[PR]
派遣社員として働いている方は、いつ仕事がなくなるかもわからないという漠然とした不安を抱えながら日々を過ごしているのではないでしょうか?
後々の仕事が約束されているわけではなく、あくまでも身分としては非正規雇用ということになります。
給与にしても時給制が大部分となっていて生活の保障はなく、正社員として働いている人とは賃金の格差が開いていく一方。
この記事ではデータなども見ながら派遣社員の実態がどのようなものであるのか、正社員との差がどこで生まれるのかを探っていきましょう。
派遣社員をめぐる状況の変化
内閣府男女共同参画局の「男女共同参画白書平成25年版」では、「労働者派遣事業所の派遣社員数の推移(男女別)」が示されています。
「ハケン」という働き方に対する注目が高まってきた2002年頃から、派遣社員の数は増加していました。
それが2008年をピークとしていったん減少する傾向に転じ、一般社団法人日本人材派遣協会がまとめているデータでは2013年に再び増加してから横ばいとなっていることがわかります。
近年は、非正規雇用者として働いている人の内訳においてパートや契約社員の割合が高まっている状況。リーマンショック以降は人材派遣会社の数も横ばいであり、市場規模は落ち着いているところです。
新しい働き方として脚光を浴びていた派遣社員ですが、どこが変化しているのでしょうか?
日雇い派遣への対応
歓迎されていた日雇い派遣
派遣社員市場が盛り上がっていた一因として、「日雇い派遣」の盛況を無視することはできません。人材派遣分野では1999年に規制緩和が行われ、派遣先となる企業の業種が原則として制限されないことになりました。
そこで、物流の分野など忙しいときにだけ多くの人手を確保したいという企業からのニーズが爆発的に増すことに。
ちょっとスケジュールが空いている1日だけ働くことができるというように、日雇い派遣は派遣社員の側にとってもスポット的な人材を求めている派遣元企業にとってもメリットの大きい派遣形態だったのです。
一時期は、人材派遣会社にスタッフ登録し仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣労働者」の大部分が1日単位で派遣就業していたほど。
日雇い派遣が選ばれていたおもな理由は、以下のようなものです。
- 仕事をする日付や時間を自分で選ぶことができる
- 収入が不足しているとき副業的に補うことができる
- 就職を考えていてそれまでの一時的な収入源となる職業にすることができる
日雇い派遣の原則禁止
日雇い派遣労働者の中には、正社員として働きたいという希望を持っていながら就職することが叶わないためにやむを得ず日銭を稼いでいるという人が少なからずいました。
そのような人たちは、いつも明日の仕事があるかどうかわからない状況の中にあったわけです。雇用としてはこの上なく不安定なものであり、いわゆる「派遣切り」が社会的な問題としてクローズアップされた際に注目されることに。
本来、労働者が働くにあたって企業には就業しやすい職場環境を整えることが求められます。雇用形態が複雑なものとなっている派遣社員に関しても例外ではなく、人材派遣会社や派遣先企業に管理責任がありその配慮をすべき。
日雇い派遣に関しては管理責任が果たされていないものであるということで、2012年の労働者派遣法改正によって原則禁止されることとなったのでした。
「日雇い禁止」に対する不満の声
2012年に株式会社ビー・スタイルが実施したアンケート調査の結果によると、日雇い派遣の原則禁止に反対するとした回答が過半数に達していました。
収入を確保する手段として便利な働き方だったこともあり、さまざまな状況にある人の事情を鑑みていないとする不満が多かったのです。
同じような働き方をするためにはアルバイト、パートを選択しなければならないことになりました。登録型派遣であれば、人材派遣会社にスタッフ登録さえしておけば仕事を紹介されていました。
その手軽さに対して、アルバイトですとその都度単発の仕事を探して面接を受けてという手間が必要であることからの反発もあったと考えられます。
派遣法の改正
人材派遣をめぐっては派遣社員として働く人たちを守るために労働者派遣法、正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」が1986年から施行されています。
各業界による人材へのニーズ、また社会情勢の変化によっても業界の構造が変化していくために度重なる法改正が行われてきました。
