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ライフワークバランスや薬剤師としてのスキルアップを考えて調剤薬局への転職を考える方が増えています。
しかし、実際に転職活動を始めてみてると、中途採用向けの求人情報では調剤薬局の仕事内容や1日のスケジュール等、わからないことも多いですよね。
このページでは、求人票だけではわからない調剤薬局の転職事情と転職活動のノウハウを解説していきたいと思います。
知っておきたい調剤薬局の求人傾向のキホン
求人数は
調剤薬局も大手から中小様々ありますが、調剤薬局チェーン展開している大手は教育や福利厚生がしっかりしています。なかには日本調剤株式会社のように薬剤師教育システムを外販しているような企業もあります。
薬科大が6年生になり慢性的に薬剤師が不足しているため、中途採用・アルバイト・パートの求人数は時期を問わず多くあります。
ブランクOKやシルバーOKの調剤薬局もあります。新薬が次々と販売されているため、ブランクがあると躊躇する人もいるかも知れませんが、薬局のシステムになれれば、薬の知識は仕事をしながら身に付きます。
必要なものは自分のやる気です。シルバーの方は細かい作業に自信があれば応募してみましょう。
中途採用の求人はインターネットや求人広告、フリーペーパーで探さなくても、店舗に募集が出ていることもありますので、直接問い合わせてみましょう。
地方は高収入?調剤薬局の収入事情
全国平均の収入は下記の通りです。
ただし、医師や薬剤師が不足している地域では、年収800万~1,000万という調剤薬局もあり、地域により年収が変動するという特徴があります。
- 未経験者(新卒レベル)で400万~600万
- 経験者で550万~650万
昇給の機会が少ないため、高収入を望むのであれば薬剤師の不足している地域へ行くか、独立して調剤薬局を経営する、または他の職種に就くことを検討しましょう。
調剤薬局ではパートやアルバイト時給でも2,000円を超えることも珍しくありません。地方では時給5,000円の地域もあります。
高時給であるため扶養枠内で働きたい場合、子供が学校に行っている間の2時間だけ等、少ない時間で十分お金を稼ぐことができます。
保険薬剤師登録はお済みですか?
調剤薬局で働くには、保険薬剤師の登録を行っていないといけません。保険薬剤師は健康保険が適用される保険薬局で調剤を行う薬剤師のことです。保険薬剤師になるには特別な資格は必要ありません。薬剤師の資格を持っていれば登録をするだけです。
今まで調剤併設のドラックストアに勤務していれば、すでに保険薬剤師として登録しているかも知れませんが、OTCのみや製薬会社等で勤務していた場合は登録の必要がないため、保険薬剤師登録をしていない可能性があります。
今後調剤薬局での仕事を希望するのであれば、保険薬剤師登録をしておきましょう。
調剤薬局への転職活動で失敗しないために
自分が今後どのようなキャリアプランを立てているのか、または家の近所でのパートを希望しているのか等の条件で応募先は変わってきます。
給与や通勤経路、薬局の規模、何科の処方箋を扱うのか、等自分が優先したい条件をしっかり洗い出しながら、この記事を読んでみましょう。
ここに注意!ブラック薬局の特徴
- 研修がないまま薬局に出される
- 薬局に自分1人しかないため、ダブルチェックもできないまま薬を出さないといけない
- 勤務時間が長く休憩もない
- 薬局内の整理整頓されておらず設備も古い
- 1日1人で処方箋を40枚以上調剤している(薬事法違反を無視している)
- 調剤報酬を不正に請求している(完全な犯罪です)
- 経営者からのパワハラが日常化している(完全な犯罪です)
様々な要因がありますが、薬事法違反や労働基準法違反、調剤報酬の不正請求等の法律違反は完全なブラック薬局です。
ブラック薬局かどうか、入社してみないとわからないことが多いのが現実です。
では、入社前に見抜くにはどうすれば良いのでしょうか。
応募する前に働きたい店舗に行ってみよう
求人を見て興味のある薬局が見つかったら、配属希望先の薬局へ足を運んでみましょう。
そこで経営状況の割に設備が古くないか、働いているスタッフは生き生きと働いているか、薬局内は清潔か等を確認してみましょう。
