[PR]
システムエンジニアのみなさんが社内SEを目指す場合、憧れる転職先の企業と言えば、大手メーカーや総合商社かもしれません。
しかし、大学にもシステムエンジニアのニーズがあり、私立大学職員への転職の採用倍率が100倍を超えるということをご存知の方は少ないかもしれません。
大学職員SEを目指すために必要な情報と転職術をお伝えします。
求人倍率100倍!大学職員というホワイトな職場とは
人気職「私立大学職員」の待遇の実態
私立大学の職員と言えば「窓口で決して愛想がいいとは言えない対応をする人たち」というイメージを持つ方もいるかもしれません。なぜここまで人気を集めるのでしょうか。
給与
日本私立学校振興・共済事業団が2005年に開示した資料(残念ながら現在は公開されていません)によると、私立大学に勤務する職員の平均年収は734万円です。
ちなみに、国立大学の場合、583万円(文部科学省・2009年発表資料)です。上場企業2,218社の平均年収622万円(東京商工リサーチ調べ)と比較するとその高さが理解できます。
人事考課に関係なく基本給が毎年10,000円程度定期昇給するケースが多いようです。また、賞与は6ヶ月程度支給される大学が多くあります。
東京地区私立大学教職員組合連合が発行する「首都圏私大の賃金及び教育・研究・労働条件」によると、例えば中央大学の場合、40歳で年収は1,080万円と言われています。
勤務時間
勤務時間や休暇も安定しています。多くの大学では9:00〜18:00や8:30〜17:30といった勤務時間で、残業も民間企業と比べて少ないと言われています。
大学では土曜日に授業があったり、日曜日にオープンキャンパス等のイベントがあったり、1月〜4月は入試や入学のための繁忙期に入るため、完全週休2日ではない大学も見られます。それでも比較的規則正しく勤務できるメリットがあります。
また、有給休暇以外にも学生が夏休みや冬休みに入った期間に職員にも各10〜20日の休暇が付与される大学が多く見られます。
その他の制度
大学職員には女性が非常に多いのも特徴です。そのため、出産や育児に関わる休暇はしっかりと運用されています。
運用されているというのは、「名ばかりの制度」ではなく「実際に取得している人が多い」ということです。会社によって制度はあっても前例がなく、使いにくい雰囲気がありますが、大学職員ではこれらの心配は必要ないようです。
また、学生やその保護者がお客様であるには違いないのですが、民間企業と違って上司や顧客からの売り上げやノルマなどのプレッシャーが少ないのも特徴です。
大学を取り巻く経営環境
学生数の減少
給与や休暇などの待遇が良くて、定時帰りが当たり前の職場ですが、良い面ばかりではありません。大学業界が置かれた状況は非常に厳しいものです。
日本の少子化により学生の卵である「18歳人口」は年々減少しています。また、今後はさらに減少することが見込まれています。
「少子化なんて今始まった話じゃない」といった声が聞こえてきそうですが、2011年までは毎年進学率が上昇していたため、学生数を維持していたのが実態です。その進学率も2012年以降は55%で頭打ちの状態です。
競合大学の増加
しかも、私立大学はこれまで増え続けてきました。1985年には460校でしたが、2015年には779校まで70%も増えています。そのため、3校に1校で学生の定員割れが発生しています。
安定した大学の選び方
では、どうすれば安定した大学を見分ければ良いのでしょうか。旺文社の教育情報センターによると、私立大学への全志願者数に対して、人気がある上位30校が志願数の55%を占めているそうです。つまり、30/779校に人気が集中しているのです。逆に言えば、残り749校がわずか45%を取り合っている構図です。
つまり、上記のような人気校を選ぶ、あるいは定員数は少ないものの「受験生に選ばれる」人気校を選ぶことで今後の淘汰にも耐えられると考えられるのです。
参考までに、近年の人気30校は以下のとおりです。志願者数の順に記載します。
人気校の顔ぶれを見ても昔から馴染みのある大学名が並びます。つまり、これらの人気は10年程度では覆らないとも言えそうです。
大学職員システムエンジニアの仕事内容と求められる人材
仕事内容
大学のシステム部門ではどのような仕事があるのでしょうか。
研究系のインフラ整備
研究系のインフラ整備とは、教員が研究室で使うネットワークやサーバの調達・保守です。研究目的で非常に効果なサーバを購入する場合にはシステム部門がそのサポートをします。
ネットワークの構築・保守も非常に重要な仕事です。学内には多くのサーバがあり、ネットワークが整備されていないと研究自体にも大きな影響を与えます。
教務系システム構築・保守
教務系システムとは、履修や成績、出席に関するシステムや、授業中にアンケート収集するようなシステムを指します。教員が教務を行う上で必須となるシステムでサービスの根幹に関わるシステムです。
システムは5〜10年程度で入れ替えがありますので、その際にはシステム開発会社をコントロールするような役割も求められます。
事務系システム構築・保守
事務系システムとは、大学に関わらずどのような法人にもある人事給与システムや財務会計システム、資産管理システムといったようなものです。
これに関しては大学特有の事項はあまりありません。大学の規模によってはExcelなどで管理することでシステム化していないこともあります。
ただし、財務会計は注意が必要です。企業会計基準ではなく、学校会計基準に準拠していますので、現在、財務会計にスキル・ノウハウを持っていても学校会計基準を学び直す必要があります。
学生が利用するPCの調達・保守
学生向けのPCを使った授業はPC教室で行われるケースが多く、その整備や保守もシステム部門の仕事です。大規模大学になると、そこらの簡単な業務は外部委託されるケースもあります。
また、近年は学生が自分のPCを大学に持ち込むBYOD(Bring Your Own Device)を導入する大学も見られるようになりました。この場合、システム部門では持ち込まれたPCの故障や操作方法の相談を受けるケースがあります。
求められる人材像
