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今回は、人材サービス業界では老舗の企業同士ですが、対照的な企業の比較です。求人広告業界で長く地位を築いてきたが、近年、転職エージェント事業に進出したマイナビエージェントと、転職エージェント業界で長く実績を築いてきたJACリクルートメントとの比較です。

当然、成り立ちが違えば、ビジネス構造も違います。その違いがターゲットとなる転職者や求人紹介企業、サービスの質の差となって表れるのです。

今回も、元業界人、元キャリアアドバイザーの立場から、両社を5つのポイントで比較します。

その違いを比較することによって、転職エージェントの賢い利用法を探っていくことにしましょう。この記事を通して、ぜひ、あなたに合った利用方法を考えてみてください。

マイナビエージェントとJACリクルートメントの求人数を比較

調査したところによれば、マイナビエージェントは、非公開求人が約2万3千社あります。これに対し、HPによれば、JACリクルートメントは、約2万5千社の取引先があるとしています。

いずれもリクルートエージェントなどの大手総合型のトップクラスの転職エージェントと比較すると、見劣りする数字に思えなくはありません。

しかし、転職市場は裾野が広く、大手3社で転職紹介の決定率は、全体の10%程度だと見られています。残りの90%は、大手3社以外で決まっているのです。そうした点で、マイナビエージェントやJACリクルートメントを他の大手総合型の転職エージェントと並行活用するメリットは十分あると見て良いでしょう。

また、マイナビエージェントは、長年の求人広告の実績から、JACリクルートメントは、老舗の転職エージェントとして、他の大手総合型の転職エージェントとは異なる独自のコネクションを築いています。他の転職エージェントにはない「お宝求人」が埋もれている可能性は十分にあるでしょう。

マイナビエージェントとJACリクルートメントの求人の質を比較

マイナビエージェントとJACリクルートメントとの大きな違いの1つが、求人の質です。

もともと、求人広告業から事業を発展させてきたマイナビエージェントは、多様な企業とのパイプが特徴的です。そのため、企業レベルでは大手より中堅企業以下の求人開拓に強みを持っています。業界の裾野も幅広く、ITなど求人が多い業界だけではなく、素材・化学メーカー、医薬など求人紹介が多くない案件も取扱いがあります。紹介職種も営業、事務、エンジニアなど幅広い紹介先を持っています。また、若年層の転職紹介に強く、20代~30代前半が求人案件の主体です。

これに対し、老舗の転職エージェントとして独自のコネクションと実績を積み上げてきたJACリクルートメント。企業レベルでは、大手企業の求人開拓に強みを持って一ます。業界の裾野もマイナビエージェント同様広いのですが、海外にネットワークを持ち、外資系に強みを持っているのが特徴的です。紹介職種のレベルが部長クラスなどのミドル層以上の案件が多いことも特徴的です。従って、転職者の紹介主体が30代半ば~40代のマネージャークラスの転職者に強みを持っています。

こうしてみると、マイナビエージェントとJACリクルートメントの紹介求人の質が好対照になっていることに気付きますよね。

マイナビエージェントとJACリクルートメントのサポート体制を比較

サポート体制の面ではどうでしょうか。この点では、両社ともあまり力が入っていない印象を受けます。

マイナビエージェントは、もともと求人広告業から出発した事は前にも書きましたが、現在でも、求人広告、人材派遣、他社の転職エージェントの紹介サイトなど、多様な人材サービス業を展開しています。しかし、履歴書作成や面接対策などの転職者へのサポート、コンテンツサービスが弱いです。

転職エージェントにとっては、転職者の満足度は上がるものの、コストがかかって売上に直結しない部分です。力を入れられるのは経営的に余裕がある転職エージェントですが、売上面で大手総合型のトップクラスに水をあけられているマイナビエージェントは、それほど力を入れていません。

