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システムインテグレート(以下、SI)の現場に身を置いていると「大手SIerに転職したい」という声を聞くことがあります。

大手SIerであれば、経営基盤が安定していて給与や待遇がよい上に、大規模なプロジェクトや要件定義などの上流工程を担当することでスキルアップも期待できます。

しかし、大手SIerへの転職は決して簡単なものではありません。ここでは大手SIerとはどういったものか、そこで求められる人材についてご紹介し、おすすめ企業、そして大手SIerへの転職を成功させるためのノウハウをご紹介します。

大手SIerの経営状況と人材状況

安定した経営状況

まずはじめに、大手SIerの経営状況を見てみましょう。

大手SIerの多くは経常利益を維持しながら、順調に規模を拡大しています。例えば、最大手であるNTTデータの有価証券報告書を確認すると、過去15年で売上高を約2倍(2002年 8,019億円 → 2016年 1兆6148億円)に拡大しながら、その間、経常利益率は年によって4%〜9%とばらつきがあるものの、平均6%で推移しています。

経済産業省が発表している産業別の経常利益率で他の産業と比較しても見劣りする数字ではありません

一方、企業規模が大きくなっているのには理由があります。業界全体で企業の吸収・合併が加速しています。大手SIerでも2010年に日立システムアンドサービスと日立ソフトウェアエンジニアリングが合併し、日立ソリューションズになり、2011年には住商情報システムがCSKを吸収合併し、SCSK株式会社になっています。それぞれ合併前から売上高で1,000億円を超える大企業であり、今後も大手同士の経営統合が十分に考えられます

また、大手SIerはGoogleやAmazonといった海外企業の脅威にもさらされています。例えば、Amazon Web Servicesが提供するクラウドサーバは驚異的に拡大しており、国内大手SIerはサーバ販売において大きな打撃を受けています。

今後、大手SIerであってもこういった海外企業との激しい競争が予想されています。

人材状況を見ると転職者にもチャンスあり

大手SIerの人材の状況はどうでしょうか。統計を見ると、大手SIerでも質・量の不足感が確認できます。つまり、大手SIerであっても優秀な人材を中途採用で求めていると言えるでしょう。

経済産業省所管の情報処理推進機構が発表する「IT人材白書2016」のIT人材の”量”の過不足感を聞いた項目において、従業員数1,000名以下の企業では90%以上が「大幅に不足している」「やや不足している」と回答しているのに対して、1,001名以上の企業では80%と若干充足度はありますが総じて高い数字です。

IT人材の”質”の過不足感についてはほぼ変わりがありません。1,000名以下の企業では94%以上であるのに対して、1,001名以上の企業では91.7%です(30名以下の企業は少数精鋭であり、ここでは除きます)。

大手SIerが求める人材像

「IT人材白書2016」を見ると、大手SIerがそれ以外のSIerと比べて求める人材が異なり、さらにそれを中途採用で補おうと考えていることが確認できます

同白書ではIT人材の習熟度やレベルを「IT人材レベル1〜5」で分けており、「IT企業が重要と考え育成していきたいIT人材【従業員規模別】」という項目において、従業員1,000名以下の企業ではレベル1〜3の技術者やレベル4〜5のプロフェッショナル人材(インフラ系技術者、アプリ系技術者、運用系サービス技術者、コンテンツサービス系技術者)を強く求めているのに対して、1,001名以上の大手SIerではレベル4〜5の特定職種(コンサルタント、プロジェクトマネージャ、ITアーキテクト、データ分析、自社の事業企画)を強く求めています

これはシステムインテグレーターの業界構造を知っていれば、決して驚くことではありません。日本のシステム開発は、ゼネコンと同じような多重請負構造で成り立っています。ユーザ企業から開発案件を受注する一部の元請け企業が、二次・三次請け企業へと開発を発注します。その人件費の利ざやで儲ける構造であるとも言えます。

