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「転職しようかな」と考えたら、まず「自己分析」が必要です。自己分析を行うのは、エントリーシートを書くためでも、面接をうまく乗り切るためでもありません。あなた自身がどういった業界で、どういった立場で仕事をしたいのかを決めるために行うのです。
ここでは、自己分析がうまくできない方のために、そのステップと自己分析のためのツールとして「キャリア・アンカー」をご紹介します。
なぜ、転職で自己分析が重要か
「面接に合格するため」ではなく、あなたが転職に失敗しないため
なぜ、転職において自己分析が重要なのでしょうか?そのためには、まず自己分析のアウトプットに着目してみましょう。自己分析の目的は「自分の強みと弱み」や「過去の経歴」をまとめることなのでしょうか?あるいは、自分を物に例えて伝える準備をすることでしょうか?
冒頭で説明したとおり、「どんな業界で、どんな立場で仕事がしたいのかを自分の頭で考えて、決める」ことこそが自己分析の目的です。転職先の業界や企業を選ぶ上でこれほど重要な情報はありません。これが転職において自己分析が重要な理由なのです。
面接官はあなたの何を見ているのか?
それでも自己分析をエントリーシートや面接のためだと考える方もいるでしょう。
自己分析ができるということは、自分を客観的に評価できるということです。自分の過去の失敗や周囲からの評価について認識する「自己認識力」はビジネスに必要な力の1つですので、当然面接官もこの出来不出来を評価します。
ただし、自己分析がエントリーシートや面接に役立つのはこういった面だけです。
むしろ面接官は、あなたがどういった経緯で、どういった動機で新しい会社に移ろうと考えていて、それに足る経験や能力を持っているか、そしてそれらに不整合がないかを見ています。あなた自身があなたの経験や動機に腹落ちしていないのに、他人である面接官を落とすことはできません。そのために自己分析が必要なのです。
自己分析のステップ「やりたいこと、できること、求められること」
ここからは、自己分析の進め方を3つのステップに分けてご説明します。自己分析はあなたの「やりたいこと、できること、求められること」の3つの観点で行っていきます。
ステップ0(下準備) キャリアの棚卸し
3つのステップに入る前に下準備をしましょう。それはあなた自身のキャリアの棚卸しです。キャリアの棚卸しというと少し仰々しいですが、時系列に沿って以下のような項目を洗い出していきましょう。
この後のステップで「あなたは何をしていたときに最もやりがいを感じたか」「あなたは何ができる人材なのか」「転職検討中の企業はどういった人材を求めているのか」といったことを整理していきますので、そのつもりで棚卸しをしましょう。
ステップ1 何に意欲を燃やせるか?
1つめのステップでは、過去のキャリアにおいて、あなたが何に意欲を燃やしたのかを考えることです。ついつい、自分は「何ができるのか」から考えがちですが、それは次のステップです。3つのステップで最も大切なのは、あなたが「何をやりたいか」です。
例えば、10年間同じ会社に在籍していても、あなたが仕事に意欲を燃やし、やる気に満たされていた時期というものがあるはずです。それはどういった部署でしたか?そのときあなたは担当者でしたか?それともマネージャーでしたか?それはどういったことが求められる仕事でしたか?クリエイティブなものでしたか?正確さが求められる仕事でしたか?
そして、やる気になった事柄を「細分化」してみるところがポイントです。
例えば、「所属するチームの営業成績が社内トップで表彰された」という事柄にやる気の高まりを感じたとしましょう。
ある人は「数字目標を達成すること」に楽しみを感じるかもしれません。ある人は「チームワークを発揮したこと」を挙げるかもしれません。「表彰されたことで社内評価が高まり、昇格が約束されたこと」を挙げる人もいるでしょう。1つの事象であっても、あなたは何が嬉しかったのかを分析することが重要です。
ステップ2 今のあなたにできることは?
2つめのステップでは、過去のキャリアを通じて、あなたにどういった技能が身について、今のあなたはどういったことができるかを考えます。
このとき、「プロジェクトマネージャの資格を持っている」「営業の基礎ノウハウを身につけた」といった資格やノウハウにとどまりがちです。20代であればそれでもいいでしょう。
でも、もしもあなたが30代以上なら、それらを使ってあなたが実際にどういった成果をあげたのか、具体的な数字も含めて書き留めておきましょう。30歳を過ぎると、転職において「即戦力」を求められます。そのとき「資格・ノウハウ」だけでは転職先の企業にあなたの魅力は十分伝わりません。30代を過ぎると数字で説明できることが求められるのです。
ステップ3 志望企業が求めていることは?