あまり設備投資がされていないところは、利益重視で設備投資がされておらず、社員の処遇も良くない可能性があります。
社員が活き活きと働いていないのは、過重労働の可能性や社内の雰囲気が良くない原因が隠れている可能性があります。
薬局の前を通りかかっただけで決めつけるのは難しいかも知れませんので、求人の問い合わせを電話でしてみるのも見極める方法の1つです。
配属先のことや研修体制について質問をしているにも関わらず「明日にでも面接しましょう」等と強引に応募を迫ってくるようであれば、グレーに近いと思ってよいでしょう。
薬局に関わらず、一般企業でも求人に関する質問については丁寧に対応をし、応募を催促するようなことはしません。質問内容に回答をし「ぜひ検討をしてみてください」と応募については本人の意志を尊重するのが通常の対応です。
調剤薬局は立地により処方内容が異なる
基本的にどこの薬局でも入口には「全国どこの病院の処方箋でも取り扱っております」と書いてありますが、通常は近所に何科の病院があるかで主な処方薬が決まります。
また、病院と調剤薬局につながりがあれば、病院の方で「向かいの●●薬局に処方箋を出してください」と初診の患者さんに案内をしています。
近所に眼科や皮膚科のクリニックが多ければ眼科や皮膚科の薬を中心に置くようになりますし、大きな病院の前にある薬局(門前薬局)では、すべての科に対応できるようにしています。
転職する際には、自分は何科の薬に詳しいのか見極めて調剤薬局を探しましょう。
高収入を狙うなら管理薬剤師へのステップアップも視野に
調剤薬局には管理薬剤師が必要ですが、管理薬剤師には特別な資格はありません。就職後、会社が認めれば6ヵ月で管理薬剤師として調剤薬局を任されることもあります。
管理薬剤師は、下記の調剤薬局の仕事に加え、薬事法に基づいた店舗全体の管理業務が加わります。
調剤薬局の仕事
- 処方箋鑑査(処方内容の確認、保険証番号や有効期限の確認、お薬手帳の内容確認)
- 疑義照会(処方箋内容で不明な点があった場合、担当医へ確認)
- 調剤(混合、粉砕、分包)
- 服薬指導(重複薬や相互作用の確認)
- 薬歴管理(今日処方した内容をデータで管理する)
管理薬剤師の仕事
- 700品目以上の医薬品の備蓄、医薬品を他の薬品と区別して貯蔵、陳列して薬局管理帳簿に記載する
- 緊急時や休日、時間外に繋がる電話の設置と管理
- 添付文書、緊急安全情報、DSU(医薬品安全対策情報)をファイリングして管理
- 薬剤師の管理(シフト調整、教育・指導、薬科大生の受け入れ)
- 製薬会社のMRや卸し会社のMS、医療機関、他の薬局との連携
- インターネットやPMDA(医薬品医療機器情報配信サービス)で最新情報を入手して他の薬剤師に周知する
- 薬剤服用履歴管理料の算定と服薬指導
- 製薬メーカーや薬局内、会社内での勉強会を定期的に開催し、日付と内容をファイリング
- クレーム等の対応(調剤ミスやクレームは管理薬剤師が対応します)
- 経営管理(コストを削減、ジェネリックの推奨や調剤報酬を意識して利益を追求)
- 特定計量器定期検査(計量法)を2年に1回調剤で使用している計りが正確かを検査
- 医薬品の計画的検査を数年(2年程度)に1回、試験監査を実施して薬局の医薬品の品質を検査
チェーン展開している薬局では会議の出席や報告書の作成等の業務も加わります。管理薬剤師は患者さんや医師だけでなく製薬会社の社員等との対外的な人間関係を築かなてはいけません。
また、新人薬剤師の教育や薬局の運営にも気を配らなくてはならないため、経営的視点や責任感、向上心が必要になります。
責任が重くなる分、給与も上がります。しかし調剤の仕事自体ミスが許されない仕事であるため、さらに責任と業務が増える管理薬剤師にはなりたくない、という人もいます。
敬遠する人も多いため管理薬剤師の中途採用の求人は多くあります。特別な資格が必要な仕事ではありません。やる気があり、他の薬剤師と上手くつき合って1人で仕事を抱え込まないようにすればチャレンジできる仕事です。
経営に関心がある人は未経験からでも応募できる求人を探してみましょう。
調剤薬剤師のキャリアアップは3タイプ
店舗を異動する
調剤薬局の場合は、店舗を異動して扱う処方箋が変わるだけでキャリアアップになります。
周囲の病院が決まっていると、医師の処方内容にある程度の規則性が出てきます。そのため、扱う薬品が固定されてきます。