つまり、元請けである大手SIerで求められる人材とは、顧客企業の経営課題を解決するような大規模なシステム開発案件を作れるコンサルタント、そしてその案件を推進できるプロジェクトマネージャやシステムの技術的な基盤を構築するITアーキテクトなのです。

大手SIerの分類

ここでは、SIerをいくつかのグループに分類します。

ユーザー系

ユーザ系SIerとは、親会社を持ち、その多くは、親会社のシステム部門だった組織が外販を始めて会社といて独立した経緯を持ちます。代表的な企業としてNTTデータや野村総合研究所、SCSK、伊藤忠ソリューションズなどが挙げられます。

これらの企業は、現在も親会社やそのグループ会社のシステム開発も行っており、親会社の業種や業務に精通していることが特徴としてあげられます。ただし、外販率が高い、つまり売上高に占める親会社やグループ会社への売上高比率が低いユーザ系SIerであれば、広い業種の顧客を持っており、その限りではありません。

メーカー系

メーカー系SIerとは、NEC、日立製作所、富士通などのコンピュータメーカーのシステム部門から独立した企業、あるいはそれらの企業によって戦略的に設立されたシステム開発・保守運用を専門とする企業です。

親会社が製造するサーバやサービスと組み合わせたシステム開発を得意としています。そのため、親会社から受注する開発案件を多く持っています。一方、親会社以外の製品を提案しにくい傾向があります。

独立系

ユーザー系やメーカー系のSIerが親会社を持っているのに対して、独立系SIerは親会社を持ちません。

親会社がないことでメーカーやソフトウェアにとらわれないクライアントに最も適したハードウェアやソフトウェアを選択・提案できるところに強みがあります。また、創業者がカリスマ性を持っていたり、ビジネスモデルに独自色がある企業が多い点も特徴です。

大手SIerの紹介

大手の定義と企業一覧

では、実際に大手SIerと呼べる企業はどの程度あるのでしょうか。

大手と呼べる企業規模は産業によって異なります。SIの業界においては売上高3,000億円がそのラインであると言われています。これは多くの大手企業が3,000億円程度の売上高であることに起因していると思われ、「3,000億円クラブ」という言葉があるくらいです。

以下に売上高が2,000億円〜3,000億円を超える大手SIerを一覧にまとめます(売上高順)。

企業名 売上高
NTTデータ 1兆6,148億円
キヤノンマーケティングジャパン 6,460億円
大塚商会 5,595億円
野村総合研究所 4,214億円
伊藤忠テクノソリューションズ 3,916億円
ITホールディングス 3,826億円
SCSK 3,239億円
NECネッツエスアイ 2,800億円
日本ユニシス 2,780億円
トランスコスモス 2,246億円
新日本住金ソリューションズ 2,186億円

おすすめ企業

NTTデータ

業界最大手SIerであるNTTデータは、売上高、経常利益ともに業界でダントツのトップです。売上高では2位グループが3,000億円〜4,000億円であるのに対して、NTTデータは1兆6,000億円を誇り、文字通り「桁違い」です。

強みとする業界も製造業、流通業、金融業、サービス業と幅広く、総売上高21兆円を誇るNTTグループ企業からの安定した売上もあり、経営基盤は盤石です。

また、他の大手SIerと比べてグローバル展開で一歩先を取っている点も特徴的です。海外売上高比率は約3割に達しており、これは4,800億円近い金額です。多くのSIerの海外売上高比率が1割にも達していないことを考えると、その圧倒的な安定的な収益基盤が理解できます。

野村総合研究所(NRI)

一人あたり売上高や営業利益率で群を抜くのが野村総合研究所です。

他の大手SIerの営業利益率が5%や8%であるのに対して、野村総合研究所は13.8%(2016年)とダントツです。その名のとおり、システム開発に限らず、リサーチやコンサルティングといった事業も行っています。給与水準は大変高く、最大手のNTTデータの平均年間給与が807万円(2016年)であるのに対して、1,156万円(同)と300万円以上の差があります。