2015年に行われた改正では、派遣という働き方の原則が臨時的・一時的なものであると示されました。つまり、派遣社員は一生のものとして続けていくべきではない働き方であることが公にされたと解釈されます。
派遣社員の不安が大きい理由
独立行政法人労働政策研究・研修機構では、「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査(派遣労働者調査)」を実施しています。
それによると、派遣社員になった理由としてもっとも多かった回答は正社員としての就業を望みつつ仕事が見つからなかったというものでした。
できるだけ早く派遣社員を辞めたいという希望も、実に79.5%という高い割合に及んでいます。社会の中で雇用に対する不安が増すほど、派遣社員という立場に不安を覚え正社員としての就職を希望する傾向は強まっています。
それだけでなく、より具体的に日々の仕事を行う中でも不安につながる要素はいろいろとあるのです。
常に存在する契約期間
派遣契約に必須の派遣期間
派遣社員が派遣されるにあたっては、必ず労働者派遣契約の必須項目として派遣期間が明示されています。
短期間の派遣契約であればもちろん、ある程度の長期にわたる就業が想定されていても期間は区切られています。
派遣期間の満了時期が近づいてくると、派遣社員は契約が更新されるのかどうなのかという不安に苛まれるのです。
なくなった例外
従来から、派遣法施行令が定めていて専門性が高い「政令で定める26業務」を除く業務に就く派遣社員は最長3年までしか同じ仕事をすることができないとされていました。
しかしながら、業務によって派遣期間に関する制限が違うとなってはわかりにくいという話に。そこで、2015年に行われた労働者派遣法の改正で期間制限に関する見直しがなされたのです。
26業務は廃止され、有期プロジェクトや産前産後休業などを取得中の社員の代わりに派遣就業する場合を除いてはすべて最長3年という派遣期間の上限が定められました。
スキルアップ・キャリアアップが実感されない
スキルアップの問題
派遣社員として一定期間にわたって働いている人からは、スキルアップすることができていないという声が少なからず聞かれています。
これは派遣先企業の方針次第というところもあるのですが、派遣社員の仕事にある程度の自由裁量が認められていればスキルを磨くチャンスはあるでしょう。
ですが、大概は労働者派遣契約に定められている以外の業務にたずさわることが認められていません。決められた単純作業だけを任され、自分を大きく成長させるような難しい仕事をする機会がないとスキルアップを実感することは難しいのです。
ビジネススキルが向上していない状況の中で年齢ばかり重ねていくとなっては、将来への不安が増していくばかりとなります。
キャリアアップの問題
派遣社員として働いてきた経験については、その後の転職を考えるにあたって経歴として認められるか否かが難しいところです。
職歴として履歴書に記載することはできるのですが、それに対する評価は応募先の企業が派遣社員に対して抱いているイメージなどにも左右されます。
つまり、その企業が派遣社員を使って雑務しかさせていなければその程度のキャリアであると判断されかねないのです。
派遣の経歴を武器にしてあらたな職を見つけるというようなキャリアアップを果たすことができるかというと、実感されにくいかもしれません。
年代別・派遣社員の現実
雇用政策研究会報告書の「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム」によると、正社員の賃金が年齢とともに上昇していくことに対し派遣社員についてはずっと横ばいという状態が続いています。
すなわち、より多くの収入が必要とされる高年齢となっていくにつれて派遣社員でいると金銭的に厳しくなっていくと考えられるのです。
より細かい年齢別に、派遣社員を続けていることによって直面する現実を紹介していきましょう。
20代派遣社員の真実
まだ若く、さまざまな将来を考えることのできる20代のうちは多様な働き方のひとつとして派遣社員を選択する人が多くいます。
仕事をする上での条件は自分で決めることができ、決められた派遣期間の中でいろいろな業種や職種を経験することができます。
ただ、若い労働力が歓迎されていることから人材派遣会社の都合に合わせて使われやすい一面も。若年層であまり強く意見することができないということから、あまり希望者がいない派遣先を紹介されるなどの傾向が見られています。
- 派遣社員ならではというエピソードはありますか?
