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このページでは、転職によって今よりも高収入を実現するために、どのような考え方や転職活動の進め方をしていけばいいか、じっくり解説していきたいと思います。
そもそも年収はどのようにして決まるのか?
年収を決めるのは厳格なルールがある
よほどのワンマン企業でない限り、通常、企業は多くの社員を公平に評価するための職務等級表というマトリックスを作ります。
タテに職務を取り、ヨコに職務の熟練度別にレベルを取って、企業の経営状況に合わせて各レベル、職種の年収レンジを設定していきます。
これによって、同じスキル同士の社員に同じ年収レンジを当てはめることで公平に処遇するわけです。もし、面接の結果、あなたが経理でレベル3の等級で評価されたら、その年収レンジを超えることはありえないのです。
中途採用にはあらかじめ「予算」が決まっている
また、多くの企業では、年初に経営計画を策定する際、その売上を達成するために必要な人員(要員)計画を策定しています。
中途採用は、この要員計画で不足している人員を補充するために行うわけですが、その際、営業のレベル2の人員2名、エンジニアのレベル3の人員1名といった具合に、具体的な要員とそれに応じた予算を割り当てています。
つまり、多くの企業ではあらかじめ採用する方の年収・予算の大枠は決まっているのです。それを超える人材は「オーバースペック」として、基本的に採用の対象になりません。
実力はあれば良いというわけではないのです。
そのため、あなたは求人票をみる場合、あなたに見合ったスキルを提示している企業を選ぶ必要があります。
転職で給料を上げるための攻略法
ここからは、給料を上げるのための最も確実な攻略法を説明していきます。
そもそも年収が低い企業を選ばない
まず応募の段階で気を付けるべきことは、転職先で現職より年収が低い企業を選ばない、ということです。
いくらあなたに実力があっても、企業の採用予算は決まっている以上、提示している年収以上の報酬を出すことはまずありません。
低い年収を提示している企業は、低いスキル、あるいは将来のポテンシャルがある人材を採用したいので、あなたとマッチングしていません。
面接の注意点①―希望は率直に、はっきり伝える
次に、面接に進んだ段階ですが、転職の面接の場合、どのフェーズの面接においても、希望年収を聞かれることはあると思います。
その場合、はっきりと率直に希望年収を伝えましょう。
日本人の場合、往々にしてそれでも希望年収を控えめに言う傾向があります。求人票に「500万~600万円」と書かれているのに、希望年収を450万円とおっしる方がいます。
はっきりいって、求人票に記載された年収レンジとよほどの齟齬がない限り、合否にはほぼ影響しません。安心して欲しい額を言いましょう。
遠慮しても、給料は上がりませんよ!
面接の注意点②―山場は役員面接
年収アップを成功させる分かれ目、山場の面接は、もちろん役員面接です。
あなたを採用し、年収を決定する決裁権限がある方が出てくるでしょうから、ここで好評価を得なければ高収入は実現しません。
転職エージェントを通じて応募している方は、役員面接の前に予習をし、面接指導を受けておきましょう。
もし、転職サイトを通じて応募している場合は、準備が非常に難しいですが、最近では、キャリアカウンセラーによる面接指導を行っているところもありますので、相談してみると良いでしょう。
年収交渉
年収交渉は、転職の最後の山場です。ここでしっかり交渉しないと、今までの苦労が水の泡になってしまいます。
まず押さえておくことは、年収は、今までの経歴や面接の結果を踏まえた「評価」に対応して決まる、ということです。
そこで、まず確認することは年収額ではなく、「評価」がどうだったか、ということです。
自分のスキルを100%評価されたうえでの年収提示ならば、年収交渉の余地は少ないでしょうが、今までのプロセスをしっかり踏んでいれば、まず間違いなく年収アップの提示を受けるはずです。
反対に、100%評価されていない、と感じる場合は、ここから交渉してしっかり評価し直してもらわなくてはなりません。
自分で交渉する場合は、まず、自分が評価されていないポイントがある部分があることを述べたうえで、そのポイントを評価してもらった場合に年収はどの程度になるかを質問しましょう。
ここで、「子供が進学して大変なので・・・」といった浪花節はほぼ通用しないと思ってください。どこの企業でもこうした事情を抱えている社員はすでにいます。
転職エージェントを通じて交渉する場合は、交渉して欲しいポイント、評価して欲しいポイントを転職エージェントとすり合わせをし、転職エージェントから年収額について打診してもらいます。
転職エージェントは、この段階では非常に頼りになります。
交渉の場数を踏んでいますし、あなたの年収がアップすることは転職エージェントの紹介手数料が増えることも意味しますので、いわばあなたの代理人となって交渉してくれます。
ただし、年収交渉は、引き際も大事です。よほど希望額と落差がある場合は別ですが、年収交渉がこじれたせいで、内定自体がフイになることは、避けなければなりません。
また、年収が上がる、ということは多くの場合、入社後の「成果」も相応に求められます。
ご自身の仕事が成果を挙げることに時間がかかる場合、入社後に成果を挙げられないと、非常にいづらい思いをすることになるでしょう。
転職は、いろんな環境が一変しますので、今までのイメージで成果を挙げられると思わないように、慎重に判断するべきでしょう。
年収アップを目指す転職は、キャリアアップを目指す転職とは異なり、「企業選び」と「攻略法」に重点を置きます。