SI業界の一部には「野村総合研究所は一部のコンサルタントが利益率や平均年収を押し上げている」という人がいますが、有価証券報告書を確認すると、コンサルティングに従事する社員はわずか11%です。このことからも組織的な強さが伺えます。

野村総合研究所の強みは、顧客の潜在的なニーズや問題を先取りして解決策を提案し、システムによってその解決を実行・運用していくトータルソリューションにあります。特に流通業金融業に強みを持ちます。

SCSK

住友商事の子会社であるSCSKは規模では3,000億円程度で2位グループの1社に過ぎません。

ただしその経営方針は非常に特徴的です。社員の健康こそが全ての礎という理念の下、あまり聞きなれない「健康経営」を推進しています。具体的には、有給消化率98%、残業時間は35時間(2008年)→17.5時間(2015年)まで削減しています。

また、だらだらと仕事をしている生産性の悪い社員より生産性の高い社員の方が残業代を含んだ給与が低いことに問題意識を持ち、残業削減の目標を達成した社員に残業代を支払うという一風変わった制度もあります。

慢性的な残業や休みの取れないSIの業界の問題に切り込む経営に注目が集まっています。

ワークスアプリケーションズ

今回ご紹介した大手SIerの条件は「売上高が約3,000億円以上」ですが、独立系でこの規模の企業はITホールディングス(3,900億円)やトランスコスモス(2,246億円)に絞られます。

ゆえに、ここで紹介するワークスアプリケーションズは「準大手SIer」と言えるかもしれません。しかし、ワークスアプリケーションズには大きな特徴と強みがあります。統合ERPパッケージソフトで国内シェアNo.1である「COMPANY」と「HUE」を有している点です。

また、独立系の強みでもある経営者のカリスマ性も兼ね揃えています。ワークスアプリケーションズの創業者で現在、代表取締役最高経営責任者(CEO)である牧野 正幸氏は海外ERPパッケージソフトからわずか20年程度でシェアを奪い取った「COMPANY」のビジネスモデルを創出しており、SIの業界において非常に有名な人物です。他の大手SIerに比べてベンチャー精神が残っており、実力主義である点も特徴と言えます。

大手SIerへの転職術

有利な経歴と資格

コンサルタント

前述のとおり、大手SIerではシステム開発の上流工程、あるいは顧客のシステム化戦略に携わることのできる「コンサルタント」が求められています。大手SIerがシステム開発の元請けでいられるのには理由があり、コンサルティングによる提案力があるためです。

現職で上流工程を経験したことのある方は転職においてもその経験が非常に有利です。

ただ、残念なことにコンサルタントにはその実力を示すようなデファクトスタンダードのような資格はありません。中小企業診断士を挙げる人もいますが、SIの現場において決してその評価は高くありません。むしろ、現場における一流コンサルタントの中には、MBA(Master of Business Adminisration・日本においては経営学修士)を持っている人が多いように思われます。

プロジェクトマネージャ

コンサルタント同様に、プロジェクトマネージャも大手SIerで求められる人材です。現職でシステムの発注顧客との折衝を伴うプロジェクトマネジメント経験のある方は特に高く評価されます。

また、システム開発業者をコントロールした経験のある方も有利です。大手SIerのプロジェクトマネージャは多くのシステム開発業者をコントロールすることが多いためです。その業者が海外(オフショア開発)で、英語や中国語でコミュニケーションをとった経験があれば尚良いでしょう。今やオフショア開発を伴わないシステム開発の方が少なくなりつつあるためです。

プロジェクトマネージャを目指すのであれば、情報処理技術者試験「プロジェクトマネージャ」は、あなたの実力を客観的に示すために良い資格と言えます。また、英語や中国語の実力を示すような英検TOEIC中国語検定試験も同様に高く評価されるでしょう。

