銀行を辞めたいと考える人が多い層は、第二新卒者にあたる20代前半から中盤にかけてです。職場として給料面に恵まれていることは知られていますが、独特な仕事ですから相応の適性がなければ勤め続けていくことは難しいのです。
そのため、キャリアを重ねていくほどに転職希望者の数は減少していく傾向が見られています。いざ退職しようとなったときに転職経験者が少なく、どのように転職活動を進めていけば良いかわからないという例が少なくありません。
銀行からの転職を視野に入れている人の間でよく聞かれる疑問には、次のようなものがあります。
- 競合関係にある他行へ転職することはできるのか
- 証券会社などの金融機関が転職先として主要な選択肢になるのか
納得することのできる転職を果たすためには、まず疑問をひとつずつ解消していくことが大切です。
この記事では銀行からの転職に成功するための秘訣やおすすめの転職先、求人の探し方などを紹介していきます!
転職を望んで良い環境なのか
銀行員といえば、一般的なイメージとしても安定した生活を送ることのできる職業として認知されています。
せっかく難関とされる職場へ就職したのですから、辞めることはもったいないと考えても仕方ありません。
それでも仕事の内容が自分には合わないと感じる人はいますし、キャリアを重ねていく中で自分のあり方について見つめ直す人もいます。
もっと力を発揮することのできる職場がほかにあるのではないか、さらなるスキルを身につけることのできる場所があるのではないかといった考えに至ることも自然です。
まずは現状が転職を望んで良い環境であるのかどうか、じっくりと自問自答してみましょう。
労働環境の傾向
銀行員が働いている労働環境は、銀行の規模とかかわらずハードなものであることが一般的です。
何より顧客の財産を扱うということで責任が大きく信用第一であり、髪型や身だしなみに気を配ることはもちろん職種を問わず仕事には厳しさがともないます。
- 金融商品の成約件数や販売金額などのノルマに追われる
- 膨大な事務作業やルーティンワークをスピーディかつ正確にこなさなければならない
- お金が1円でも合わなければ合うまで何時までかかっても帰ることができない
そのほか、メガバンクなど大手の都市銀行を中心として各地に置かれている支店への転勤が避けられません。
このような労働環境は、銀行を辞めたいという人からその理由として多く挙げられています。
人間関係の傾向
体育会系の「タテ社会」
銀行は長い歴史の中で企業としての形を固めてきたケースが多く、旧来からの風土を根強く残している場合が少なくありません。
それゆえに、上下の人間関係を重視する「タテ社会」が現代社会においては時代遅れとされることもある中で根強く残っています。
学生時代からメンタルを鍛えられ、先輩後輩の厳しい上下関係に慣れてきた体育会系の人材が多く採用されている傾向も。
そういったところに息苦しさを感じ、結果的に転職を決意するに至る人が少なからずいます。
個人単位での成果主義
銀行では部署の区切りこそあるものの、特に営業部門では成果主義のもと実質的に個人単位で成績を競うことが多くなっています。
限られているポストへの昇進を争う競争は激しく、不手際があれば「左遷」のような異動があるなど出世の道が閉ざされそこからの「復活」も困難。
支店長など一定の役職にまでキャリアアップすることができなければ、なかなか報われにくいところもあります。
将来への展望を持つことができなくなり、そこで転職を考えることになるケースは多々あります。
転職を決心するまで
「○○銀行に勤めている銀行マン」という肩書きは世間的に「価値」のあるものであり、それを捨てることについては自分自身だけでなく家族にとっても躊躇されるものです。
離職者の間では、仕事を続けていることよりも辞めることに対して辛さを感じたという声もあります。
たとえ行内で冷遇され出世が縁遠くなったとしても、世間一般から見ると「立派な銀行員」であることに変わりはありませんから転職を決心するまでが難しいのです。
周囲には反対されがち?
単身者の場合
銀行からの退職を考えるにあたり、単身者にはそこまでのしがらみがありませんから自分の決断を優先させて支障ありません。
ただ、銀行という就職先に対する「ブランド」への思い入れは高齢になるほど強い傾向があります。
そのため、両親へ相談なり報告なりをした場合に激しく反対されたという話がよく聞かれます。
扶養家族がいる場合
やはり、高給が得られる銀行から転職しようという決断に対して家族は不安を覚える傾向があります。
転職に成功して同等以上の収入が得られるという保証はどこにもなく、生活水準を維持することができるのかどうかという心配が大きいのです。
家族の不安をなくすためには、職場を辞めてしまう前に次の就職先を決めておくことがひとつの手です。
地域での転職に対する不安
銀行員としての経験が活きる転職を考えるのであれば、やはり転職先としては金融機関が第一に考えられます。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫
- 労働金庫
- 証券会社
- 保険会社
ただ、日本銀行によるマイナス金利政策が続いている中で銀行の経営は圧迫されている状況。特に地銀の状況が厳しくなっていて、近年活発になってきていた合併の動きが一層加速しています。
つまり、よく調べなければ他行へ転職したとしても合併があって過去に働いていた職場のグループへ入るといったリスクがあるのです。
地元で新しい職場を見つけたいという場合には、地域における各金融機関の情勢などについて慎重に情報収集する必要があります。
転職活動の準備
業界にこだわらず、銀行員として働く中で身についた知識やスキルを活かして転職したいという場合には転職先についてじっくりリサーチしたいところ。
コンサルティング会社や一般企業の経理職なども、職場の候補としてピックアップすることができます。