同じキャリアの持ち主に対して、出せる対価(年収・報酬)の額は、業界や企業によって相当大きく異なります。その現実を踏まえて、賢い選択が必要になってくるのです。
転職で年収が上がったケース・下がったケース《6つの実話エピソード》
次に、私が転職エージェントのアドバイザー時代に担当した「年収が上がったケース」と「下がったケース」を紹介しながら、私なりの分析していきたいと思います。
転職で年収がアップしたケース
Aさん(30代、男性)/中小企業から大手企業への転職へ成功したケース
中小の部品メーカーのエンジニアだった方が、大手メーカーのエンジニアに転職したケースです。
一般に、中小企業から大手企業への転職が成功するケースは少ないですが、この方の場合、研磨に特殊な技能を持っていたことを評価され、見事に大手企業への転職を果たしました。
純粋に実力を評価されたともいえますが、同じ技術に出せる報酬が、中小企業の場合と大手企業の場合とで違っていた、ともいえるケースです。
このケースでは、450万から650万へ年収をアップさせています。
Bさん(30代、男性)/職種の幅を広げて転職に成功したケース
IT業界内の転職ですが、アプリエンジニアからインフラエンジニアに転職した収入をアップさせたケースです。
この方の場合は、ネットワークエンジニアの資格を持っており、インフラ整備にも対応できる点を評価され、年収をアップさせることができました。
今まで活かされていなかったスキルを評価されて年収をアップさせることに成功しました。
Cさん(40代、男性)役員候補者としての転職に成功したケース
運輸業界で、国内系の航空運輸企業の事業部(課長)から、太平洋地域の事業部長(役員)候補者としてステップアップしたケースです。
この方の場合、もともと英語が堪能で、現職でも十分に国際業務に携わっていて活躍されていたのですが、よりグローバルな仕事に携わりたいという転職理由で、CMでも有名な、外資系の航空運輸大手の事業部長候補者としての転職に成功しました。
年収も500万円台から900万円を超える高い年収の転職になりました。
企業側の「見方」と規模が変わると報酬はアップする
上記3つのケースをまとめると、実力がアップしたというよりは、報酬を出す企業の経営規模に大きく左右されていることが分かります。
AさんとCさんのケースでは、実力は大手でも十分に通用するスキルはありましたが、現職でも十分に活かしており、宝の持ち腐れではありませんでした。
一見、実力を認められて転職に成功したようにみえても、変わったのは実は、企業による「実力の見方」であって、実力そのものではありません。
これに対し、Bさんのケースは、まさに伸ばしていた実力を認められて転職したケースです。こうしたオーソドックスな転職成功例も、もちろんありえます。
転職で年収がダウンしたケース
Dさん(40代、男性)/現職が大手企業だったケース
Aさんの事例と真逆になりますが、現職が大手商社で営業マンとしてバリバリ働いていた方のケースです。
この方の場合、取り扱っていた商品の事業部が廃止されることになり、自分が強みだった業務知識を活かして、その商品を専門に取り扱う商社に転職したのですが、経営規模の差から来る給与の差を過小評価していたところに、大きな落とし穴がありました。
前職の大手商社で認められていた手当などがなく、最終的に内定したところでは、年収が800万から500万円台にダウンしてしまいました。
それでも、商品に対する思いがあったため、そのままご転職されましたが、ご家族への説明や説得は大変だったと思います。
Eさん(30代、女性)/職種が同じでも業界水準で下がったケース
この方の場合、安定はしていたメーカーに勤めていたものの、結婚に伴う転居で転職せざるを得なくなったケースでした。
経理という業界を超えた転職が利く職種だったので、IT業界(システムインテグレータ)の企業をご紹介し、転職につなげましたが、前職(650万)から低い年収(500万円台)してしまいました。
決算や税務申告にも対応できるなど、実力は申し分なく、転職先も同じ評価でしたが、業界平均として、事務系の給料が高くないため、「スキルを継続させること」を選択したご転職されました。
Fさん(20代、男性)/自分の過大評価がネックになったケース
もともと金融業界でバリバリ働いていた方で、自信家の性格がたたり、職場での人間関係が原因で転職をされたケースです。
自分への自信から各業界の大手企業ばかりを希望されていましたが、金融業界というのは、他業界への転職が難しい業界です。
しかも、今までの実績や、身に着けたスキルは、「会社の看板があってこそ」だということを実感するまでに時間を要しました。
面接に落ち続けて目が覚めた結果、日本でも最大手の海運業界の国際事業部に転職を果たしましたが、ほぼ第二新卒扱いで、年収も大幅にダウン。一から勉強し直す覚悟で、転職されていきました。
年収ダウンの典型的なパターンは2つ
年収がアップするケースはいろいろな「縁」で決まり、要因も評価されるポイントも異なりますが、年収がダウンするケースは、
- もともと大手、優良企業で、待遇の良かったケース
- 自分の実力が過大評価されていたケース
の2パターンに大別できます。
この他にも中高年がリストラされたケースなど、ご自身の実力とは無関係の経済変動が原因の場合も考えられます。
まとめ
せっかく転職するのであれば、年収はアップしたい、と誰しもが思うもの。
ただ、全員が年収アップの望みを叶えられるわけではありません。年収がアップする人もいれば、ダウンする人もいます。
難しい点は、その違いが「実力」とは限らないことです。年収には様々な要因が絡み合って決まっていくものなのです。