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派遣会社に登録すれば、希望の勤務地や勤務時間、職種に合った仕事を紹介してもらえる派遣という働き方。
育児や介護など、家庭と仕事の両立に悩む方を中心に幅広く利用され、多様な働き方の一つとしてすっかり定着しています。
厚生労働省の統計によれば、平成26年度には約119万人がこの制度を利用して働いている、といわれています。
一方で、不況のたびにいわゆる「派遣切り」が社会問題となるなど、雇用の安定性という点で、不安を抱えながら働いている方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は派遣社員から安定した正社員へのステップアップ方法について徹底分析していきたいと思います。
派遣社員が正社員になるための制度
希望の条件を選べる反面、待遇面で不利になる派遣社員から、正社員にステップアップするには、どのような制度があるでしょうか。
紹介予定派遣制度
まず挙げられるのが、紹介予定派遣です。これは、派遣期間(最大6ヶ月)終了後に、派遣社員と就業先(企業)の双方合意の元に、社員採用に転換する労働者派遣法上の制度のことです。
この際、派遣会社は、就業先(企業)から紹介手数料を受け取ることが通例で、いわば、人材派遣と人材紹介を足して2で割ったような制度です。
但し、双方合意が条件ですので、必ずしも社員になれることが保証された制度ではありませんし、必ず正社員になることを保証した制度でもありません。
直接雇用にすれば足りるので、契約社員として直接雇用される可能性もあります。
派遣元の雇用安定化措置
次に挙げられるのが、派遣元の雇用安定化措置と呼ばれるものです。
これは、同一の就業先に継続して3年間派遣される見込みがある者に対し、派遣会社(派遣元)が、派遣終了後に派遣先(就業先企業)へ直接雇用を依頼するよう義務を定めたものです。
現在の労働者派遣法では、同一の就業先に対し、継続して3年以上、同じ派遣社員を継続して派遣することは、原則禁止されています。
そのため、3年を超えて同じ派遣社員に働いてもらいたい場合には、このような措置が設けられています。
但し、雇用を安定化させること自体は、努力義務なため、これらに基づいて派遣社員の雇用を安定化させることが確実になるわけではありません。
派遣元企業の正社員になる
派遣先(企業)で社員採用を目指すというのが一般的ですが、逆転の発想で、派遣元である派遣社員の正社員としてステップアップする、という方法もあります。
改正前の労働者派遣法では、「特定労働派遣」と呼ばれていましたが、一部のエンジニア職などを中心に、派遣会社が派遣社員を期間限定ではなく、自社の正社員として採用し、派遣先へ派遣するということが行われていました。
現在でもこうした派遣社員の正社員という形で、雇用の安定化を図っている企業として、メイテック、フォーラムエンジニアリング、トランスコスモスといった派遣会社が挙げられます。
派遣社員の社員化の実際
このような派遣社員の社員化というのは、実際にはどこまで可能なのでしょうか?
紹介予定派遣制度の運用の実態
紹介予定派遣制度の場合、企業側も人事戦略として、社員への採用を織り込んで派遣社員を受け入れるため、社員になる「確度」は高い方法ではあります。
ただ、「派遣社員はいつでも雇止めしたい」という考えの企業は多く、派遣社員を積極的に社員化する企業は少数派です。
実態として、派遣社員全体の求人のうち、紹介予定派遣は10%程度といわれています。
これに対し、機会があれば紹介予定派遣を利用したいと回答した派遣社員は、全体の80%程度との調査結果があり、両者のギャップが大きいところです。
また、導入している企業側も、試用期間の代わりに紹介予定派遣を受け入れている企業が多くあると思います。
正社員で直接採用した場合、試用期間であっても、辞めさせることは法律上簡単ではないため、紹介予定派遣は、自己都合で採用を取りやめることも可能なため、利用のハードルが低いのです。
このため、紹介予定派遣で派遣社員を受け入れても、厳選採用で社員転換の実績の少ない就業先(企業)というところもあります。
多い「派遣社員の契約社員化」
また、派遣社員を社員化する(直接雇用する)企業も、いきなり正社員にステップアップするのではなく、いったん契約社員として採用する企業が多いです。