一方、ある意味マイナビエージェント以上に、転職ノウハウのコンテンツサービス力が入っていないのがJACリクルートメントです。もともと独立系の転職エージェントとして発展してきた同社。独立系とは、マイナビエージェントとは対照的に、人材サービスを多角化せず、転職エージェント一本で勝負してきた企業です。こうしたプロフェッショナルファームでは、高収益の転職案件にフォーカスして紹介するのが一般的で、前のパートで述べたように、紹介案件の中心が、外資系であったり、役員クラスの紹介であったりするのには理由があります。高収益のプロフェッショナルファームを維持するには、やはり、コストがかかる転職サポートにはコストをかけづらいという事情があります。

また、こうしたプロフェッショナルファームの門を叩く人材は、基本的に優秀で「自分で何でもできる人材」が多いです。そのため、コストをかける必要性が低いということも影響しているでしょう。

マイナビエージェントとJACリクルートメントのキャリアアドバイザーの質を比較

マイナビエージェントとJACリクルートメントのキャリアアドバイザーは、良い意味で好対照な性格があります。

まず、マイナビエージェントのキャリアアドバイザーは、良い意味で、親切・親身にキャリアカウンセリングをしてくれる、という評価が高いです。これは、転職エージェント以外にも人材サービス業を多角化している影響があると考えられます。独立系の転職エージェントと違い、経営的に転職エージェントに寄りかからなくて良いという余裕が、DODAなどと違い、短期的な目標、売上(紹介手数料)を無暗に追わない、じっくりと転職者のペースに任せたキャリアサポートを実現している背景です。また、営業戦略的にも、大手総合型のトップクラスの転職エージェントに大きく水をあけられているマイナビエージェントが、他社と差別化する戦略として、丁寧なマン・ツー・マン型のキャリアカウンセリングに力を入れているということも考えられます。

これに対し、プロフェッショナルファームとしての地位を業界内でも確立しているJACリクルートメントのキャリアアドバイザーは、良い意味で「プロフェッショナル」です。ロジカルで目的思考型。優秀な転職人材には、「話が早い」キャリアアドバイザーです。親身・親切とはちょっと違う、「頼りになる」アドバイザーとしての評価が高いです。これは、もともとの取り扱っている転職案件が、高収益である外資系・役員クラスなどのハイキャリアな案件が多いことが影響しているとみられます。反面、親切・親身さを求めるタイプの方には、気後れするキャリアアドバイザーが多いかもしれません。

マイナビエージェントとJACリクルートメントの利用のしやすさを比較

比較の最後に触れておきたい点が、両社どちらが利用しやすいか、という点です。この点では、対象となる転職者によって異なります。

まず、あなたが20代~30代の転職者で、転職にあまり慣れていない、幅広い業界を探したいというタイプならば、利用しやすいのは、マイナビエージェントでしょう。転職案件の中心も、あなたの年代に合わせたものが多く、マン・ツー・マン型で、親身・親切なキャリアサポートが受けられる点も魅力的です。大手にあまり強くないというのが難点ですが、優良な中堅企業の案件を数多く取り揃えています。業界・職種の裾野も幅広いので、多様なニーズに対応できることも強みです。

これに対し、あなたがご自身の経歴・キャリアに自信があり、専門職・キャリア志向で、年齢も30代後半以上であるならば、JACリクルートメントの門を叩いてみることをおすすめしたいです。何度も書いていますが、プロフェッショナルな案件に強く、大手企業の案件も多いです。キャリアアドバイザーの質も高く、転職のパートナーとして、一緒に「転職というプロジェクト」を進めるには、頼りになる存在になってくれるでしょう。

最後に

マイナビエージェントとJACリクルートメントは、同じ大手総合型の転職エージェントですが、その成り立ちの違いから、興味深い対比が見えてきましたよね。

このブログで何度も強調していますが、転職エージェントは慎重に選びましょう。その際に基準になるのが、本記事でも強調していますが、転職エージェントのビジネス構造の比較です。ビジネス構造の事情が、転職のターゲット、求人の質、サポート体制や、キャリアアドバイザーの姿勢にまで、様々な影響を及ぼし、それがいわば「社風」となっているわけです。

転職エージェントの選び方1つで、あなたのキャリアが大きく変わります。ぜひ、成功につながるパートナー(転職エージェント)と出会えることをお祈りしています。