銀行員としてのキャリアを続けていきたいのか、これからはまったく別の道を歩んでいきたいのかによっても選択肢は違ったものになります。
勢いでの退職は避ける
後々の後悔を招かないためにも、勢いで退職を決めるようなことは避けなければなりません。銀行員の中では、大きなミスがあったからといって退職を即断即決してしまうケースが少なくないのです。
これは銀行マンに高学歴の「エリート」と呼ばれる人材が多く、大きな挫折を過去に経験していないことなども関係しています。
- ミスをしてもう職場にはいにくい
- 怒られて立ち直ることができない
- 出世はもう望むことができない
ですが、落ち込んでいる状態で辞めることはマイナスのモチベーションであって「次」へつなげることはできません。
転職を成功させるためには、じっくり考えて自分の中で納得してから退職を決めることが第一歩です。
在職中から転職エージェントに相談する
銀行員の仕事は常に多忙ですから、転職活動を始めるにあたっては在職中から転職エージェントを利用することが便利です。
新しい職場に望む条件などをあらかじめ伝えておけば、担当者が代わりに希望通りの案件をリストアップして紹介してくれます。
最低限忙しい中で面接だけの時間を確保すれば良いというように、スムーズに転職活動を進めていくことが可能です。
また、金融機関は信用を重視しているので求人情報を一般に公開していないことが少なくありません。「非公開求人」の紹介を受けることができる点も、転職エージェントに相談する利点となっています。
おすすめの転職先
銀行員として働いている場合の業務内容は大きく営業系、事務系というふたつに分けられます。
転職活動が有利になるという意味でおすすめの転職先は、やはり金融関係の企業ということになるでしょう。
銀行員としてのキャリアを踏まえて男性は営業系、女性は事務系の仕事へ就こうと希望する傾向が見られています。
そのほか近年ではオンラインバンク、オンライントレーディングなどを手がけるウェブ関連の企業で銀行マンを求めている向きがあります。
営業系の転職
銀行における営業系の仕事としては、次のようなものがあります。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
法人営業 | 法人顧客の開拓 |
個人営業 | 個人顧客の開拓 |
預金業務 | 顧客から新規にお金を預かる |
融資業務 | 顧客へお金を貸し出す |
運用業務 | 預かったお金を投資などによって運用する |
営業系の仕事では成果を上げることこそ大変ですが、社内外の人たちと密にやりとりをしていく中でコミュニケーションスキルなどは向上していきます。
経験を各種金融機関で活かすことができるほか、一般企業でも営業マンとして活躍することができるだけのベースはあるでしょう。
事務系の転職
銀行における事務系の仕事としては、次のようなものがあります。
業務内容 | 詳細 |
---|---|
窓口業務 | 口座への入出金や口座開設 |
後方事務 | データ入力や電話対応 |
各種金融商品関連業務 | ローン・投資信託・外貨などの取り扱い |
最近は各行で取り扱っている金融商品が多様なものになっているため、職場ごとで必要とされる資質には違いがあります。
一定のパソコンスキルに加え、証券や金融市場などの広い知識を持っていると転職先選びで選択肢が広がります。
金融機関への転職に際しては担当する可能性のある業務と経験した業務がマッチしていればなお良く、そのほか一般企業の経理や財務にたずさわるチャンスも十分にあります。
求人の探し方
銀行に勤務している人の間で、銀行業という業態が安定したものであることは周知の事実です。やはりそういったことから転職するにあたっても同じ銀行、あるいはそのほかの金融機関をあらたな就職先として選ぶ人が多くなっています。
そのほか、まったく別分野の企業から出されている求人でも歓迎する人材として銀行出身者を挙げているケースがあります。
募集情報は求人サイトで見つかりますし、転職エージェントからは企業が非公開としていて限られた人にだけ紹介されている求人情報を得ることができます。
地域にこだわるなら…
自分が暮らしている地域の中で転職先を探したいという場合は、全国で支店を展開しているメガバンクなどの都銀や地銀を除外した方が良いでしょう。
最近は地方銀行も首都圏をはじめとした大都市圏に支店を置いているケースが多く、遠方へ転勤する可能性がともなうことになるのです。
情報収集にあたっては地元のハローワークを利用すると、地域の企業から寄せられている求人が多く取り扱われています。
ただし、極端に地域をこまかく限定すると希望する求人が見つかりにくくなってしまいます。同一市内といったくくりではなく、自宅から一時間以内の通勤圏内などの条件設定をした方が良いでしょう。
銀行にこだわるなら…
転職先を再び銀行に決めたとなれば給料のほか待遇面、転勤の有無などといった雇用条件が職場選びのポイントになります。
退職理由が関係するところはありますが、銀行から銀行への転職を考えている人の間ではあまり変わらない労働条件を望む例が多くなっています。
というのも、銀行における行員の人物評価は他行だから極端に差が出るというものにはなっていないのです。
ヘッドハンティングを受けたとなれば話は別ですが、必ずしも自ら職場を新たにしただけで大きなキャリアアップやスキルアップへつながるというわけではありません。
まとめ
銀行からの転職に関しては、雇用条件にそこまで固執さえしなければそこまで苦戦することはないでしょう。
銀行員という職業自体の信頼性が高いため、銀行で働いていたという経験のあることが優秀な人材であるという評価につながるのです。
金融関係の知識も幅広い業界で活かすことのできるものであり、お金とかかわる仕事をするにあたって重宝されます。
さらに、ファイナンシャルプランナーや税理士などの資格を取得すれば将来的な独立といったビジョンを描くことのできる可能性もあります。