これは、いったん正社員で採用すると、解雇制限ルールなど、辞めさせることが法律上難しいためで、採用に失敗することをおそれる企業側が、正社員化に慎重になっているためです。
想像よりも「狭き門」
そして、冒頭で申し上げたように、紹介予定派遣制度を除く、一般的な派遣契約の形態では、派遣社員の引き抜きをきらう派遣会社によって、就業先(企業)との間で、直接雇用を禁止するなどの契約が締結されているという壁もあります。
派遣社員から正社員へステップアップすることは、派遣社員であるあなたが考えているよりもずっと「狭き門」なのです。
正社員登用を果たすために
こうした実情を踏まえて、派遣社員が正社員へステップアップするための必要なポイントを考えていきましょう。
派遣会社との契約の明確化を
まず一点目が、派遣会社との契約の明確化です。契約で止められているとはいえ、派遣会社も就業先(企業)も、三者で特別に合意ができれば、あなたが就業先(企業)で社員になれるという方法はあります。
派遣社員として契約を締結する前に、就業先で将来直接雇用してもらえるよう働きかけてもらえるか、就業先(企業)に社員採用の制度はあるかなど、事前に確認しましょう。
派遣先の受け入れの見きわめ
二点目は、実際に派遣された段階で、派遣先である就業先(企業)の受け入れ態勢の見きわめです。
社員採用の制度はあるか、どれだけの実績があるのか、どのような人が社員採用されるのか、などといったポイントは、人事部に問い合わせずとも、契約社員、派遣社員の間で広く情報が共有(口コミ)されていますので、意外とたやすく情報は手に入るはずです。
手に入れた情報と自分が置かれている立場から、社員採用の可能性について、現実的に考えていきましょう。
仕事で結果を出すこと
最後に、最も重要な点が、仕事で結果を出すことです。
当たり前のことですが、努力しない人、活躍しない人には、ステップアップのチャンスはありません。自分をしっかり磨いて、業務に高い意識で取り組んでいきましょう。
社員登用と転職のメリット・デメリットの比較
ここでは、社員登用の他の選択肢として、転職で正社員を目指すケースと比較検討して、そのメリット・デメリットを考えてみましょう。
社員登用を利用するケース
社員登用を利用するケースでは、これまで働いて得た実績や信用を、そのまま活用してステップアップできる点がメリットになります。
デメリットは、前にも述べたように契約上の壁があること、社員登用といっても正社員になる前に、契約社員というワンクッションを置かれて登用されるケースが多いこと、社員登用が確実ではないこと、などです。
転職によってチャンスを求めるケース
このケースでは、自分から積極的にチャンスを作り出すことによって、正社員へのステップアップを目指せる、という点がメリットです。
デメリットは、転職活動が必ずしも成功するわけではないこと、派遣社員としての前職の実績が低く見られがちなため、正社員に負けない実績をPRする必要があること、内定しても待遇が低くなる可能性があること、などです。
転職活動の注意点
ここでは、転職活動によって正社員へのチャンスを求める場合に、注意すべき点に触れたいと思います。
自分で直接探す場合
まず、自分で直接探す場合ですが、ハローワークや一般的な転職サイトで探す場合、前職は派遣社員でも、正社員に負けない実績を積んできた、正社員と同じ仕事ができる能力があることを、応募書類の段階からしっかり自己PRする必要があります。
転職エージェントを利用する場合
次に、転職エージェントを利用する場合ですが、実績や自己PRの作り込みは、転職エージェントと二人三脚でできるため、問題はありませんが、派遣社員として限定された仕事しか経験がないため、どうしても内容が薄くなってしまいます。
そこで、資格を取得する(勉強する)など、自分でも研鑽して正社員として仕事ができるよう努力してきたことをPRすることも考えていくべきでしょう。
最後に
派遣社員として働いてきた方が、正社員へステップアップする場合、これまで得てきた「希望に合った勤務地、勤務時間、仕事内容」といったメリットを捨てて(我慢して)、生活や仕事の安定を取る、という発想も必要になってきます。
狭き門を突破することは簡単ではありませんが、正社員になったことで、あなたの社会的な地位も向上し、新しい、様々なキャリアステップの選択肢もいずれ見えてくることになるでしょう。
ぜひ頑張っていただきたいと思います。