているとみなす」と、みなし労働制を導入しています。

事業所外労働も、裁量労働も、「みなし労働時間性」の位置づけのひとつに過ぎません。導入するための理由に基づいた呼び名だと考えると、わかりやすいのではないでしょうか。

従業員へ知らせる義務がある

みなし残業を導入していることは、従業員に対して明確に知らせなければなりません。

口頭だけでなく、「就業規則」の書面に明記する必要があるのです。明確な時間や、金額が書かれていなければ、みなし残業は無効となります。

自分の会社の制度に疑問を抱いたらすぐ、就業規則にそれらが明記されているかを確かめましょう。

みなし残業はブラック企業の特徴なのか?

みなし残業というと、ブラック企業のイメージでしょうか。

実際にブラック企業と呼ばれる会社が、みなし残業を採用することもあります。だからと言って、みなし残業を導入する会社全てがブラック企業、というわけではありません。

みなし残業に違法性が見られる場合、ブラック企業と言えます。違法性が見られない場合、ブラック企業だと一概には言えないでしょう。どのようなみなし残業がブラック企業なのか……これからじっくりと見ていきます。

みなし残業時間と、賃金の関係・上限について

みなし残業の残業時間に上限はあるの?

予め設定する残業時間に、明確な上限はありません。残業代の金額や、地域の最低賃金によって上限が変わります。

残業代を時給換算し、最低賃金以上の金額でなければいけません。

また、上限を月々45時間以内に設定しなければ、労働基準法違反の疑いが出てきます。36協定では「月45時間が基本的な上限」と定められているので、それが実質的な上限となっているのです。

最低賃金を下回っていないかどうか、計算してみよう

東京都の会社で、30時間の残業を「みなし残業」として設定したとしましょう。東京都の最低賃金は932円(2016年12月現在)です。残業代は最低でも3万4,950円でなければなりません。

この計算式は、「932円×1.25×30日=34,950円」です。

「932×1.25」で、時間外労働の割増賃金の計算をしています。そこに残業時間を乗算すれば、その時間分の最低賃金になるのです。

残業代が少ない・足りないと感じたら、計算してみることをおすすめします。

休日出勤はどうなる?

休日出勤は、週に1日であれば「みなし残業時間」に含めるのが基本です。

たとえば、月30時間のみなし残業を採用している会社で、休日出勤をしたとします。この会社は、休日出勤での休日労働時間を残業時間に含めて計算し、追加の手当を出すかどうかを判断するのです。

休日労働時間と時間外労働時間含め、30時間に到達しませんでした。固定残業代は支払いますが、休日出勤の手当はありません。それは何故なのでしょうか。

法定外休日に休日出勤した場合、その時間を「残業時間」だと考えることができます。法定外休日は、法律上「休日」ではないためです。

法定休日とは、「毎週1日」の休日を指します。

休日労働時間」として、追加で休日出勤手当を支払わなければならないのは、1週間に休みが1日もなかった場合です。その1日分だけを休日労働時間とし、もう1日は残業時間とします。

残業しなかったなら、どうなる?

みなし残業40時間と設定していましたが、結局残業しなかったということもありましょう。この場合でも、残業代を支払うことになります。「結果残業しなかったんだから」と、みなし残業代を支払わない会社には、問題があると考えられるのです。

「固定残業代」というのは、設定時間に達しなくてもその金額を保障するというもの。当然、残業無しの月でも支払わなければなりません。

みなし残業は良いことなのか? デメリットもある?

あらかじめ労働時間を設定して、それだけの残業代を渡すみなし残業……。考え方によっては、メリットがあるように見えますが、メリットとデメリット、どちらが大きいのでしょうか。簡単に考えてみましょう。

残業時間が「みなし残業時間」より少ないなら、メリットがある

あらかじめ決められた残業時間よりも、実際の残業時間が短い場合、みなし残業のメリットは明らかです。その差分の残業代を、実際は働いていないのに受け取ることができます。

みなし残業はギャンブル? 明らかなデメリットとは

決められた残業時間より、実際の残業時間が短ければメリット。反対に、実際の残業時間の方が長ければ、デメリットとなる場合があるのです。

ここで、「残業時間が超過すれば、どうなるのか」という疑問が生まれます。

残業時間が超過すれば、超過した分の残業代を別途で支払う必要があります。労働者は、それを受け取る権利があるのです。

しかし、「超過分は支払われない」という会社があります。この場合、みなし残業に明らかなデメリットが生じるのがわかるでしょう。短ければ得をし、長ければ損をする。最初にかけ金を決めるギャンブルのようです。

みなし残業は、会社側に都合の良い制度

みなし残業というのは、そもそも労働者に都合の良い制度ではありません。

「みなし残業とは?」の項目で説明した内容でも、それがわかります。

裁量労働制は、労働時間が不安定になりがちな職場で、「○○時間働いたとみなす」ことで、労働時間を管理しやすくする制度です。事業所外みなし労働制は、外回りをしていて管理できないから「○○時間働いたとみなす」に過ぎません。

みなし残業制というのは、「管理を楽にするため」という会社側の都合から始まった制度だということがわかります。

「管理を楽にするため」導入しているのであれば、まだマシです。

超過分を支払わないような会社は、「あわよくば残業代を減らしたい」という目的で、みなし残業を導入します。この場合は残業代の未払いが発生するため、明らかな違法です。

みなし残業が違法となるのは、どんな場合?