では大学のシステム部門ではどういった能力やキャリアが求められるのでしょうか。大学の規模やどの程度システム開発会社に委託しているかにもよりますが、一般的には「マネジメント力」と「技術力」のバランスが求められます。
上記で説明したような大学で必要になる多岐に渡るシステムやインフラを自前で設計・開発している大学は皆無と言えるでしょう。
システム部門がエンドユーザからニーズを聞き取り、システム開発会社との橋渡しや開発工期や品質をコントロールしているケースがほとんどでしょう。そのためマネジメント力が求められます。
有効な資格として「情報処理技術者試験 プロジェクトマネージャ」や「PMP」が挙げられます。
一方、教員や職員の使うPCやネットワークのトラブルは、すべてシステム部門に集約されるため、それらに対応できる程度の技術力も求められます。具体的には「インターネットにつながらない」「前任者から引き継いだマクロが動かない」「マルウェアに感染した」といった問題です。
有効な資格として「情報処理技術者試験 ネットワークスペシャリスト」や「MOS(Microsoft Office Specialist)」が挙げられます。
合格までのプロセス
求人の探し方
では、どうすればSEとして私立大学で働くことができるのでしょうか。
「卒業生から内々で新卒採用だけしているのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
私立大学では職員の募集を大学の公式ホームページや転職エージェントにも掲載しています。厳しくなる経営環境を鑑みて、民間企業の経験者も積極的に採用している大学が大多数です。
求人が集まる転職エージェントを利用するのが1番の近道でしょう。
求人要件を確認すると、多くが「大卒以上」や「30〜35歳まで」といった条件を設けていますので、よく確認してから応募するようにしてください。
採用プロセス
大学では欠員に対して補充する形で職員を募集することが多いため、1回あたりのキャリア採用者数は若干名〜多くても10名程度でしょう。そのため採用試験が狭き門となっています。
選考内容は民間企業と大きな違いはありません。書類選考→筆記試験→面接を経て合格となります。応募者数が多いため、筆記試験を設けているのが民間企業との違いかもしれません。
試験内容は当然大学によって異なるため、知人がいればその方に確認するのが一番確実な方法ですが、以下では一般的に多く見られる試験内容を紹介します。
書類選考
まず書類による選考が行われます。民間企業同様に、履歴書と職務経歴書が求められます。ここでは大学が募集している内容をよく理解し、それに活用できそうなあなたの経験やキャリアを書くようにしてください。
教育関係の仕事をしていなくても問題はありません。むしろ、システムエンジニアとしてオールラウンドに活躍できる点や発注者側の立場でシステム開発会社をコントロールできる点をアピールすることが重要です。
筆記試験
次に筆記試験ですが、ここが非常に重要です。多くの私立大学では筆記試験の成績が重視される傾向があるためです。試験内容は大学によって様々ですが、多くが国語、数学、英語、時事問題、SPI、小論文といった構成を基本としているようです。
また、大学業界特有の問題として、その大学の沿革や建学の精神を問う問題が出題されるケースがあります。これも民間企業と同じかもしれませんが、企業分析の要領で、その大学や著名な卒業生、現在取り組んでいる研究などについて調べておくことをお薦めします。
システムエンジニアのためだけの筆記試験が行われることはないと考えて問題ありません。その他の総合職と同じ筆記試験を受験します。そのため、ITの知識を問われるような筆記試験の準備は必要ありません。
面接試験
最後に面接試験があります。大学の規模にもよりますが、2〜3回程度と考えてよいでしょう。
まず人事担当者による面接があり、次に現場責任者や人事責任者、最後に理事を含めた最終面接といった流れです。人事担当者や理事は当然ITの知識を問う質問はしませんので、社会人としての基本的な振る舞いができて、志望動機を論理的に説明できれば問題ありません。
大学側は民間企業出身者にリーダーシップと専門知識を期待していますので、前職・現職での経験が大学でも活用できる点をアピールすべきでしょう。
また、大学関係者は自分たちが「特殊な村社会」であることを認識しています。そのため、民間企業出身者がこの村に適用できるのかも注視しています。面接における柔軟性やコミュニケーション力も大きな評価対象になります。
入社(入職)後の学内異動はあるか。どんな仕事か。
狭き門を無事くぐり抜けたとして、入社(大学の場合、入職と言います)後にシステム部門以外に配属されたり、そこから異動になることがあるのかは非常に気になるところだと思います。
あなたにIT分野での5年以上の経験があれば、まず配属されるのはシステム部門と考えていいでしょう。なぜなら大学にはITの知識が豊富な職員は少なく、一から育成するのは難しいため、システム部門の職員の確保は民間からの転職者に頼っている面が大いにあるためです。
そして、そこの要員を例えば学生窓口の部署に異動させるメリットも薄いと言えます。それらの業務は他の職員でも十分に行えるためです。そのため、システム部門以外で仕事をするケースは多くないでしょう。
システム部門で一定の成果をあげて、あなたの管理職としての能力が評価された場合には、他部署への異動もありえますが、その場合でも民間企業での経験が活かせるような学生の就職に関わる部門や民間企業との共同研究に関わる部門であるケースが見受けられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
システムエンジニアとしての知識と経験を活かしながら、教育業界に関わりたいと考えている方にとって私立大学は魅力があるのではないかと思います。日々多忙なSIerやシステム開発会社に勤める方にとっても、ワークライフバランスを保ちながら働くことのできる職場という魅力があります。
転職の採用倍率は非常に高く狭き門ではありますが、転職エージェントを利用して可能性を高めながら転職活動を進めていきましょう。