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転職エージェントは、求人企業に転職者を紹介し、入社に成功した場合に報酬として紹介手数料を取るというビジネスです。

成功すれば100万円単位で収入が入る一方、成功しなければ全てが水の泡、転職者にかけたコストが全て持ち出しになってしまいます。

ハイリスク・ハイリターンで、かつシンプルなビジネス構造なのです。

転職者も人生がかかっていますが、転職エージェントも生活がかかっています。

それゆえ、転職者に明かしきれない、様々な裏事情が生じてくるわけです。

この裏事情を知っているか、知っていないかで、転職エージェントの見方が大きく違ってきます。

これから説明することは、ただの私見ではなく、転職エージェントならどこでも、一般的にみられる裏事情ですので、覚えておくと有益になると思います。

転職エージェントの2大裏事情

転職エージェントは、転職者の行きたい企業を紹介するのではなく、売り込める企業を紹介する

転職エージェントは転職者を紹介する完全成功報酬型のビジネスで、しかも売上は転職者が転職に成功した時の1回しか発生しません。

従って、このビジネスを継続させるには、次のような条件が必要です。

① 企業から安定的に継続して求人を掲載してもらう必要がある。
② ①にマッチングする人材を安定的に継続して集める必要がある。
③ 一定数の転職者が安定的かつ継続的に、自社を通じて転職に成功してもらう必要がある。

①~③の条件が成立するには、転職者に合わせて希望する求人先を揃える、というのは非効率的で非現実的です。

したがって、転職者を売り込める求人企業を紹介する、というのが、ほぼ全ての転職エージェントに共有されている発想でしょう。

もちろん、最終的には転職者の意思次第ですから、転職エージェントは、売り込みたい企業と、転職者が行きたい企業が一致させるように努力する必要が出てきます。

そうした点では、両者は大きく重なる部分があります。

しかし、大事なのは、完全に一致しているわけではない、ということです。

時に転職エージェントが転職者に対し、「もっと視野を広げて転職先を探してみませんか」と勧める理由には、転職者のためになるということと同時に、売り込みやすい転職先を増やしたい、という裏事情も少なからず働いているのです。

転職エージェントが最優先するのは求人企業

とすると、転職エージェントはいったい誰のために動いているのでしょうか?

究極的には求人企業のために動いている、という言い方が正しいと思います。

転職者には、「あなたの人生の転機にプロのサービスを提供します」とうたっておきながら、求人企業向けのページでは、「御社の人事部の片腕として、人事戦略をバックアップいたします」などと宣伝しています。

つまり、双方に良い顔をしているわけなのですが、何度も書いているように、お金がもらえるのは求人企業からですから、求人企業と転職者の間で利害の対立が生じた場合、「カドが立たない程度に」求人企業側に立って転職者を説得する場面が多くなります。

例えば、年収交渉など、転職者がもっと年収が欲しい場合でも、必ずしも転職エージェントが味方になってくれるとは限りません。

年収が上がれば、その分だけ転職エージェントの手数料も増えますが、年収交渉がこじれて入社に至らなければ売上はゼロです。

こうした時に、転職エージェントから、年収交渉を断念されるよう、転職者が説得されるという場面が出てきます。

上記2つの裏事情をまとめると、転職エージェントにとって都合の良い転職者は、シンプルにいうと、「効率的に求人企業に売り込みやすく、素直にアドバイスに従ってくれる人」です。

効率的とは、転職者の職歴が綺麗で、売り込みやすい求人企業の候補が多いことを意味します。

求人企業との利害が対立した時にも、アドバイスという形で素直に聞いてくれる転職者が都合が良いのです。

【それでも、転職エージェントを使わないのは損!!】裏側を理解したうえで賢く使いこなそう

ここまでいろいろと書いてきましたが、転職者は転職エージェントの言いなりにならなければ、良いサービスを受けられない、というわけではありません。

転職エージェントというビジネスは、求人企業のための転職者の紹介というビジネスである一方、転職者の協力が得られなければ絶対に成功しない、という性質を持っています。

不思議なことですが、転職エージェントのパートナーは、結局のところ転職者であるあなたなのです。

転職者の皆さんに押さえていただきたいポイントは、所詮、転職エージェントは、転職というビジネスのパートナーに過ぎないのですから、ビジネス上の利害が一致する範囲で付き合えば良いのです。

転職エージェントが紹介する求人のすべてがあなたにとって最良の求人であるとは限りません。

転職エージェントが最良と思われる(その候補になりうる)転職先を紹介してくれる場合に限って、お互いの利害が一致するわけですから、必要な協力をし合えば良いのです。

賢い使い方① ビジネスとして協力し合う

転職エージェントは、転職先から紹介手数料をもらうビジネスです。

しかし、不思議なことに、このビジネスに協力を得なければならない相手は転職者です。

換言すると、求人企業への入社を成功させるために、転職者と転職エージェントが共同して進めるプロジェクトなのです。

このプロジェクトを成功させるためのいわばパートナーとして、お互いが協力し合うのは当然です。

日本では、転職エージェントがいろいろとお膳立てをしてくれるので錯覚しがちですが、転職者は決して「お客様」ではありません。

こちらも、転職エージェントが提供してくれたサービスに見合う協力を提供する必要があります。

大半は、面接日時を守るといった当たり前のことですが、求人企業について他の転職エージェントを通して二重にアプローチしない、守秘義務を守るといったことも含まれます。

登録時に転職エージェントから詳しく説明されるので、十分に確認しましょう。

賢い使い方② お互いの信頼関係を大切にする

転職エージェントから提供されるサービスをあなたは無料で利用できます。しかし、これはボランティアではありません。

私が某・転職エージェントで働いていたときに、「職務経歴書はそもそもどう書けば良いのか」といった丸投げ的な相談や、仕事と関係のない人間関係の相談を受けたことがあります。

正直、「おいおいこの人大丈夫か?」と思いました。もちろん、当たり障りなく対応しましたが、そういう人は連絡がとれなくなったり、不採用になったりあまり良い印象がありません。

私の経験上、転職活動というビジネスに関係のない相談は慎むのが良いと思います。

また、転職エージェントに登録して転職活動をしているにもかかわらず、横柄な態度をとったり電話を無視するといったことをして、転職エージェントとの関係を悪くしてしまう人がいます。

転職活動が転職エージェントとの共同プロジェクトである以上、転職者も良い転職者である必要があります。

良い転職者とは、つまり、転職エージェントのお客様ではなく、一緒に仕事するビジネスパートナーとしての意識が高い人です。

こういうことを書くと、「人材紹介会社の元社員だからってそういうことを押し付けるなよ」と言われそうですが、転職エージェントは紹介手数料という利益を得るために、転職者とのウィン・ウィンの関係構築を目指しています。

これが事実なのです。

果たすべき責任はきっちり果たし、守るべき約束は守る、というビジネス意識の高い転職者が、転職エージェントとの理想的な関係を構築できるでしょう。

それが結果的に求職者の利益につながるということです!

賢い使い方③ 良い転職エージェント以外は切り捨てる

逆もしかりで、そもそもあなたとの関係を築く気がないような「ダメな転職エージェント」もあります。

私は、良い転職エージェントは、仲人に喩えることができると思っています。

転職者と求人企業の巡り合わせをサポートし、段取りを円滑に進め、入社に発展するまでの世話役に徹することができるところです。

人が関わる要素が大きいビジネスのため、中には人生の先輩面をして上から目線で指導してくる転職エージェントもいますが、そうした転職エージェントとは関係が長続きしません。

転職エージェントは星の数ほどありますから、どんどん他の転職エージェントを当たりましょう。