最後に3つめのステップとして、あなたが「やりたいこと」と「できること」を満たす転職先候補の企業が「どういった人材を求めているのか」を分析しましょう。
「自己分析」というと、自分の内面やキャリアにばかり目が行きますが、具体的にどういった業課・企業のどういった求人があなたに合うのかもしっかりと分析する必要があります。
自己分析の失敗は「やりたいこと」にある
上記の流れに沿って自己分析を行っても、頭では「どんな仕事がしたいか」「自分の強みは何か」「志望企業にどのような貢献ができるか」といったことから考えてしまう人がいます。
そんな「やりたいこと」に着目してしまう方は、転職先で不本意な部署に配属されると「こんなはずじゃなかった」と感じてしまい、転職を繰り返してしまうかもしれません。
ではどうすれば満足のいく転職のための自己分析ができるのでしょうか。そこには「ありたい姿」の分析が欠如しているのではないでしょうか。そんな方のために、ここでは「キャリア・アンカー」をご紹介します。
キャリア・アンカーで幹をみつけよう
キャリア・アンカーとは?
「キャリア・アンカー」とは、アメリカのマサチューセッツ工科大学の心理学者であるエドガー・シャイン氏によって提唱された理論です。エドガー・シャインポータルサイトでは以下のとおり定義されています。
キャリアにおける選択、具体的には、職業や職種、勤務先などを選ぶ際の「判断基準」となるものです。
すなわち、社会人のキャリア選択の「基本指針」であり、キャリアを「方向付ける役割」を果たすものです。言い換えると、「自分らしく生きる」ために、自分のキャリアにおいて絶対に譲りたくない「最も大切なこと」であるともいえます。
転職したい企業や自分の強みがあなたのキャリアにおける枝葉であるなら、キャリア・アンカーこそが幹と言えます。
キャリア・アンカー8つの分類
キャリア・アンカーは8種類に分類できると言われています。具体的には以下の8つです。
専門・職能別、全般管理、自律・独立、保障・安定、起業家的創造性、奉仕・社会貢献、純粋な挑戦、生活様式
1. 専門・職能別
特定分野で専門性を発揮することに意欲を持つタイプです。その分野と異なる職場に移ったり、管理職業務を命じられたりすることに不満を持ちがちです。
2. 全般管理
マネジメントの役割を担うことに意欲を持ち、組織の経営を行うことに価値を感じます。1つの専門分野や固執せず、経営に求められる全般的な管理能力の伸長に重点を置きます。
3. 自律・独立
仕事内容ではなく、自分なりの仕事のやり方や仕事のペースを維持することに重きを置きます。規律やルール、ノルマで縛られることを好まず、自身の満足のいくやり方で独立性を保ちながらできる仕事を求めます。
4. 保障・安定
大きな変化や予測できない未来よりも、安定的である程度将来まで予測できるような仕事・職場を最優先に求めます。例えば、公務員や大企業への就職を求めるようなタイプです。
5. 起業家的創造性
起業家として新しい製品やサービスを創り出すことに意欲を持ちます。決してゼロからの創造でなくても事業再生や社内ベンチャーといったケースもあります。「3. 自律・独立」との違いは、前者が独立している状態を重視しているのに対して、起業家的創造性は「新しいものを創り出すこと」に重点を置いている点です。
6. 奉仕・社会貢献
社会への貢献や社会的な問題の解決に意欲を燃やします。それは休日のボランティアという形ではなく、NPOや営利活動を通じて果たしていくようなものも含みます。
7. 純粋な挑戦
仕事内容や役割に重きを置くのではなく、一見解決できないような問題に挑むような仕事に意欲を燃やします。「挑戦」こそが働く目的と言えます。
8. 生活様式
ワーク・ライフ・バランスを重視します。仕事の時間だけでなく、個人的な時間とのバランスを重視します。例えば、育児や介護の休暇、在宅ワークといった制度に魅力を感じます。
あなたのキャリア・アンカーを見つける方法
上記8種類のキャリア・アンカーを紹介されても、自分自身がどれに当たるのか1人で考えてもわからないでしょう。
キャリア・アンカーは著書「キャリア・アンカー」(白桃書房)の質問項目に答えることで分析することができます。
- まったく違う: 1点
- ほとんど違う: 2点
- どちらかというと違う: 3点
- どちらかというとそう思う: 4点
- よくそう思う: 5点
- いつもそう思う: 6点
あなたが質問事項に該当するかを6段階で答えて、集計することでキャリア・アンカーを知ることができる仕組みになっています。
また、公式ではありませんが、インターネット上には模擬的にキャリア・アンカーを診断できるサイトもあるため、ご紹介しておきます。
転職エージェントに自分の幹を伝えよう
いかがだったでしょうか。キャリア・アンカーを通じて自分の幹を見つけることができたでしょうか。実はキャリア・アンカーの質問事項に答えていると、客観性を失う場合があります。質問に回答するとき頭に思い描く過去のエピソードに偏りが出るためです。
客観性を保つ目的で転職エージェントの面談を受けるという方法があります。転職エージェントとの面談では、いきなり具体的な転職先や強み弱みについて話し合うことはありません。しっかりと自分のありたい姿、やりたいことを話し合います。その場で自分の考えや傾向について相談することもできるはずです。
まとめ
自己分析の流れと、自分のありたい姿を探すためのツールとしてキャリア・アンカーについて説明してきました。
自分自身と向き合う自己分析は大変な作業です。しかし、自分のありたい姿に照らして仕事や役割、転職先を探すことで、転職後も一定の満足を感じながら働くことができるのではないでしょうか。