周囲の病院が変われば、同じ病気でも医師の考え方により他の薬品が処方されることもありますし、「内科を経験したから今度は耳鼻咽喉科」と科目の変更を目的に店舗異動をしても良いでしょう。
大手チェーン店でのキャリア形成
- 管理薬剤師を経て店舗やエリアマネージャーになる
- 本社で在宅医療チームや新人教育、バイヤー等の経験を積む
- 独立支援制度を使って独立開業する
本社での仕事は企業によって異なるため、上記以外のキャリア形成も望めますので調べてみましょう。
資格を取得してキャリアアップする
比較的取得しやすいのが調剤薬局事務です。薬局には薬剤師とは別に調剤薬局事務職がいますが、人数が少ないため薬剤師がサポートできれば、薬局の雰囲気も良くなります。調剤薬局事務の試験はテキストが持ち込み可ですので、働きながら資格取得を目指せます。
コミュニケーションを取るのが苦手な人は、交流分析士2級を取得してみましょう。交流分析は人間関係を円滑にするための心理学です。交流分析を勉強することで、コミュニケーションスキルをアップさせることができます。
薬剤師として専門性を高めるのであれば日本病院薬剤師会(JSHP)主催の認定薬剤師を取得して専門薬剤師を目指す方法があります。
現在は感染制御、精神科、妊婦・授乳婦、がん、HIV感染症の5つの領域で専門薬剤師を育成しています。
日本薬剤師研修センターでは研修・漢方薬・生薬・小児薬物療法・認定実務実習指導の4科目で認定を受けられます。3年ごとに更新をする必要があるため、常に新しい知識を身につけることができます。また、管理薬剤師を目指す人は薬事法等を学べる研修や薬科大生の実習の指導ができる認定実務実習指導を受講しておくとキャリアアップになります。
他にも日本医療薬学会(JSPHCS)や日本化学療法学会、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)、日本プライマリ・ケア連合会、日本臨床救急医学会、日本腎臓薬物療法学会等で認定資格を取得することができます。
自分が今後どのような薬剤師を目指したいのか、どのような人生プランを考えているかで取得する資格が変わってきます。転職を検討している現在、キャリアプランを明確にする良い機会です。じっくり考えてみましょう。
意外とハード!?調剤薬局での1日
内科と小児科のクリニックが近くにある調剤薬局の1日を紹介します。
この薬局には薬剤師3名事務2名が在籍しており、1日平均80人前後の患者さんが来ます。閑散期は40人程度ですが、風邪やインフルエンザが流行する時期は200人を越える患者さんが来ます。
- レジの準備
- 店内のクリンリネス(はたきがけ、床掃除等)
- 在庫確認、睡眠導入剤や向精神薬等の数をチェック
- 分包機等の機械を立ち上げ
- 予製作り
予製作りとは、医師により決まった組み合わせの処方があるため、予めその日に処方されそうな分だけ作っておくことです。
この薬局では風邪の患者さんにバナン2錠を4日分の組み合わせで出す医師がいるため、バナン8錠の組み合わせを、その日ハケる分だけ作ります。
また、小児科で乳幼児の肌荒れにアルメタ軟膏1 gとプロペト7 gを混合した軟膏や、リドメックスコーワ軟膏0.3% 15gとプロペト15 gの混合した軟膏を処方する医師がいるため、これも当日ハケる分だけ作っておきます。
- 処方箋鑑査(処方内容の確認、保険証番号や有効期限の確認、お薬手帳の内容確認)
- 疑義照会(処方箋内容で不明な点があった場合、担当医へ確認)
- 調剤(混合、粉砕、分包)
- ダブルチェック(処方箋と調剤した内容が合っているか)
- 服薬指導(重複薬や相互作用の確認)
薬歴管理(今日処方した内容をデータで管理する)も行わなければなりませんが、忙しい時は手書きをして閉店後に行うことが度々あります。
小児の風邪の場合は粉薬が処方されることが多く、分包機をフル稼働させなければなりませんが、ここに内科の一包化の処方せんが入った場合、機械は1台しかないので作業が滞って時間がかかることがあります。
長期処方があると、余計に時間がかかります。仮に60日分だと朝昼夜寝る前で240包。1度に分包できるのが、機械にもよりますが42~60包として、最低でも4回機械を回さなければなりません。