みなし残業を導入している会社の多くは、実は違法です。どのような場合は違法になるのか、転職活動で失敗しないために、自分の会社がブラック企業かどうかを判断するために、知りましょう。

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残業代を払わない口実として「みなし残業」を取り入れた場合

残業代を減らしたいがため、残業代を払わない口実として「みなし残業」を採用した場合、違法性があります。あらかじめ残業時間と残業代を固定しているからといって、未払いは許されないのです。

みなし残業代が、最低賃金を下回る場合

みなし残業で支払われる残業代が、最低賃金を下回れば違法です。

これは「みなし残業代の上限」でも説明したとおり、計算してみれば違法かどうかがわかります。最低賃金未満で労働力を使ってはいけないということは、労使関係の基本です。

時間と金額が明記されていない場合

「従業員へ知らせる義務がある」ということは、知らせなければ違法になるということです。口頭ではなく、就業規則で明記されていなければ違法になります。時間と金額の内訳も、明記しなければなりません。

固定残業代が周知されていない場合

そもそも「みなし残業制を導入している事実」すら知らせていない場合、明らかに違法です。残業代が一律で、就業規則に特に記載の無い場合、知らず知らずのうちにみなし残業が導入されている可能性があります。

固定残業代が一定時間を達してから支払われる場合

あらかじめ設定した時間を達しなければ、残業代を支払わないという会社があります。設定時間45時間で、実際の残業時間が44.5時間の場合……その44.5時間分も支払われません。

これは明らかな残業代の未払いになり、違法です。

みなし残業を超過した分の残業代が支払われない場合

みなし残業を超過した分の残業代が支払われない場合、違法になります。

つまりは、「残業代の未払いが発生した場合」、「就業規則に記載の無い場合」、「最低賃金未満の場合」に違法になるということです。

みなし残業が多い業界・職種は?

残業時間が多い業界・職種で、みなし残業を採用することが多いです。

残業が多い業界とは何か……。クライアントから仕事を貰って業務を行う、受注産業の会社は残業が多い傾向があります。電通などIT企業の多くが、そうですね。

労働時間を把握し難い専門職でも、みなし残業を採用する職場が多い傾向があります。

ただ、最近では上記のような企業以外でも、多くの職場でみなし残業が採用されています。「多い業界」というのは、あくまでも指標です。求人をしっかり確認するようにしましょう。

求人で「裁量労働制」「みなし残業」を見つけたら要注意!

「みなし残業」という文字を求人で見かければ、警戒することをおすすめします。幅広い業界・職種で採用されているため、「俺・私はないでしょう」という考えは通用しません。一種の詐欺のように、警戒しましょう。

曖昧な書き方をする求人が多いので、注意しよう

「みなし残業」を謳っている求人の多くが、曖昧な記載をしています。求人には月給欄がありますが、その月給の内訳が書かれていなければ、アウトです。

「月給:25万円」と月給だけ記載している場合、「月給:25万円(内固定残業代5万円)」と残業代も記載している場合、両方とも違法と言えます。こういった記載をしている時点で、違法求人を掲載するブラック企業です。求人を閉じましょう。

違法性の無い求人は、「月給:25万円(固定残業時間30時間、残業代5万円)」というものだけです。

この場合は残業時間・残業代・総合の月給いずれも記載されており、残業代が最低賃金を下回っていません。求人として記載すべき事項は、全て記載されています。

みなし残業だとわかった時点で、候補から除外するのも手段のひとつ

違法みなし残業という地雷を踏まないためには、その会社が「みなし残業を採用している」と判明した時点で、候補から除外する必要があります。これが最も確実であり、これ以外に確実に地雷を避ける方法はありません。

求人を検討する手段のひとつとして、念頭に置いておきましょう。

まとめ

現在働いている職場で、違法性の見られる「みなし残業制度」を導入しているようなら、転職を考えましょう。このまま搾取されていては、心身の健康に害を及ぼしてしまいかねません。

自分のために、自分のことを大切だと感じてくれている全ての人のために、転職は良い選択肢となりましょう。

現在転職活動をしている・これから転職活動をするなら、「みなし残業」を導入する企業に注意を払うことをおすすめします。出来るのであれば、みなし残業自体を避けるのが、最も安全です。