-
- 仕事が途切れたとき、家賃の支払いが一気に厳しくなりました。
- クレジットカードを作ろうとしても、なかなか審査に通りません。
- 結婚を考えている相手の両親が、職業として認めてくれません。
30代派遣社員の真実
30代になると、派遣社員としてはかなり高いレベルのスキルを持っていないと就業先が少なくなってきます。
一般的に社会人となって長く社会経験を重ねた年齢層であり、自分なりの仕事のやり方が確立されていることで派遣先企業にしては20代の派遣社員と比べて使いにくいところがあるのです。
希望している就業条件に適っている派遣先を見つけることは、かなり難しくなってくるでしょう。
- 派遣社員ならではというエピソードはありますか?
-
- 全然時給が上がらないので、将来的なビジョンを固めることができません。
- 貯金が増えず、全然引っ越しすることができません。
- 余裕がないので遊びの誘いは断り、休日には自宅でボーッとして過ごしています。
40代派遣社員の真実
労働者派遣法では、派遣先企業が希望する派遣社員の年齢について制限することを禁じています。
ですが、現実としてその規定は「建前」になっている感があり40代で派遣の仕事に就くことは簡単ではありません。
紹介を受けにくくなるだけでなく、そもそも人材派遣会社へのスタッフ登録自体を断られてしまうという事例までが見受けられています。
- 派遣社員ならではというエピソードはありますか?
-
- 派遣社員をしていると周囲に話すと、見下されるような視線で見られます。
- きっと肩身が狭いので、同窓会などには参加していません。
- これから就職活動をする気力も湧かず、諦めのような気分になっています。
早期に正社員を目指すメリット
派遣社員を続けることによって将来の道が拓かれるかどうかというと、あまり希望的な観測を持つことはできないでしょう。
そういったことを考えると、できるだけ早いタイミングで正社員への道を目指すことがおすすめです。
やはり、若いうちに就職活動を行うことでポテンシャルなどが評価されて採用へつながる可能性は高くなります。
早期に派遣社員から正社員へと身分が変わると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
身分の安定
たとえば経営難によってスタッフを減らさなければならないという場合、企業にとっては「部外者」となる派遣社員が真っ先に契約を打ち切られるもの。
正社員として雇用されればやはり身分が安定し、企業としては第一に守るべき対象ということになります。
また、早い段階で正社員として就職するほど職場の人材育成制度を大いに活用することが可能。手厚い教育を受けることによって、ビジネスに必要な多くのことを学ぶチャンスが得られるのです。
収入面の期待
正社員と派遣社員を収入面で比較すると、純粋な給料の部分を時給に換算した金額では特に若年層で派遣社員が上回っています。
とは言ってもほとんどの場合、派遣社員はボーナスの支給対象や有給休暇の取得対象となっていません。また、正社員として勤続いれば段階的に昇給していきますが派遣社員にはあまりありません。
その幅を考えても、収入を総合的に考えるとやはり早いうちから正社員として働くことによって大きな期待を持つことができます。
まとめ
派遣社員としてずっと働いていくことは、将来的には自分の状況を厳しくしていくことに結びつくかもしれません。
人材派遣というしくみ自体、元々企業が社員の「穴」を埋めるために確立されたシステムです。その立場で一生を過ごしていくには無理があると考えることが、自然であるということもできるでしょう。
派遣社員をしていて生活が充実しているということであれば良いのですが、不安を感じるのであれば正社員として就職することを目指しましょう!