最後に240包の1つ1つにゴミが入ってないか、間違いがないかを確認します。また、1枚の処方せんに薬が多く処方されている場合には、監査するだけで目が痛くなります。
患者さんが少ない時間には、定期的に同じ処方をされる患者さんの来店に合わせて処方薬を準備します。
混むかどうかの事前予測できないため在庫管理が難しく、当日すべての薬を渡すことができずに残りの薬を翌日、患者さんに取りに来てもらうこともあります。
少人数の調剤薬局のため、患者さんや医師からの急な問い合わせの電話で時間を取られて調剤する人がいなくなり、患者さんから「自分のはまだですか?」と言われたり、怒られることもあります。
服薬指導では用法や用量について説明を行いますが、病気で耳が遠くなっている方や、ご高齢の方、子供1人で来る場合もあり、患者さんに合わせたコミュニケーション能力が問われます。
- 未入力の薬歴を入力
- レジ閉め
- 店内のクリンリネス(はたきがけ、床掃除等)
- 在庫確認と発注(翌日足りない分)
- 睡眠導入剤や向精神薬等のチェック(今日処方した分と在庫の数が合うか)
- 分包機等の電源を落とす
- 店舗の施錠
休憩時間については、今回ご紹介した薬局では通常1時間取れますが、繁忙期は5分~10分しか休憩が取れないこともあります。
大学病院や総合病院の前にある薬局(門前薬局)では薬剤師5名以上、事務2名以上の体制で運営しているおり、交代制で休憩を取るため1時間の休憩を取ることができます。
調剤薬局に向いている人、向いていない人
調剤薬局に向いている人
安定志向
ドラックストア等に比べると休日や勤務時間が決められているため、プライベートな時間を確保しやすく、立地によっては残業も少ないところもあります。
特に日曜・祝日は確実に休めるところが多く、結婚後も仕事を続けやすい環境です。
仕事が正確で責任感がある人
日々の仕事がルーティンワークであるうえ、処方箋監査や調剤といった仕事がメインですが、ミスをすると健康被害や患者さんの命に関わる仕事です。
真摯に仕事に向き合う姿勢や正確さ、責任感が求められます。
コミュニケーションを取るのが好きな人
同僚とのコミュニケーションだけでなく、服薬指導でもコミュニケーションスキルが求められます。
患者さんは子供から高齢者まで幅広いため、相手に合わせたコミュニケーションを取り、処方薬をきちんと服薬してもらえるように指導します。
処方薬の知識を深めたい人
総合病院の前の薬局では抗がん剤から湿布薬まで幅広く扱うため、薬の知識や処方に関するスキルが身に付きます。
調剤薬局では製薬会社が企画する勉強会やセミナーに参加する機会があるため、新薬について学ぶ機会が多くあります。
調剤薬局に向いていない人
ルーティンワークが苦手
日々の仕事に変化がないため、新しい発見等の刺激がありません。
変化に富んだ仕事がしたい人には向いていません。
狭い世界での人間関係が苦手な人
チェーン展開している大手の調剤薬局であれば、転勤等で人の入れ替わりが望めますが個人経営や規模の小さい会社の調剤薬局では人の入れ替わりが少ないです。
そのうえ、1つの薬局に在籍する人数も5~10人程度であるため、ドライな人間関係が好きな人には向いていません。
自分の調剤に自信が持てない人
調剤のミスは患者さんの健康被害に繋がります。薬によっては命に関わることもあるため正確さが求められます。
「間違ってたらどうしよう」という気持ちで仕事に向き合っていては、いつまでたっても仕事が終わりませんし、大きなストレスを抱えることになります。
おおざっぱで責任感のない人
「1ミリぐらい合ってなくても大丈夫でしょ。」と適当な調剤をしたり、ダブルチェックをいい加減に行っていると、睡眠導入剤を大量に処方してしまう等の重大なミスに繋がります。
高収入が目当ての人
詳細は給与の項目で紹介した通り、給与はなかなか上がりません。
仕事内容より収入を選ぶのか、じっくり今後のキャリアプランを考えて転職しましょう。
まとめ
かかりつけ医を持つように、今後はかかりつけ薬局が重要視されてきています。そのためどこの調剤薬局も、1人でも多くの薬剤師を確保しておくために中途採用に力を入れています。
応募する前に必ず中途採用者の研修体制やブランクのある人へのバックアップ体制、薬局の人員配置、1日に扱う処方箋枚数は必ず確認しておきましょう。