時流に乗った技術者も評価が高い

昨今の傾向を見ると、セキュリティ分野に強いエンジニアも大手SIerが求める人材と言えます。情報処理推進機構が発行する「情報セキュリティ白書2016」によると、情報セキュリティ人材の育成は、IT企業では46.9%が実施できていません。

育成できていないとなると、自ずと中途採用での即戦力確保が予想されます。

IoTやビッグデータといったキーワードからデータサイエンティストの採用も人気です。また、クラウドコンピューティングの企業向けシステム開発への普及を背景に、Amazonが提供するクラウドコンピュータサービスAmazon Web Services(AWS)などのクラウド技術に強いインフラエンジニアも同様に高く評価されます。

こういった時流に乗った技術は多くの場合で、資格の設置が現状に追いついていないケースが多く、転職において特定の資格が評価につながることは期待しにくいと考えたほうがよいでしょう。むしろ、実際にどういった仕事をして、どういった成果をあげたのかをアピールするのが得策と言えそうです。

大手SIerならではの面接術

ここでは、大手SIerの転職における面接術をご紹介します。

知識よりコミュニケーション力をアピール

大手SIerの面接では、あなたが持つ知識がいかに仕事に活かせるかのアピールも必要ですが、それ以上にコミュニケーション力に長けていることを協調する必要がある。

前項で説明したとおり、大手SIerは大規模な案件が多く、そこで求められる人材は、コンサルタントやプロジェクトマネージャです。現時点でそういった分野のスペシャリストでなくても、その素養があるかは面接で評価されます。両者に共通するのは知識でも経験でもなく、顧客とのコミュニケーション力が高くなければ大成しないということです。

そこで面接では、「先方の話を正確に理解する」「物事を整理して論理的に説明する」といった姿勢を積極的に見せてください。コミュニケーション力が高くないと判断された場合、どれほど他の能力に魅力があっても採用されることは非常に難しくなります

専門知識より広い知識をアピール

大手SIerが求める人材は、専門知識を持っていて当然です。むしろ、システム開発案件全般に渡って必要となる広い知識も同時に求められます。一部の技術やプログラミング開発工程に特化した知識だけでは太刀打ちできません。

それよりも重要なのはシステム開発工程の全体像を理解しているかどうかです。さらにシステム開発といった世界にとどまらない、ビジネス感覚に長けている人材を求めています。例えば、ITやシステム開発のニュースに限らず、顧客の産業に関するニュース政治経済といったニュースに敏感であるかは重要なポイントです。

プレイヤーよりリーダー経験をアピール

面接では必ず前職で活躍した内容について聞かれます。その際、あなたが社会人1〜2年目でもないかぎり、必ずリーダーシップを発揮した経験を説明するようにしてください

個人としていかに優秀か、いかに能力があるかは二の次です。なぜなら、大手SIerでは早い段階でリーダーの立場で仕事に就き、面接官はあなたがそこでリーダーシップを発揮できる人物であるかを見ているのです。

「自慢できるほどのリーダーシップは経験ない」という方でも問題はありません。年齢に相応しい人数はありますが、小さなリーダーシップ経験でも良いのです。あなたがメンバーにビジョンや将来のあるべき姿を示し、苦労しながらでも、周囲を巻き込みながら物事を進めた経験であれば良いのです。面接官が見ているのは、以下のような点です。

・あなたが能動的に動いたか
・あなたがビジョンを示したか
・メンバーだけではなく、関係者を巻き込んだか
・成功しても失敗しても自分を振り返ったか

転職エージェントの活用法

転職活動は現職を退職してから行うのはリスクが大きいため、現職を続けながら内定を勝ち取るのが理想です。とは言え、現職があまりに忙しく、まともな転職活動ができないという方が多いのも事実です。

そういった場合は転職エージェントの活用をお薦めします。転職エージェントであれば、大手SIerの非公開求人情報を持っている可能性も大いにあります。まずはあなたの希望を伝え、可能性のある大手SIerを紹介してもらうことをお薦めします。